同好怪!?

阿弥陀乃トンマージ

第1章

遭遇

                  プロローグ


「ガオオオッ!」


「ガルアアッ!」


 突然だが、俺の名前は村松藤次むらまつとうじ。しがない私立高校の教師をやっている。年齢は25歳。独身、彼女なし。担当科目は地学。そう、選択する人間が極めて少ないことでメジャーなマイナー科目だ。意外と学習する範囲は狭かったりするから、覚えないといけないことは少ないので、大学入試などでも有利だと思うのだが……。


「ギオオオッ!」


「ギルアアッ!」


 まあ、それは別に良いか。ここはどこかと言うと、静岡県静岡市である。静岡県と言えば、東西にやたら長いことで、東海道新幹線ユーザーの方にはすっかりお馴染みであろう。静岡市はその県のちょうど真ん中あたりに位置する県庁所在地であり、政令指定都市だ。南北に広い都市で、南は駿河湾に面しているが、北は南アルプスに面している。北なのに南というのは少しややこしいな。海と山、どちらの自然でも存分に味わうことが出来る。


「グオオオッ!」


「グルアアッ!」


 もっとも俺の勤務している『海道学園』は、やや海寄りに立地している学校なのだけれどね。ちょっと車を走らせればすぐに海にたどり着く。幸いなことに不意に海を見たくなるほど、仕事で思い悩んでいるというわけではないし、逆に不幸にも、助手席に乗せてドライブを一緒に楽しむようなお相手がいない。……どちらかというとやや不幸寄りなのかな?


「ゲオオオッ!」


「ゲルアアッ!」


 とにかくだ。大卒で今の仕事についてはや三年目。仕事にも慣れてきた。社会人としてのペースというものが掴めてきた。今年は彼女でも作って、プライベートライフも充実させたいところだ。……教師という仕事は、なかなか自分の時間を確保することが難しいのではあるが。もちろん、やり甲斐というものは日々感じている。この仕事を選んだことに後悔はまったくない。……今のところは。というか、ついさっきまではと言った方が良いだろうか。


「ゴオオオッ!」


「ゴルアアッ!」


 ただ、今晩、この場所、学園の広い校庭に来てしまったことに関しては激しく後悔している。よっぽど疲れているのか、俺の眼には、燃えるような真っ赤な体をした二足歩行の巨大な竜のようなフォルムをした生き物と、これまた二足歩行の巨大なトカゲのような生き物が激しく争っている。一進一退の攻防というやつであろうか。


「ど、どうなっているんだ……?」


 俺は平凡過ぎるが、この場においては適切に近いであろう言葉を選んで呟く。

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