日常に溶け込む “違和感”―9

ロングスカウター:『―――まあいい。とはいえ、学生姿の彼女もまた新鮮さを感じてしまうな』

ライアー:「だな。ちょっと前までは想像も出来なかったぜアイツの学生姿なんてよ―――つーか、本来なら普通の女子高生ぐらいだからなアイツも・・・・・・」

クロウ『ええ、それ故に私のメモリーハードディスクを更に増設しないといけなくなるかもしれません』


2人の会話に自然と割り込んで入ってきたAIがそこに居た。


ライアー:「おいなんでサラリと会話に混ざったんだよクロウ!?」

クロウ:『マキナ少尉の話をしていたので』

ロングスカウター:『クロウ、確か今は機体のメンテナンスではないのか?』

クロウ:『AIユニットは切り離して、暇だったので通信関連を盗み聞きしていたら大尉たちの会話を拾いまして』

ライアー:「おい、サラリとえらいこと聞いたぞ?」


現在、【ガンクロウ】は【ブリューナク】の“本部”でこの前の戦闘のデータ取得を兼ねたメンテナンスをしていた。

その為、整備を完了するまでの間の護衛と監視をライアーとロングスカウターが受け持っていたのである。

ALのAIユニットが暇だからという理由で何かヤバイことをしでかしている感じがしたが深くは聞かないことにした2人。


ロングスカウター:『クロウ、機体の調整はあとどのくらい掛かる?』

クロウ:『予定通りなら本日15:00には終了し、17:00には任務に復帰できます』

ライアー:「おまえさんがいるといないじゃ話も違ってくるからな」

クロウ:『ええ、なのでその間は少尉たちをお願いします』

ロングスカウター:『了解だ』

ライアー:「まあ、何事も無ければ楽でいいんだがな」

クロウ:「ライアー曹長、それはフラグというものではないですか?」


ライアーの発言にネットスラングを交えた言葉で返すクロウ。

ネットサーフィンしまくってるなこのAI、と多少愚痴をこぼし掛けたライアーだがそれは呑み込み、双眼鏡を再び校舎の方へと向ける。


ライアー:「ンー?」


ふとライアーは何か違和感を感じたのか更に双眼鏡で凝視する。


ロングスカウター:『どうしたライアー?』

ライアー:「ロングスカウター、すまないがガッコウ周りの周辺地区をスキャンしてくれないか?」

ロングスカウター『――――なにか見つけたか・・・!』

ライアー:「杞憂や見当違いなら良いんだが―――どうにもこの国にはおあつらえ向きじゃないモンがあったからな」

ロングスカウター『了解した。少し時間をくれ』

ライアー「頼むぜ」


ライアーの言葉にロングスカウターは素早くスキャンを開始する。

それからしばらくしてロングスカウターからの通信を見る。


ライアー:「やっぱりかよ…」

ロングスカウター:『ライアーの勘が当たったな』

ライアー:「すぐに“お嬢”へ確認を取ってくれ」

ロングスカウター:『もうやってる。とはいえ、【ガンクロウ】の調整はまだ掛かる上に向こうもいきなり攻め込むことはしまい』

ライアー:「とにかく出方を待つしかねぇか」

ロングスカウター:『人員増加の具申はした。マキナへの連絡は諸々の準備が出来てからにすべきだろう』

ライアー:「だな。迂闊に喋ったらミカサのお嬢さんに余計な負担は掛けれないからな。良いなクロウ」

クロウ:『了解しました。こちらはスリープモードに入り、作業終了まで待機します』


そう言うとクロウとの通信が切れる。

少しの緊迫を感じながらライアーは発見した対象への監視を強める。

その双眼鏡で見ているモノは・・・本来ならば日本国内で導入して“無意味なもの”がそこにあった。

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