第3話 お風呂の順番どうする?

 美空みそら姉ちゃんと美海みうが夕食を作ってくれてる間、俺は風呂掃除に勤しむ。いつもの事だし、頑張ってやるとするか!


水回りというのは、油断するとすぐ汚れるものだ。みんなに気持ち良く使ってもらうために、細かいところも見落とさずキレイにしよう!



 ……時間を忘れて風呂掃除をやった俺。もうそろそろ夕食できたかな? そう思ってリビングに向かうと、2人はテーブルの椅子に座って待っていた。


メニューは…、目玉焼きが乗ってる焼きそば・味噌汁・サラダ・うさぎりんごの4点か。


「先に食べてて良いのに…」


「それは絶対ダメ! お兄ちゃんと一緒に食べたいんだから!」

俺の向かいに座っている美海が言う。


「美海の言う通り。姉弟仲良くしないとね」


姉ちゃんは美海の隣だ。“俺の斜め向かい”と言い換えても良い。


「そうか。待っててくれてありがとな」


俺は待ってくれた2人に感謝してから、夕食に手を付ける…。



 「そういえばさ~、前から気になってたんだけど…」


夕食が中盤に差し掛かったころ、美海がそう言って俺を見る。


「どうしたんだ?」


「お兄ちゃんって、お風呂掃除にたくさん時間かけるよね? 何で?」


「そりゃ…」


「大きくなったを鎮めるためよ」


説明しようとしたら、姉ちゃんに邪魔された。


「浴室で私達は裸になるでしょ? それを想像したら、大地だいちが元気になるのは仕方ない事よ」


「ちょっと姉ちゃん! 何適当な事を…」


「別にさ~、無理して鎮めなくてもそのままここに来ればよくない? お兄ちゃんの大きくなったは、今まで見た事あるんだし」


「えっ? 見た事ある?」


どういう事? 俺は美海の前で脱いだことないぞ?


「その顔、お兄ちゃんはバレてないと思ってる? お昼寝の後っぽいタイミングに廊下とかですれ違ったら、してる時あるよね?」


「私も見た事ある。小さい頃より膨らみが大きくなってるから、目が離せないわ♡」


…常に見られてる自覚を持ったほうが良いな。そう思う俺であった。



 全員夕食を完食した。後は風呂になるんだが…。


「お母さんは遅くなるから最後で良いって。あたし達の順番はどうする?」

美海が俺と姉ちゃんを見て言う。


我が家では、風呂の順番は特に決まっていない。忙しい母さんが最後になるのはほぼお決まりだが、姉弟の順番はその日の状況次第になる。


「そうね…。悩むところだわ」


「でしょ? お兄ちゃんのでもでも損はしないけど、どういう得をしたいかによって話は変わるよね」


「ええ。だからこそ悩むのよ…」


2人は何の話をしてるんだ? まったく付いていけん…。


「よくわからんけど、適当じゃダメなのか?」


「ダメ!」


「…そうか」


姉ちゃんと美海に同時に怒られた以上、決まるまで口を挟まないでおこう。


「大地。悪いけど、美海と部屋で話してくるからここで待ってて」


「勝手にお風呂に入っちゃダメだからね、お兄ちゃん!」


「わかってるよ。俺は洗い物をして待ってるから」


全員食器を流しに置いた後、姉ちゃんと美海は2階に上がっていく。俺達姉弟の部屋は2階にあり、階段近くの部屋から姉ちゃん・俺・美海の順になっている。


風呂の順番程度で話し合う事あるか? 俺は心の中でツッコみながら、洗い物を始めていく…。



 …よし、全て洗い終えた。さっきの風呂掃除を含め、俺は掃除好きかしれないな。 なんて思った時、階段を下りる音が2人分聞こえる。


姉ちゃんと美海は、笑顔で俺の元に来てから口を開く。


「お兄ちゃん、順番決まったよ!」


「私→大地→美海の順番ね。今日はこれが最善だと判断したわ」


「そうか…」


何が最善かサッパリだが、口を挟む気にならない。


「私は着替えを準備してからすぐ入るからね。出たら教えるわ」


「わかった」


「それじゃ…」

姉ちゃんは再び階段を上がっていく。


「お兄ちゃん。時間があったら、あたしの宿題見て欲しいんだけど良い?」


「良いぞ。宿題を持ってきなよ」


「そんなのめんどいから、あたしの部屋で見て」


「それはちょっと…」


「部屋で宿題を見てもらうって普通じゃん? お兄ちゃん、やらしい事考えてるの~?」


ニヤニヤしながら訊いてくる美海。


「考えてないから!」


妹にからかわれるとは、情けない兄だよな…。


「じゃあ問題ないじゃん。…行こ」


俺は美海に手を引かれる形で階段を上がり、彼女の部屋に向かう。

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