第9話 あたしを子供扱いするなら…こうだ!
朝食中、母さんが直近の3連休を利用して2泊3日の温泉旅行をすると言った。姉ちゃん・俺・美海の3人は留守番だが、色々不安なんだよな…。
できれば、姉ちゃんと2人きりで話せる時間を作りたいものだ。
全員ほぼ同じタイミングで朝食を完食し、食器を流しに持って行く。この後は朝の準備があるから、母さんは1階の自室・俺達は2階の自室に向かう。
偶然だが、階段を姉ちゃん・俺・美海の順番で上がっていく。そして全員上り切り、姉ちゃんが部屋に入ろうとした時だ。
「ねえお兄ちゃん。ちょっと訊きたい事があるんだけど良い?」
後ろにいる美海が俺に声をかけてきた。
「どうした?」
俺と美海が気になるのか、姉ちゃんは部屋に入らず俺達を見つめている。
「朝お兄ちゃんの部屋から聞こえた『嗅ぐ訳ねーだろ!!』って何?」
姉ちゃんが夜這いしてきた時に言ったアレを聞かれたのか。大きい声を出したものの、いつもより早い時間だから何とかなると思ったが…。
「俺はそんな事言ってないぞ? 聞き間違いじゃないか?」
“夜這い”なんて美海の教育に悪いし、知られる訳にはいかない。
「聞き間違いじゃないから!」
美海は譲ろうとしない。
「朝、私が大地の部屋に忍び込んだ時に、下着の匂いを嗅いだかを訊いたのよ」
あろう事か、姉ちゃんが一部始終を話してしまった。
「姉ちゃん。何で言っちゃうんだよ?」
「昨日言ったわよね? 『下手に抑えたりごまかすのは良くない』って」(6話参照)
「そうだけど、内容が内容だぞ」
「やっぱり、お兄ちゃんはあたしを子供扱いしてる!!」
美海はプンプン怒ってる。
「昨日の『大人っぽいぞ』は嘘だった訳? ひどいよ…」(4話参照)
「……」
返す言葉が思い付かない。
「大地。私達は家族なのよ? 都合が良い事も悪い事も共有しないとダメじゃない」
「お姉ちゃんはわかってるね~」
姉ちゃんが柔軟なのか、俺の頭が固いのかはわからない…。
「結局、大地は私の下着の匂いを嗅がなかったけど、美海は嗅いだ?」
美海は俺の後に風呂に入ったから、チャンスはあった訳だが…。
「もちろん♡ ずっと嗅ぎたいぐらいだよ~♡」
「今日のお風呂は、私が大地の後ね」
「そのつもりで下着を選んでるから大丈夫だよ」
「さすがね」
俺抜きで、今日の風呂の順番は決まったのだった。
美海のためを思って色々気遣ったが、それが逆効果になるとは…。そして今までのやり取りを聴いた限り、軌道修正は俺の手に余る。
だったら姉ちゃんの言う通りにしたほうが良い。美海もそうして欲しいみたいだし。
「美海、俺が悪かった。これからは気兼ねなく話すとするよ」
「そうして。あたし達3人に秘密はなしだからね」
姉ちゃんは俺と美海を温かい目で見守っている。
「一応念押しとこうかな~。お兄ちゃん、ちょっとかがんで」
「? ああ…」
何をする気なんだ?
「…ちゅ♡」
頬にキスされた。胸じゃなくて唇も柔らかいのかよ!
「キスは大人の証♡ そうだよね? お姉ちゃん?」
「唇にしなかったのは、大地のためよね?」
「そうだよ~。さすがにあたしが一方的に奪うのは…」
「気遣いも大人と同等ね。大地もよくわかったんじゃない?」
「まぁな…」
今の俺は、唇の柔らかさで頭が一杯だ。胸とは違い、唇は男女共にあるがここまで違うとは思わなかった。男と女って、やっぱり全然違うぞ。
姉ちゃんが自分の部屋に入ったと思いきや、すぐ廊下に出てきた。何でだ?
「2人とも、もうそろそろ準備したほうが良いよ」
多分だが、部屋の掛け時計か携帯の時計を観たんだな。
「そうだった! 今日普通に学校あるじゃん!」
美海は少し慌てた様子で、自分の部屋に入っていく。
「大地も急いだら?」
「わかってる…」
考え事は、部屋で準備しながらやるか。
唇ですら男女で大きな差があった。もしかしてだが、他のところも柔らかいのか? パッと思い付くのは、腕とか脚とか腹あたりだ。
気になるから触ってみたいな…。って、俺は何を考えてるんだ! しっかりしろ!
急いで準備した後、俺は姉ちゃん・美海と共に家を出た。
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