第9話 ダンジョンにイレギュラーは付きものです。

 憤怒の狂赤牛ラース・レッドミノタウロスを蹴り飛ばす数分前……


 23階層


「あるじーどうなの?」

「う〜ん少しマシになったぐらいかな。」

「早く戦いたいのに〜」

「ごめんよ2人共。ちゃんと調べてから来ればよかった……」


 休憩を終えた俺達はまた走り出し、23階層まで進んでいた。


「30階層まで降りてダメだったら流石に帰るか。」

「そうだね。」

「仕方ないの。」


 本当に申し訳ないな……帰りに好きなデザートを買ってあげよう。

 うん、そうだそれがいい!


「お、24階層への階段だ…あと6階層か……」


 はぁ、あっち異世界ならもう戦ってるはずなんだけどなぁ。


「ッッ⁉︎」


 何だ?階段降りたら急に空気が変わった。


「シズ、スズ、分かるか?」

「うん、急に空気が変わったの。」

「それと殺気が凄い。」


 ちゃんと分かってくれてるな、流石シズとスズだ。


「俺が先行するから2人は後を付けてきてくれ。」

「はいなの」

「分かった」

「くれぐれも油断するなよ、一応2人に支援魔法掛けとくけど、『全体強化オールアップ』そして俺には『超加速ハイスピードアップ』!」

「はいなの!」

「うん」


 異変を感じ取った俺達は異変の元へ向かうべく、更に早く走り出した。


「うわっ殺気が凄い、しかもモンスターも全く見当たらない……この殺気の持ち主はもう一個下か!一個下なら『天眼』!」


『天眼』を使い下の25階層にいる異変の元を探す。


「ッ⁉︎こいつか…それと人⁉︎人が追いかけられてる⁉︎すまんスズシズ!先に行く!」

「ッ⁉︎分かった!気を付けて!」

「あぁ、『二重超加速ダブルハイスピードアップ』!」


 異変元のモンスターを見つけたが人が追いかけられている。

 これはまずいな、1秒でも早く駆けつけて助けないと。


 そして俺は久しぶりに本気で走った。


 ※


「ッ!見えた!とりあえず蹴り飛ばしてその後考えよう、うぉぉぉぉ!」


 肉眼でモンスターと女の子?を確認し、とりあえずモンスターを蹴り飛ばす為に更に加速した。


『Gmooooo!!』

「さようなら。皆んな……」

「させるか!身体強化‘‘迅’’三重トリプル!吹っ飛べ牛野郎‼︎」


 俺の加速に加速を重ねまくった飛び蹴りが憤怒の狂赤牛の腹にめり込み、『Gmooooo!?』と叫びながら後ろに吹っ飛んだ。

 女の子の方は何が起きたのか分からないのか口を半開きにして唖然としている。


「おい君大丈夫か⁉︎」


 とりあえず声を掛けた。


「ふぇっ!?はっはい!だいじょっずぅ……」

「右足が切り落とされてるな…じっとしとけよ?」

「は、はい。」

完全回復魔法パーフェクトヒール…よしこれで完治したな」

「嘘⁉︎足が生えた⁉︎こんな回復魔法見た事ない……」


 完全回復魔法を女の子に掛けたら物凄く驚いた顔をした。

 やっぱこのレベルの回復魔法の使い手は稀なのか。


「歩けるか?歩けるなら後ろに下がっててくれ。」

「は、はい!」

「あるじー!」

「スズ!シズ!」

「あるじ早すぎ…」

「やっと追いついたの…」


 息を切らして2人がそう言った。


「疲れてるとこ悪いんだがこの子を頼めるか?」

「「了解」なの!」

「あ、あの!あなたはもしかしてあいつと戦うんですか?」

「?当たり前だろ?」

「危険です!あのモンスターは本来下層のボスモンスターなんですよ⁉︎」

「人の命かかってんだ逃げる訳無いだろ、分かったら大人しく守られてくれ。」

「は、はい。」


 ここで人を助けなきゃ男が廃るってもんだ。

 それにこのまま放置しても被害が増えるだけだからな。


『Gmoooooooooo!!』

「もう戻ってきたのか…結構飛ばした筈なんだけどな…まぁいい、一瞬で終わらせてやる……一撃で仕留めるならこいつだな。」


 そう言って俺はアイテムボックスから俺の愛刀『白殺はくせつ』を取り出す。


『Gmooooo!!』

「悪いがお前の命はここまでだ。」


 憤怒の狂赤牛は手に持っている大剣を振りかぶりながらこちらに走って来る。


 それを見た俺は白殺を構える。


「白き刃の贄となれ。『白閃』!」


 刹那、白き光が視界を覆う。


『G、Gmoo……』


 光が消えた時にはもう奴の体は2つに切り落とされ、霧となって消えていた。


「ふぅ……討伐完了、おーい大丈夫か?」


 先ほど傷を治した女の子の元へ戻る。


「は、はい!お陰様で…ってそれより足!何とお礼をしたらいいか。」

「足?あぁ別に気にしなくて良いぞ、ただ魔力をがっつり持ってかれるだけだから、えーと何さんだっけ?」

「あ、そういえばまだ名乗ってませんでしたね、私の名前は柳 華恋やなぎ かれん改めて助けてくれてありがとう!」

「華恋さんね、俺は正人、佐賀正人。そこにいるのが」


 スズ達に視線を送る。


「スズなの!」

「シズです!」


 元気に自己紹介をする二人。


「正人さんにスズさんシズさんですね!助けてくれてありがとうございます!」

「うん、それで1人で帰れそう?」


 大体分かるが一応聞いておく。


「実は…魔力もすっからかんで武器も壊れちゃって…とてもじゃないけど帰れないです。」

「そうか、なら一緒に地上まで戻ろうか。」

「良いんですか⁉︎」

「装備も魔力もない子を置いていくほど俺は悪魔じゃないよ。」

「あ、ありがとうございます!何から何まで!」


 まぁとりあえず今日は戻ってまた今度ってか配信者デビューまでダンジョンはお預けだな。


 ったくダンジョンにイレギュラーは付きものだけど初めてのダンジョンで遭遇するなんて…事如く俺に面倒を押し付けられている気しかしないんだが……




 あとがき

 遅くなりました。

 すみません。

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