1日目
今日は母親の葬儀に出席している。死因はどうやら複数の男と関係を持って、それがバレたことで殺されたみたいだ。もう母親に何の感情もないけど、最低限の義理だと思う。その葬儀もつつがなく終わった。
「…あの子たちなんでしょ?残された子って。可哀想に」
「これからどうなるのかしらね?まぁ、あんな人の子なんて誰も引き取りたがらないと思うけど」
「それもそうね」
そんな会話があちこちから聞こえてきた。どの人も見るのは同じ、3人の女の子だ。だけどそこにプラスの感情は一切なかった。侮蔑、軽蔑、嘲笑…。あの子たちが何かしたわけじゃないはずなのに。
「ねぇ、君たち。よかったら
気が付いたら俺は彼女たちにそう話しかけていた。きっと境遇が似ていたからだと思う。それに彼女たちは目配せして頷いた。
「…よろしくお願いします」
「うん、じゃあ、行こっか」
そうして俺は彼女たちを先導して歩き出した。その後にはちゃんと3人とも付いてきてくれた。周りからの視線は厳しいけど、もう慣れてる俺は気にせずに外に出た。
…この子たちには幸せになってほしいな。今まで辛かった分も含めて。希望なんて一切写さない彼女たちの目を見て俺はそう決意した。
それから俺たちはタクシーを使って家に帰ってきた。多少意味が違うけど、広めの家にしてよかったな。3人も特に驚いたりせずに付いてきた。…まぁ、内心でどう思ってるのかまでは分からないけど。
「じゃあ、まずは自己紹介でもしようか。俺は帆立 舜。高校一年生の15才。…君たちは?」
「…私は
「…私は次女の笹瀬
朱里ちゃんに、日向ちゃん。それと結衣ちゃんか。三つ子なだけあって顔とかはそっくりで可愛らしい子だけど、朱里ちゃんは赤髪のミディアムヘアー、日向ちゃんは茶髪のショートボブ、結衣ちゃんは白髪のロングヘアーだ。まだ初日だからそこでしか見分けがつかないけど、早く顔だけで分かるようにならないとな。
「じゃあ3人とも、今日はもう疲れただろうからお風呂入って早めに寝ちゃって」
「…お風呂?それってみんなが言ってた…」
「ユイ、入ったことない」
「…うちも。どんなのなのかな?」
…そっか。お風呂は贅沢品だったな。これからは我慢せずに遠慮なく入っていいからね。俺がそう思っていると服が軽く引っ張られた。俺がそっちを見ると雪のような真っ白い綺麗な髪が目に飛び込んできた。
「どうしたの、結衣ちゃん」
俺は少ししゃがんで目線を服を掴んでいた結衣ちゃんに合わせた。
「…一緒がいい、です」
「えっ?…俺と?」
その言葉に驚いた俺がそう聞くと結衣ちゃんはコクンと頷いた。…いやいや、ダメだろ!
「…いい、結衣ちゃんは女の子。そして俺は男だ。一緒にお風呂に入りたい、なんて言っちゃダメだよ」
「なん、で?」
「男っていうのは狼なんだよ。そんな人の前で裸になったりすると…ガブッ!だよ」
俺は結衣ちゃんの目を真剣に見つめてそう言った。結衣ちゃんはまだよく分かってないみたいだったけど、素直に引き下がってくれた。
「いい子いい子」
俺はほぼ無意識のうちに結衣ちゃんの長髪を撫でていた。
「…ユイ、いい子?」
「もちろん。結衣ちゃんも、もちろん朱里ちゃんと日向ちゃんも3人ともいい子だよ」
「…うん」
それから俺は3人を脱衣所の前まで案内した。そこで気付いたんだけど…服、どうしよう?最悪俺の服を貸せばいいけど、下着なんてないよ?もう3人は脱衣所の中に入っちゃったし…。
「…着替えある?」
「!お、同じので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
俺は中に聞こえるような声でそう聞いた。するとそんな返事が返ってきた。…やっぱりないよな。
「了解。じゃあ、外にバスタオルと俺の服置いとくから、もしよかったら使って。…まぁ、サイズは合わないだろうから自分のでもいいけど」
「…はい、ありがとうございます」
俺は自室に戻って必要なものを持ってきた。なるべく小さめの服を選んだつもりだけど、やっぱりかなり大きくなりそうだ。バスタオルと服の上下を3セットずつ持って脱衣所の前まで戻ってきていた。
…やっぱり、色々と足りないものばかりだな。明日中になんとか最低限は揃えないと。とりあえず、今日は俺のベッドで3人には寝てもらって…。
「…すみません、私たちばっかり」
「いや、大丈夫だ…!」
俺が色々と考えているとお風呂が終わったのか3人が入ってきた。その声に振り返った俺は慌てて目を逸らした。…小学生だから仕方ない部分はあるけど、俺の服一枚ってどういうこと!?3人は俺が用意した服を着ていたけど、大きすぎてほとんど意味を成してない!!首の部分から覗くのはまだまだぺったんこの胸。もちろんブラなんて付けてない。
「…どう、したの?」
咄嗟に視線を逸らしたのが気になったのか、結衣ちゃんが俺を覗き込んできた。その純粋な眼差しに俺の心はすごく痛んだ。
「んー、なんでもない。…って、そんなことより髪!乾かすからこっち来て!朱里ちゃんと日向ちゃんも!」
罪悪感を無視して3人を連れた俺は脱衣所まで戻った。
「じゃあ、誰からやる?」
「…ユイ」
ドライヤーを取ってそう聞くと結衣ちゃんが手を上げてくれた。他の2人も異存はないのか頷いてくれた。…一番長い結衣ちゃんが最初か。俺は結衣ちゃんの頭を優しく乾かしてあげた。
「〜♪〜♪」
結衣ちゃんはご機嫌そうに鼻歌を口ずさんだ。…でも、頭にはいくつもたんこぶがあった。やっぱり、この子たちは幸せになるべきだ。じゃないとこんな運命を定めた神を恨んでしまいそうだ。
それから残りの2人の髪も同じように乾かした。…結衣ちゃんのときは髪が長くて気付かなかったけど、背中にもたくさんの
「じゃあ、ご飯でも作っちゃうか。何か食べたいものある?」
「!ご飯、食べれるの?食べたい!」
結衣ちゃんは目をキラキラさせながらそう食いついてきた。…そっか。ご飯は自分で作らなきゃ食べれなかったんだよな。急に何が食べたいか聞かれても分からないよな。
俺はその日だけは栄養とかは気にせず、子供が好きそうな料理を作ることにした。オムライスとハンバーグ、それに唐揚げを作った。3人は美味しそうに食べてくれた。…箸の持ち方はまた今度教えてあげないとな。
それから3人には口を
「じゃあ、今日はこのベッドでゆっくり寝てね。また明日色々買いに行くから、今日だけは俺ので我慢してね」
「…う、ん」
もう疲れて眠いのか結衣ちゃんは半分眠ってしまっていた。俺のベッドは大きめのサイズにしておいたから、まだ小さい3人が並んでも大丈夫だった。
「じゃあ、おやすみ」
「…はい、おやすみなさい」
その後リビングに戻ってきた俺は明日の為の準備を始めた。…まぁ、大きな買い物をするし、なるべく早く必要だから大型のトラックを借りるだけなんだけどね。その結果、4人乗りのトラックと運転手を100万円で借りることができた。…まぁ、誰か1人は俺の膝の上にでも乗ってもらえばいいでしょ。
それから服が無いと困るから早めに洗濯機を回して、朝一で乾燥機をかければ間に合うかな?ご飯の用意もして…うん、大丈夫かな?
一通りやることを終えた俺は早めに寝ることにした。ソファでは初めてだったけど、疲れているのか簡単に意識が闇の中に落ちていった。
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