狼頭妖怪の誤算 3代祟る為にはまずは婚活から

@povu

第1話

…やっちまったな。周りの目はそんな感じだった。

「あほやなぁ。なんでそんなことしたんや?」

狐がため息混じりに問う。

いや、怒るだろ?普通?

しかし、みんなの反応は無い。俺の毛だらけの狼頭に冷や汗が滲む。

「もう、時代が違うんや…」

確かに時代が違うのは解る。

地面は真っ黒い油で固められているし、家は大きな石で出来ている。

夜も昼みたいだし、車やら電車やら、驚くべきは飛行機!

人間すげえよ。

あれには感心した。

他にも、色々びっくりするものは出来ていた。

でも。

人間は人間だと思っていたのだ。

人の営みは変わらないと。

「兄貴は消えちまうっすか?」

縁起でもない事を言うジャンプ傘お化けを殴りながら、俺はにこやかに辺りを見渡した。

「冗談だろ?なんとかなるよな?」

みんな俯く中、狢が難しげな顔で言った。

「お前は、三代祟ると言ってしまったのだろう?」

「契約反古は、うちらには致命傷やからなぁ」

蛇娘が気の毒そうに舌をちろちろさせる。

「あかん…あかんわ」

狐が重々しく首を振った。

何か、何か手はないのか?

縋り付くような視線を向けると、周りは次々と目を逸らした。

ああ、俺はここで終わりなのか。

うわー。

もうちょっと考えて動けば良かった。昔から、お前は考えなしだと言われていたが、その通りだ。

だけど、まさか、こんな世の中になっているとは。三代祟るのさえ難しい時代になっていたなんて。

俺にはもう、明日はないのか。

こんな事で消えることになるなんて…。

 その時、それまで黙っていた女郎蜘蛛が、ポツリと言った言葉で、俺の運命は変わった。

「婚活したらどう?」

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