第13話 発掘プレイの果てに①

 強制敗北らしきが臭い始めたのは勝ったと思った瞬間、没ボスの頭上で躍り始めたものにあった。


 5


 何だ?


 4


 カウントダウンか?


 3


 固まって動けない、金縛り状態…。


 2


 ならば、問題ない。


 1


 ※※※『機動星兵団長・アイアンネブラズ』は自ら装甲を吹き飛ばした※※※


 自爆攻撃を食らっての強制敗北。爆風に煽られ4人とも残りHP1にされてはしまったが、そんなのはどうでもいい。理不尽だらけのレトロゲームに慣れ親しんだ世代にとってよくある話。


 それよりだ。強制的に爆風で吹き飛ばされる主人公の激しい動きに付き合わされるのがきつかった…。身構えていないところそうされてしまい、後頭部をもろに強打しながら不時着…。


「強制台詞といい、この強制モーションももう少し何とかならんのか!?」


「えぇ…。イベントシーンだからと言って、キャラの姿勢をああも急激に変えられると……舌を噛みそうに……」


 今時の新型フルダイブゲームはきっとプレイヤーへの過度な負担になるキャラ挙動がない様に緻密に計算されているのだろうが。


 フルダイヴなどと言う発想が全くなかった頃に作られたレトロゲームをそうしてみれば、この様にもなるか…。


【くそっ、コイツは何て強いんだ…】


 さて…。納得いかない屈辱感を地味に底上げしてくれる強制台詞プロンプターのそれを読み上げたところで…。


 床に這いつくばっていた魔導師長カルラが頭を上げる様子が見えた。


「マリカくん、このままではいけない……、あいつは」


 没ボスをタゲると『邪星竜ネブラズ・参式』と名前が変わり、見た目も全身金色の竜に。少しずつ膨らみ始めた身体の上には60の数字、再びカウントダウンか。


「魔塞都市ベルナダウンを吹き飛ばすつもりだ。こうなっては仕方ない、我が学院が永年に渡って邪星たちに対抗すべく編み出した秘術【スタークラッシャー】の封印を解くんだ……。ヤツも星ならば効くはず」


「でも、あれは……。星に選ばれし者も葬れる諸刃の剣、いざという時まで絶対に封印を解いてはならないとオルド学院長が……」


「その時が今だ! 星に選ばれし者、星に選ばれし魔導師でなければ封印は解けない。魔塞都市ベルナダウンの市民が完全に焼き尽くされてしまう前に……。我が最後のチカラで、これを受け取ってくれ……」


 HP継続回復の魔法『リジェルガ』の無料配布か。これで強制的に残HP1にされた理不尽はチャラではあるが。


「先生……」



 ※※※マリカは【スタークラッシャー】を発動した※※※


 ※※※マリカは『邪星竜ネブラズ・参式』を倒した※※※


 ようやく、金縛りが終わった…。


主人公オデンさん、これで本当に終わりのはずだ」


「はい……、それにしても長かった。本当の敵がわかっていただけに尚更……」


「まあな…。ど頭からヤツに赤い▼が付いていたのは、どうせ没データだからって処理を忘れてしまったからかもしれんが」


 今、俺がタゲっているのは赤い▼が頭の上に浮いている魔導師長カルラだ。全身ズタボロだったヤツがケロっとした様子で立ち上がった。


「素晴らしい! 邪星帝ネーブラ様より預かりし邪星獣を一撃で砕くとは」


「せ、先生? カルラ先生!? 大丈夫なんですか?」


「おぉ! 今回はよくやったぞ星に選ばれし者よ。あの星に選ばれし幼子を未来へ送り出し、ここに戻って来るを見てはチカラ無きに落胆させられる。そして、再び幼子を送り出す。果て無きと思われた絶望を何度繰り返した事だろうか」


 魔導師長カルラの姿をしたヤツが指さしているのは傷付いて倒れている9歳のマリカだった。


 この手口は見覚えがある。さて、あいつの正体が誰に設定されているのかもわかってきたわけだが。


「先生……。いや、誰!?」


「我が悲願は叶った。ついに! 【スタークラッシャー】の封印を解けるほどのチカラを備えて育って戻ってくる者が現れたのだからな」

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