第19話—迷宮攻略1—

 レオは今、フォルディウス地方よりも北部位置するジュモー地方にきていた。今回は全員が来るはずだったが、ロークが別の依頼に駆り出されてしまい、参加メンバーは、レオ、シルヴィア、ギルバート、クライド、カレン、イリスの6名となった。今回の彼らの依頼は、迷宮攻略である。前々から行く手はずになっていたが、様々な理由から延期されていた。

「しっかしここまでくるまで無駄に長かったなー・・・たいした戦闘もなかったし・・・」

 ギルバートは退屈そうな顔をしながら魔動列車から降りた。魔動列車とは、魔動機文明アル・メナス時代に発達した乗り物である。彼らはそれに乗り、ジュモー地方にきたのだ。

「ここからが本番でしょ。聞いただけでわかったよ。あの迷宮にはとてつもないお宝がある。」

 イリスが理由もなくそういった。お前そんなキャラだっけ?ギルバートから見られてが気にしない。その話を聞いていた旅先案内人は一言話した。

「お宝かどうかは知りませんが・・・あなた方が攻略しようとしている迷宮は、強力な魔剣だと聞いています。」

「へぇー・・・でも俺は斧だしなー・・・」

 一瞬興味を持ったギルバートだったが、その気持ちはすぐ終わった。

「そうとも限らないよ?魔剣といっても、魔法の武器の総称みたいなものだし。」

「そうなのか?!」

 初めて知り、驚いたギルバートは、記憶を探り始めた。何しろ彼が攻略してきた迷宮はすべて剣の形をしていたからだ。

「まぁ今回は剣の形をしていますよ。」

 それを聞くと、やっぱ興味ねぇなといってさっさと荷物をまとめて宿に向かってしまった。

**************************************

「ようこそ!冒険者ギルド“双濁”へ!“蒼の陽炎”からお越し方々ですね!こちらへ。」

 受付嬢に案内され、レオ達はギルドマスター室に連れていかれた。そこには、腹の出た人間の男性が立っていた。

「僕はエドガー!いやぁ助かるよ~もう僕らだけじゃ“あれ”を攻略することがでいなくてね~もうどうしたものかと・・・」

 —このおっさんすごい話すな—シルヴィアがそんなことを考えていると、エドガーが耳に下げている通話のピアスが鳴った。失礼とひとこというと、部屋の隅で電話を始めた。

「あぁ・・・うん・・・わかっているさ!これで駄目だったらそっちに全部任せるよ。ただし今きた彼らが依頼を終えるか、放棄かのどちらかをするまでは待てよ!」

 そういうと、乱暴に通話のピアス切った。戻ってくると、あきらかに顔がぐったりしており、疲れているように見えた。

「すまないね。あまり話したくなかったんだけど・・・君たちが失敗したら“軍”が攻略するということになっていてね・・・」

 それを聞いた途端ギルバートは嫌な顔をした。“軍”とは、クピュリタス大陸全土に渡る巨大武装組織のことである。魔動機文明時代は彼らのおかげで平和が成り立っていたとも言われているが、大破局直前頃は腐敗が始まっていたとされている。大破局が起き、大半の権力を失ったが、近年は徐々に勢力を拡大してきている。いくつかの国は、“軍“に治安を任せており、クピュリタス大陸における人類5大勢力圏の一つでもある。

「報酬は4000G。後は遺跡から発掘したものは、好きに持って行っていいから・・・冒険者の意地を見せつけてやってくれ。」

**************************************

「軍が関わってくるとはね・・・」

 シルヴィアがいやな顔をしながらつぶやいた。何も軍が悪いというわけではないが、近年“軍”の横暴がひどくなってきている。そんな噂もあるため、あまりシルヴィア含む冒険者たちはいい顔をしないのだ。今回のようなことは最近多いからだ。

「そういえば、クライドは軍に所属していたよね?今回の介入しようとする目的とかってわかる?」

 レオがダメもとで聞いてみると、クライドは迷わず答えた。

「そりゃ多分迷宮を作り出している魔剣だろう。おそらく持って帰ったやつが使う権利があるからな。それに俺は軍に所属しているといってもスペルビア王国の小規模のやつだ。」

「なら俺がその魔剣を手に入れて使ってやる。」

 いきなりの宣言に驚いたクライドたちだったが、イリスは売れるものが一つ減ったと嘆いていた。

「まぁ俺もあのまま“軍”に好き勝手させるのは嫌だしな。報酬はちっと少ねぇが俺はやったるぜ!」

「あたしもぐん?はよくわかんないけど一発かましてやる!」

 ギルバートとカレンはそう高らかに宣言すると、お互いにそのことに気づき、向き合って握手した。この二人脳筋どうにかならないかな・・・っと最近シルヴィアは思い始めた。しかしシルヴィアも異論はない。“軍”には特に思い入れはなかったが、ただただ横暴を見ているだけは癪に障るからだ。

「それじゃあいこうか。その迷宮に。」

**************************************

「やぁ順調ですか?」

 レオ達を尾行していた少年である褐色で三つ目の種族—シャドウ—ことライゼは驚いて振り返った。声の先には、フードを被った男が立っていた。

「・・・ファルシュ様、何の御用でしょうか?僕の任務の変更ですか?」

「いえいえ、ただ様子を見に来ただけですよ。」

この人、暇なのか。そんなことをライゼは思わずにはいられなかった。

「一つ任務の追加です。彼らが向かおうとしている迷宮の魔剣、“東雲”を可能ならば奪取しなさい。ただし正体を明かそうとするまでのものではありませんので、無理しない程度でお願いします。」

それをきくと、彼は恭しく頭を下げた。

「御意」

第19話—迷宮攻略1—完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る