第17話—失った者—

「うーん・・・想定外」

 イリスは思わずボソッと呟いてしまった。本来ならば、ボンボンドレイクを倒せばそれで終わりのはずだった。しかし—

「まったく・・・ドラ息子が心配になってみてみれば・・・死んでいるじゃないか!跡継ぎは次男のやつに任せればいいが、一応あれでも私の息子なのでね・・・仇は取らしてもらうぞ?それともハエレティクスの一人、“滑空男爵”リートの奴隷となるか?ん?」

 そういってリートは竜化し、その巨大な図体でイリスたちを見下ろしてきた。

「誰がお前なんかの奴隷になるものか!拳でねじ伏せる!」

 カレンは高らかに宣言し、リートに向かって殴り掛かった。いきなり6連撃をかましたが、2回しか当たらず、逆に翼の攻撃により吹き飛ばされてしまった。

「マギスフィア起動。コードロード:【クリティカルバレット】」

 ロークが放った弾丸は翼を貫き、リークを地面に落とした。すぐさま二射目を放ち、命中させた。

「ヴェス・オルダ・ル・バン。シャイア・スルセア・ヒーティス—ヴァルハスタ


      【エネルギー・ジャベリン】」


 イリスは呪文でマナの槍を2本出現させ、リークに向かって投げつけた。当たったリークはひとたまりもない。—なんだ?、この魔法の威力は?本当に実力とみあっているのか?威力が桁違いすぎる—

「カレンさん、トドメ、頼みますね?」

 そう言い終わるやいなや、カレンが林の中から飛び出しながら渾身の一撃を放った。直撃したリークは口から血を吐きながら倒れていくのであった…

**************************************

 レオ達とピルゴスの戦いは熾烈さを増していた。ピルゴスによる一撃は大きいが、クライドによって防がれていた。クライドが食らった傷をレオが治し、そして隙をみて、シルヴィアとギルバートが攻撃をする。その繰り返しだった。しかしいつまでも同じことができるわけではない。レオのマナの限界が今のところは大丈夫だが、このまま続けば明らかにこちらに勝ち目はない。

(・・・そろそろ打開策を見つけ出さないとこっちがやられるな・・・急がねぇと・・・)

 ギルバートは焦りを覚え始めていた。こうしている間にもレオのマナは減っていく。

「・・・レオ、俺の回復はいいから攻撃に専念してくれ。そうしなければじり貧だ。」

 クライドの思わぬ提案に驚いたレオだったが、他に選択の余地はないと気づき、彼は頷くとフランベルジュを握りなおした。

「ここまでやるとはな、ただな人間よ・・・ここで死んでもらわなければ困る!」

 ピルゴスは自分に鼓舞させると、手にしていたハルバードをギルバートに向かって大きく振りかざした。すんでのところでクライドが割って入った。しかし彼は次の瞬間、大きくよろけてしまった。傷が深すぎたのだ。

「クライド!」

「かまうな!いけ!」

 クライドの一言に一斉に動き出した。

「【アストラルバーン】」

 シルヴィアが放った魔神の思念のマナの塊は命中こそしたが、致命傷を与えるまではいかなかった。続けてギルバートも大きくクーゼを振りかぶったが避けられてしまった。

「クッソが――――――!」

 ギルバートは溜まっていたストレスが爆発してしまった。もう一度攻撃しようとしたが、当たることはなく、またもや避けられてしまう。

「・・・ギル・・・落ち着け・・・おやっさんからよく言われてるだろ?“熱くなりすぎるな”って・・・」

 クライドの声をきいて、ようやく落ち着くことができた。ギルバートの悪い癖だ。すぐ熱くなってしまうことで、攻撃が単調になってしまう。—ほんっと変わってねぇな、俺—

「・・・俺とシルヴィアでなんとしてもあいつを止めるから、とどめ、お願いできる?」

 レオがギルバートに尋ねた。シルヴィアも納得しているようで、先ほどまでとは違い、レイピアを抜いていた。

「実を言うともう私マナが残っていないからもうあんま役に立てないんだ。だから頼むよー?」

「あいよ・・・確実に仕留めてやらぁ!」

そういうと、ギルバートは体の態勢を低くし、斧を構えた。

「レオ、守りは任せたぞ?」

「了解。」

 次の瞬間、シルヴィアが目にも止まらぬ速さでピルゴスを斬った。

「—転瞬—」

静かにそうつぶやくや否や、レオが魔力込めた最大の一撃を振った。

「—龍驤—!」

 そして—

「—狂濤!—」

 こうしてギルバートが放った荒波のごとき一撃により、“孤高の巨兵”ピルゴスは絶命したのだった。

**************************************

(これは、誤算でしたね・・・殲滅の魔導師彼女がここにいるとは予想外でした・・・しかしパシオンには悪いことをしましたね・・・)

 レオ達の戦闘を、木陰から見る者がいた。リカントの集落の時にいた、あのフードを被った男だ。表情こそ見えないが、薄く嗤っていた。

(まぁひとまず今日は帰るとしますか・・・私が始末してもいいのですがまだ名前があまり知られていない身なので失敗したときのばれる確率が高いのでね・・・)

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「お前らは一回の依頼が終わると、何か拾ってくるのが、当たり前なのか?」

 ギルドマスターであるライゴウが聞かずにはいられなかった。何しろ一か月で二回目なのだ。

「まだ二人目だよ。それにわざとじゃないから。」

 思わずレオは苦笑しながら答えた。とはいえいつまでも部屋があるわけでもないので、嫌な顔をされても仕方がないのだが。

「んじゃ、冒険者登録すっぞ・・・・・・・・・手慣れてるな、嬢ちゃん歳いくつ?って失礼な質問だったな・・・はい完了。ようこそ“蒼の陽炎”へ」

 軽く手続きを済ませたイリスは、部屋を案内されていた—はずだったのだが、

「すまん。物置部屋になっとった。今日のところはシルヴィアかカレンの部屋で寝といてくれ」

っと初日からついていないイリスなのであった。

第17話—失った者—完



ステータス

イリス・ヘロイース   エルフ  ?歳

起用度:16

敏捷度:18

筋力:5

生命力:12

知力:38

精神力:31

技能:ソーサラー8

   コンジャラー8

   セージ5

戦闘特技≪ターゲッティング≫≪魔法拡大/数≫≪魔法収束≫≪魔法制御≫

装飾品〈叡智のとんがり帽子〉〈奇跡の首飾り〉

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