少々、好きでございます

 エッセイのような物を掲載しようと思い、その一作目がネガティブ寄りな感情と布団袋とかいうおおよそ共感しにくい物になってしまった。

 まあ、それも私ということで。今後もそんなことを綴っていくのだろうなと思うのだけれど、けれどせめて二回目は「好きなこと」を書こうと思った。

 そしてぱたりと止まる。

 私は、何が好きなんですか、私。

 大いに語れるほど好きな物は何ですか、私。

 ……。

 むぅ。


 ないです。

 ――好きな物事はあるけれど、語れるほどではない。

 というところまで考えてから、ふと思った。

 少し好きなんだけど、ということを語ってダメだと誰が言った。

 誰も言っていない。

 私が少し見栄っ張りで、エッセイのような物を書くのであれば語れるほどの知識があって比較対象についても言及できなければ、と勝手に思っているだけである。

「そうですよね、あれそれのなになにはこうでこれあれのあれあれはああだから、過去作と比べるとうんたららん」

 とでも識者からコメントが来たら困るどうしようと思っているだけである。

 一瞬「たしなむ」という言葉も浮かんだが、少し、違うのだ。

 何が違うのか自分でもわからなかったので、角川国語辞典新版を引いてみた。


たしなむ

①このむ。「書を―・む」「酒を―・む」

②心がける。「けいこを―・む」「年来―・んできた芸」

③つつしむ。「身を―・む」「少しは―・なさい」


 書き出してからなんだこれ面倒だなコピペできるweblioにすれば良かったと後悔しつつ角川の回し者ではないと、もう一度書いておく。

 やはり②と③の意味が①にも影響しているように思う。慎み深く、励むようなことではないのだ。

 少し好きだ。ただそれだけだ。


 音楽が好きです。クラシックやロックが好きです。今聞いているのはシベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47です。他のシベリウスの作品や、この曲がどんな時代の何を表しているかとかは知りません。知ったらそれはそれで面白そうですよね。


 本を読むのが好きです。好きな作家は司馬遼太郎と池波正太郎、高村薫、吉村昭、小野不由美です。これらの作家の作品を全部読んではいませんし、一部をそらんじている訳でもありませんが、読んでいて心地よかったり、没頭できるのはこのラインです。


 映画を見るのが好きです。殺し屋が出てくる作品を割と好んで観ています。劇中、30分に4~5人くらいはぽこぽことやってほしいものです。何度も観た、という映画は「コンスタンティン」「ダンケルク」「ファイトクラブ」です。三作とも殺し屋が出てきませんが気にしないでください。


 食べるのが好きです。さくっとしてふわっといいかおりが広がる食べ物を好みます。バターの香りがするクッキーや、アップルパイ。皮がぱりっと焼かれた鳥の……オーブン焼きなのかグリルなのかとかはわかりません。自分で作るよりも作られたものを食べるのが好きです。


 おお、なんだか楽しくなってきた。


 動物が好きです。生き物は割と何でも好きですが、永久に眺めていたいのはイグアナです。神々しい顔、愛らしい動き。ガラパゴス島の映像とか流れていたら何もしなくなると思います。猫や犬も普通に好きですが、残念ながら一度、犬は蹴り飛ばしたことがあります。身の保全のための致し方ないことでした。それから、好きな動物から節足動物は除外します。


 少し悲しくなってきた。あと二つくらいで挽回しよう。


 きらきら光る小粒の物が好きです。宝石とか高価な物は持っていませんし、あまり興味がないので、ガラス玉とか名も知らない石でいいのです、透明か半透明で、すぐになくしてしまいそうな程に小さくて、ぴかぴかではなくきらきらする物が好きです。


 神社が好きです。神社の何が好きなのか書こうとしたけど上手く書けそうにありません。信心深いとは言いがたいのですが、神社があるとなんとなく気になって、徒歩だと鳥居に吸い込まれそうなのを少し我慢する必要があります。車だと確実に脇見運転をしてしまうのでカーナビに音声案内が欲しいです。

「三百㍍先、神社です。ご注意ください」


 これらの物事が、私は少々、好きでございます。

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