反抗期真っ只中のヤンキー中学生君が、トイレのない課外授業でお漏らしするよ

こじらせた処女/ハヅ

第1話

(チッくだらねえ)

 3時間目、ホームルーム。2年3組の生徒らは、授業の真っ只中、徒歩15分ほどの公園の来ていた。

 この学校には月に一度、クラスの仲を深めるための時間が与えられ、事前に決めていたバスケットボールやら、ドッジボールやらを行う。基本的に体育館や運動場など、校内ですることが多いのだが、今回は場所が足りなかったため、3組だけは公園に行かなければならないのである。

「なんか授業中に学校の外出るのって背徳感ない?」

「分かるっっ‼︎」

いつもは大人しい女子たちも心なしか声が高い。そう、純粋で可愛い中学生達は、この程度のイレギュラーでも、ドキドキ感を味わうことができる、幸せ者なのだ。

「おーい、そろそろはじめっぞー」

今回も代わり映えのないドッジボール。木の枝で書かれた簡単なコートに、次々と入ってゆく。

「やってらんねー」

「おいっ矢場‼︎どこ行くんだよ‼︎」

「ほっとけよ委員長。あいついっつもあんなんだし」

「…チッ…うるせえな」

 ズボンのポケットに手を突っ込み猫背でどこかに行こうとする男、それが矢場 健(やじょう けん)なのである。反抗期…中学生くらいの歳の子供の一度は通る道であろう。しかし、矢場健、彼は特別拗らせている。髪を染めたりピアスを開けたりはしないものの、このようにクラスで一致団結するといった行事に強い拒否反応を示してしまうのだ。

 クラスの人間は彼はそういう奴だ、輪を乱す1匹狼だと諦めて誰も気にしない。だから、誰も気が付かない。

 

 彼が小便を我慢しているということに。



(何でここには便所がねえんだよ‼︎)

焦った表情で大股歩き。矢場は心の中で悪態をついた。クラスメイトの声は遥か遠く。このだだっ広い公園の敷地内の案内板にたどり着いた彼は、トイレマークを必死で探していた。

(ないっ、ないないないっ、)

右を見ても、左を見ても、それはない。つま先がパタパタと地面を叩く。すれ違う一人の老人はそれを見て目を逸らす。ガラの悪さに恐れたのだろうが、彼が今抱えているのはおしっこ。

トイレに行きたくて焦っている幼稚園児と何ら変わらない。

(何で学校じゃねえんだよ!!)

2時間目の休み時間、数学の時間の延長で爆睡をかましていて、担任の斉藤に叩き起こされ、外の公園に連れて行かれた彼。秋口、ひんやりとした空気が身を包む環境で、朝飲んだお茶と味噌汁が排出されないままくすぶり続けていたら、催すのもおかしくない。授業中にトイレに行く習慣が身についた彼だからこそ、今回のようなアクシデントに見舞われてしまったのである。


(学校に戻るか…?でも絶対センコーにバレる…)

15分ほどの距離だが、戻ったところで他のクラスの人間が教室外にうじゃうじゃいる。そんな中、戻れば他の担任に見つかって、説教コース。トイレだと言えば良いではないか、いつも授業中に平気で行っているだろ、そう思う人だっているだろう。しかし、変なところで気にしいで子供くさい彼は、漏れそうで帰ってきた、そう思われたくないのである。

 ふと右下の白い紙に目を向けると、簡易トイレの案内地図。少し遠そうだが、彼の頭にはもう小便器が頭を埋め尽くしている。

ひゅうう…冷たい風がひとふき。

ぶるぶるっ…

わかりやすく足と背中が震える。

「んっ、んんっ、」

波がきたのだろう、いつもは腰まで下ろしているズボンをポケット越しにぐいぐい上げて、太ももをモジモジと擦り合わせている。限界は鼻の先まで来ていそうだ。

彼はさっきより小さい歩幅で歩き出す。果たして彼の抱えているおしっこは、無事小便器に放出することが出来るのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る