冒険者ギルドには問題が山積み 4

 つわものたちの夢のあと。


 かつて、普通の冒険者だった少年少女は、夢を追い求めて冒険者ギルドの門を開いた。数々の苦難を乗り越え、実績を積んで魔物を討伐しました。


 強敵との戦いも幾度となく行われたことでしょう。


 ですが、年月が過ぎるにつれて年を重ね重ね各々の考えを持つようになります。

 それは成長であり、旅が終わることを知らせているのかもしれません。


 一つの終着点。


 最高ランク国選パーティーに選らればれた彼らの末路は……。


 酷く残念な結果になってしまったのですね。


 さて、脳内に刻み込まれている知識に、パーティー追放物語という書物が浮かんできます。


 書物の中で追放物テンプレと言えば、パーティーの中心となる人物、例えばリーダーが、役立たずなタンク、何をしているのかわからない補助魔法師などを、役立たずだから追放するという流れがあります。


 表向きは、今後のパーティーを発展させるためという理由で追放するが、実際には、自分よりも目立つ者や、自分が狙っている女性が好きな男性を追放して排除したりするのが。


 王道なテンプレです。


 しかしながら、これまで一緒にレベルを上げて、苦難を乗り越えてきたはずなのに、国選パーティーに選ばれる際に、相応しくないという理由で切り捨ててしまうのですから、無理があるのではないかと思ってしまうわけです。


 何より、追放した者はこれまで通りには上手く戦えなくなり、結局は国選パーティーから転落して、逆に追放された者たちは活躍して、代わりに国選パーティーへのし上がって行く。


 今回は、すでに彼ら五人はそれぞれに二つ名を持つ国選パーティーメンバーです。優秀だと認め合っているのにどうして追放になるのでしょうか?

 

 しかも男性パーティー四名の内、三名が賛成を示してします。


「シビリアン。お前は我々国選パーティーには相応しくない。追放させてもらう」

「おいおい、その話は何度もしただろ!」


 さて、今回の追放されるシビリアン様はどのような人物なのでしょうか?


 我が知識にある追放される人物たちにはテンプレが存在します。


 1、本当に能力がなくて追放される者(この場合は追放されてから能力に開眼するテンプレですね)


 2、能力はあるが、恋愛のイザコザによって追放されるテンプレ。


 3、人格者ではあるが、彼らが目指す頂きに能力が不足しているので、追放されて別のところで活躍するテンプレ。(この場合は、彼らの師匠ポジションが追放された場合に起こり得るのですが、彼らは同期なのでありませんね)


 4、本当にクズで追放された先で、悪いことをしているが意外に上手くいってしまう追放ですかね。(この場合は悪役なのに勘違い系で上手くいったが多いですね)


 さて、この方が追放される理由はなんでしょうか?


「シビリアン。貴様がこれまでどれだけの迷惑を我々にかけてきたのか、わかっているのか?」

「おいおい、パーティーメンバーなんだ迷惑も分かち合うもんだろ?」

「お前は、本気でそれを言っているのか?」

「ハァー、あのなぁ〜全部俺だけが悪いのか? これまで俺はお前たちと同じパーティーメンバーとして頑張ってきたじゃねぇか」

「それは認めよう。だが、お前は有名になり、たくさんのお金が稼げるように変わっていったのも事実だ」


 聖騎士フォーリング様は疲れた顔をされて、聖弓シビリアン様に対して嫌悪感を向けておられます。


 まぁ、実際に追放を言い出すなど、現実はこっちが多いですよね。


 物語ながら、追放した側が悪いというような描写が多くなりますが、追放を切り出すというのは相当な理由があると私なら思います。


「ミレディーナ! 何か言ってやってくれよ!」 


 シビリアン様に名前を呼ばれた聖女ミレディーナ様が戸惑いながらも、フォーリング様に問いかけました。


「フォーリング。どうして、またこの話をしたのですか?」

「シビリアン。この話をして困るのは君だと思うが、本当にするのか?」

「はぁ? 俺が何をしたっていうだよ! 俺は国選パーティーの一員なんだぜ。何をしたって許されるだろうが!」

「そうか、なら言わせてもらうが、君は人を殺したね」

「はっ! なんだ今更。俺たちは冒険者だろうが、盗賊や犯罪者なら、何人でも殺してやったぞ!」


 冒険者は人と戦うこともあります。

 極力、捕まえるように指示は出ていますが、相手の抵抗によっては殺さなければいけない時もあります。


 ですが、それはあくまで仕事上の出来事であり、フォーリング様が話をしようとしているのは別のことでしょう。


「君は奴隷の女の子を殺した」

「はっ! なんだよ。そんなことか、奴隷なんて死んでも物の数に入らないだろ? なぁ、ミレディーナ!」

「……どういうことか、教えて」

「あぁ? 奴隷のガキが、俺の聖なる武器にぶつかってきやがったのよ。だから殺してやった。俺様のような国選パーティーに選ばれる冒険者に殺されるんだ。あの奴隷も本望だっただろうな。もちろん、商品を台無しにしたんだ。奴隷商人には金は払ったぜ」


 シビリアン様の話を聞いて、ギルドマスターや受付さんまで顔を青くしております。


 人格とは、どうやって形成されるのでしょうか? 我が身は届いた手紙を握りしめて、彼らの元に向かうことにしました。

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