新たな出会い
第8話—リカントの集落での出会い―
「商人の護衛依頼?」
衣服を仕立てていたレオは顔を上げて、話を持ち込んできたギルバートの顔を見た。
「おう。今おやっさんからその話が出てきたんだ。最低でもブロードソード級以上に任せたいそうだから。ただできれば、俺らにお願いしたいそうだとよ。」
それでグレートソード級である俺たちに話が回ってきたのか。冒険者は剣のかけらという、強力な敵を倒すと手に入るものがある。その剣のかけらを冒険者ギルドに上納することによって、名誉点を得られる。得られた名誉点は、武器の専用化や冒険者ランクに使われる。冒険者ランクは、下からダガー、レイピア、ブロードソード、グレートソード、フランベルジュ、センチネル、ハイペリオン、始まりの剣とあり、「駆け出し」、「成長途上」、「一人前」、「要注目」、「実力者」、「一流」、「勇者」、「英雄」と評価の度合いが変わってくるのだ。彼らは今グレートソード級に位置し、この冒険者ギルドで一番の実力者集団である。
「けっこう大きな護衛なんだね。どんな人なの?」
「この前行ったトラストーン商会の息子さんだとよ。定期的にその集落に行って商売してるんだとよ。」
トラストーン商会は、スペルビア王国内だけでなく、周囲の町や国とも貿易している。そのため冒険者を雇うことが多いのだ。
「それとおやっさんが言っていたんだが、この依頼が終わったら、地方をまたぐような依頼をしたいらしいぞ。」
「ついにか・・・向こうでも依頼うけられるのかな・・・」
「そこんとこはだいじょーぶだろ。」
クピュリタス大陸の冒険者のルールは詳しく決められているようで決められていないところがある。なので、どこか遠くに行き、その場所で依頼を受ける場合は、一時的にその冒険者ギルドと仮契約することになる。その時の報酬は、現地のギルドから支給されるのだ。
「とりあえず分かった。いつ集合?」
「明日の明け方、5時ぐらい。」
「りょうかい。」
「最近蛮族の動きが大きいから気を付けろよ」
そういうと、また目線を下に戻し、服の仕立てに戻るのだった。
**************************************
「依頼人のロナルドです。よろしくお願いします!」
当日、時間より先にいた依頼人は、聞き取りやすい声でそういった。歳はレオ達と同じくらいで、腰にはロングソードぶら下がっていた。
「戦士の心得があるのか?」
ため口で話したため、クライドやレオ、シルヴィアには睨まれたが当の本人たちは気にしていないようだった。
「大丈夫です!ギルさんとは戦い方を教わった仲なので!」
商人の息子に武術を教えていいのか?そんなことを考えてしまったレオだったが、深くは追及しないことにした。
忘れ物がないことを確認し、出発すると、後ろから尾行する影があったのだが、このとき、誰も気づくことができなかった。
三日ほど経つと、目的地であるリカントの集落ついた。道中特に大きな戦闘を行うことなく、進むことができたので、予定より早く到着することができた。集落はそこまで大きいわけではなく、数十個の家族単位で形成されているようだ。
「やぁロナルド君、久しぶりだね。いつもの頼めるかい?」
「はい!胃薬ですね!」
「おい坊主、薬草あるか~?」
「はいはいただいま~」
「・・・・・・・暇だなー」
ロナルドが商売を行っている間、自由行動をしてていいといわれたレオ達だったが、やることがなく、手持ち無沙汰にしていた。シルヴィアは事前に本を持ってきて読んでおり、ギルバートは筋トレ、クライドはロナルドの手伝い、ロークは子供の遊び相手ををしていた。服持ってきて縫えばよかったなーとレオが思っていると一人の子供が近づいてきた。
「おにーちゃんもぼうけんしゃ?」
「そうだよ。」
「強い?」
「それなりに強いよ。」
「バンチョ―よりも?」
「それはわかんないな~・・・ってバンチョ―ってだれ?!」
あっさり聞き逃してしまいそうだったが、なんとか聞くことができた。
「とっても強いおねーちゃん!!すごいよ!そこら辺の蛮族や動物なんか敵じゃないよ!」
そっかーと相打ちをうっていたが、レオの頭の中はそのバンチョ―とやらでいっぱいだった。どんな人か想像できないので、実際に会ってみたいと思ったのだ。
「その人って今どこにいるかわかる?」
そうきくと首をかしげて、困った顔になった。
「うーん・・・そういえば今日まだあっていないなぁ・・・たぶん族長の家だと思うよ!」
レオは教えてくれた子供にお礼を言うと、その村長の家を目指そうとした。その途中、シルヴィアが本を読んでいた位置にロークがいるのが見えた。
「あれ?シルヴィアは?」
そう聞くと、彼は黙って右のほうに指さした。その先には、シルヴィアと、リカントの少女が戦闘をしているようだった。
「今のところ、シルヴィアのほうが劣勢ですね」
なんとかかわしているようだがいるようだが、これまでの間に一撃くらっているようで、動きがあまりよくない。対するリカントの少女は魔法のダメージを受けていながらもいきいきしていた。
「すごい!これが外の世界なんだワクワクする!」
「そう私もここまで速い攻撃、初めて見たわ。」
平常心を保とうとしているのがわかるが、明らかに息が上がっている。
「ねぇねぇ!あなたの名前はなんていうの?もっといろんなことが知りたいな!」
「・・・シルヴィア。あなたは何ていうの?」
そういうと、リカントの少女はにっこり笑ってこう言った。
「あたしはカレン!ねぇ、あたしを外の世界に連れてって!」
第8話—リカントの集落での出会い―完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます