第15話 パンツスーツのエロさ

 美海に中学の授業参観に来て欲しいと頼まれた俺。高校生の立場的に普段は行けないが、参観日と休日になる『高校の創立記念日』が被る今年なら可能だ。


しかし、授業参観というのは本来保護者が行くもの。俺1人だと間違いなく浮くので、姉ちゃんに同伴をお願いしよう。



 昼食後、美海は予定通り友達の家に遊びに行った。俺は準備を済ませてから、昼過ぎにバイトから帰ってくる姉ちゃんを玄関でひたすら待つ。


もうそろそろだと思うんだが、かなり長く感じる…。母さんも出かけたから、ここに居続けても邪魔になったりはしない。


「ただいま~。…って、大地どうしたの?」


驚くのも無理ないか。いつもこんな事しないからな。


「姉ちゃんに頼みたい事があるから待ってたんだよ」


「頼みたい事? お母さんいないし、リビングで聴くわね」


「ああ」

俺達は一緒にリビングに向かう。



 リビングのテーブルに向かい合って座る俺と姉ちゃん。


「話って何?」


「さっき美海から聴いたんだけど、〇日に授業参観があるらしいんだ」


「へぇ~。初めて知ったわ」


「その日、『高校の創立記念日』で休みでさ。時間あるし行こうと思うんだけど…」


「私も来て欲しいのね?」


「…その通り。よくわかったな」


「大体予想つくわよ」


「それで…、どうかな? 来れそう?」


「その日は午後から大学に行くから、午前中なら空いてるわ」


「そうか。悪いな、無理言っちゃって」


「気にしないで。可愛い弟と妹のためだからね」


姉ちゃんと2人なのも浮くかもしれないが、気分が全然違う。心細さを気にする必要がない。


「大地。もうそろそろ出たほうが良いんじゃない?」


今日は姉ちゃんと入れ替わる形でバイトがあるのだ。確かに時間はあまりない。


「そうだな。そろそろ行くよ」


「頑張ってね」


俺はそのまま玄関に向かってから靴を履き、家を出た。



 俺がバイトから帰宅後、すぐに夕食の時間になった。家族4人揃うから、授業参観の事を話すのにうってつけだ。


「美海。授業参観、俺と姉ちゃんが行くからな」


「ありがと~♪」


本当に嬉しそうだ。美海の笑顔に癒されるよ。


「大地、学校はどうするの? 授業参観は平日にやるのよ?」

事情を知らない母さんが指摘する。


「参観日は『創立記念日』で休みなんだ。だから行けるって訳」


「なるほどね。去年もそういう話あったし今年もそろそろだと思ったけど、2人が行ってくれるなら美海も安心よね」


「うん♪」


これで後は当日を待つのみ。そう思っていたら…。


「大地。授業参観の時に着る服は考えてる?」


「えっ?」

母さんに言われるまで、まったく考えてなかった。


「その顔、ノープランみたいね。お堅い場所じゃないとはいえ、高校生のカジュアルな格好は厳しいわよ?」


「そうなのか…」

どういう服装が良いんだろう?


「私は大学の入学式の時に着た“パンツスーツ”にするわ。大地は…、制服で良いんじゃないかしら?」


「制服で良いのか?」


「着る服に困ったら、制服かスーツが無難よ。覚えておくと良いわ」


「美空の言うとおりね。大地、制服を着て授業参観に行きなさい」


「わかった」


さすが母さんと姉ちゃんだ。俺の気付かないところを指摘してくれる。今度こそ、心配する事はない…はず。



 そして授業参観当日。俺と姉ちゃんは自室で着替えを済ませる。以前聴いた“双眼鏡で家の中を覗く不審者”は捕まったらしいので、互いに安心して着替えられる。


その知らせを聞いた姉ちゃんと美海は、一瞬残念そうな顔をしたっけ。もう終わった話だし、これ以上思い出す事はないだろう…。


授業参観の時間・教科は、2限の国語になるそうだ。何人かに分かれて討論をするとかなんとか…。実際に見ないとわからないよな。


……あっという間に家を出る時間が迫っている。俺は制服に着替え終わったので自室を出る。するとちょうど、パンツスーツ姿の姉ちゃんも部屋から出てきた。


姉ちゃんは大学の入学式の時にパンツスーツを着たそうだが、俺は今初めて観るんだよな~。普段とのギャップを良い意味で感じる。


それと…、パンツスーツって意外にエロいな。露出はほぼないものの、体のラインはしっかり見えるのだ。品があるからこそ、妄想しがいがあるというか…。


「大地、目がやらしいよ♡」


「ご…ごめん」


「別に良いけど、学校では止めてね。不審者にされちゃうから」


美海を応援するどころか足を引っ張りかねない。それは絶対避けないと!


「気を付けるよ」


「もうそろそろ時間だし行こうか」


「ああ」


俺は先に階段を下りる姉ちゃんに続くのだった。

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