第3話—取り戻す者—

「じーちゃん!今日はなんの話をすんの?」

幼い頃のギルバートが祖父の手を引っ張りながら聞いていた。

「そうだなぁ、穢れし二人の英雄の話なんてどうだ?今回はドラゴンを倒したときの話をしてやろう。」

「どんな話?どんな話?」

「慌てるなギル・・・昔々、二人の穢れた英雄がとある村にやってきました。そこには、毎月悪い竜に宝石をもっていかなければならず、でなければ村を滅ぼしてやるといわれていたそうです。その時村では宝石を用意することができず困っていました。たまたまやってきた英雄二人はこの話を聞き、ドラゴン退治に向かいました。戦いは三日三晩続きましたが、ついに悪いドラゴンは倒され、村に平和が訪れたとさ。めでたしめでたし。」

「ねぇ、そのあとの英雄ってどうなったの?」

頭を撫でられていたギルは不意にそんなことを聞いた。

「うーん・・・わかんないなぁー。だけど、生きているんじゃないか?もしかすると。」

そういうとニヤリと笑って見せた。

「なら俺は英雄を探す旅をする!」

そう高らかに言うと、ちょっと向こうまで行ってくるーっと言って町はずれの一番高い木に向かって走って行った。

パン屋のおじさんが、おい坊主、こけるなよーと声をかけてきた。木の上に登ると、自分が住んでいる町、フェルンヴェーを見下ろした。町は活気あふれており、賑やかそうだった。

(俺もいつか仲間を見つけ出して、俺らだけの物語を作っていくんだ!)

そう思いながら夢の世界へと誘われていった。

 次に目覚めたときは、この世のものでは思えないほどの地獄絵図だった。町のあちこちには火の手が上がっており、蛮族で溢れていた。ギルバートは急いで木から降りると、あたりを見渡し、自分の家へ向かった。中には無惨に転がっている父と母の死体であった。

「うっあ・・・」

恐怖で動けなくなってしまったが、次の瞬間誰かに抱きかかえられた。祖父だった。

「オーガたちにやられた。あいつらは人に化ける能力を持っているんだ。」

そのまま祖父はギルバートを小脇に抱え、走って行った。そのまま物陰を見つけ、ギルバートをそこに置くとこういった。

「いいか?朝日が昇るまででてくるんじゃあないぞ?誰であってもだいいな?」

ギルバートがうなずくと、安心した顔になった。そこからしばらくは何もなかった。

           そうしばらくは。

4時間ほど経った頃、ギルバートが潜む物陰の近くで物音がした。思わず彼はビクッとしてしまった。

「やぁギル。そこに他には誰かいるかい?」

そこにはパン屋のおじさんがいた。

「おじさん!」

つい出てきてしまった。それがいけなかった。一瞬にしてパン屋のおじさんは2m近くまで大きくなった。ギルバートは大きく目を見開き、絶望の色に染まっていった。

「その顔が好きなんだよ俺ぁ。楽しくなってきちまったぜ。だけどここまでだぁ坊主、じゃぁな」

そういうと、ギルバートに向け、呪文を唱え始めた。

「ヴェス、オルダ・ル・バン。シャイア・スルセア・ヒーティス―ヴォルハスタ【エネルギー・ジャベリン】」

次の瞬間—

祖父の胴体を貫通する瞬間が見えた。

「逃げろ!こいつはオーガウィザードと言って、魔法に優れているオーガだ!お前がなんとかできる相手ではない!」

祖父の必死の勧告を受け、一目散に逃げた。しかしすぐに回り込まれ、

「死ねや!」

そういって魔法を撃たれそうになった。しかし次はなかった。一人のドワーフの戦士が、オーガウィザードの胴と首を切り落としたからだ。

「大丈夫か?坊主。」

それがギルドマスター、ライゴウとの出会いだった。

**************************************

「なんであたんねぇんだよぉぉぉぉぉ!?」

現実では、村長の家の前でオーガウィザードとの戦闘が続けられていた。正確に言うと、オーガからの攻撃をひたすら避けながら、距離を詰めている感じだ。徐々に近づくことが出来ているが、体力が消耗していく。しかしそれは相手も同じことだ。魔力の消費が馬鹿にならないからだ。

「ようやく間合いに入れた・・・か!」

 そういうと、手にしていたクーゼを大きく振りかぶった。オーガウィザードは切断にこそいかなかったものの、かなりの痛手を負うことになった。

「チッ・・・もうマナがやべぇんだよ!さっさと当たれっつってんだろ!ヴェス・フォルス・ル・バン。シャイア・エルタリア—ランドルガ・・・【ライトニング】!」

そういって稲妻を放つと、初めてギルバートに攻撃が通った。

「くそが・・・」

そういうと、一時的に後退した。その様子をみて、オーガウィザードは、

「なんだ。お前、範囲攻撃は避けられないのか?」

と言い、また同じ魔法を唱えた。

先ほどまでのダメージにはならなかったが、やはりそれなりに痛手のようだ。

(このまま続けるとやばいな・・・)

そんなことをギルバートが考えていると、

「交渉しないか?」

そうオーガウィザードが言い出してきた。

「この場から逃げ去るんだったらお前だけは見逃してやる。」

「・・・それを受け入れると思うか?」

「まだ私は魔力に余裕がある。その状態でも戦うかね?」

そう見下したように語りかけてきた。気がつくと辺りには野次馬が集まっており、怯えていた。それもそうだ。村長だったものが巨体な姿で戦っているからだ。今どちらが正しいかは一目瞭然だ。

「その必要はねぇよ。・・・俺一人じゃねぇぜ?」

次の瞬間、村長の家の上から弾丸が飛び、オーガウィザードの体を貫通させた。

「へ?」

ギルバートはすぐオーガウィザードの首を切り落とした。

「—それでは、レオ達を助けに行きますか。」

屋根の上で、ずっと待機していたロークが下りていきながらギルバートに話しかけた。

「いやさすがにちょっと待てよ!俺まだけが治ってないんだが?!」

「おや?ではすぐに楽にしてあげますよ。」

そういってギルバートのこめかみにデリンジャーを向けた。

「ちょっ—」

「マギスフィア起動。コードロード:【ヒーリング・バレット】」

そういうと、ギルバートに向けて回復弾を発射した。

「他に怪我したところはありませんか・・・てっどうかしました?」

「・・・まぎらわしいわ!!」

**************************************

場面は変わってレオ達。彼らは芸人と話をつけるために、芸人が借りているという家に向かっていた。

「手っ取り早いのはワニを殺すことだな。」

 クライドが無慈悲にもそういった。

「それもうどっちが蛮族かわかんない行為だけど・・・その通りなんだよね・・・」

レオが地図を見ながら相槌を返した。しばらくすると目的地が見えてきた。

「すみませーん。誰かいませんかー?」

そうノックしながらレオが言った。しばらくすると、奥から魔法使いらしき姿をした女性がでてきた。奥にはなにやら壺や竜のうろこのようなものが見えた。

「なにか御用ですか?今私は忙しいのですが・・・」

そうぶっきらぼうにいうと、レオ達を睨みつけた。

「失礼、ここは芸人が住んでいると聞いてきたんだけど・・・あっているかな?」

「確かに芸人をここに泊めています。ですがもう帰られましたよ?」

そういうと、扉を閉めようとすると、

「あ!ちょっと待ってください!」

慌ててシルヴィアが止めた。

「まだ何か?」

「あなた、魔神使いですよね?」

そういうと、あからさまに怯えた表情になった。

「そこの後ろにあるのって—」

そういい終わる前に彼女は口笛を吹いた。

「ピー!」

すると奥からワニがぞろぞろ出てきて襲い掛かってきた。

「おいおいまじかよ・・・」

そう言いながらクライドはワニとの間に割って入った。攻撃は防具で一切通らなかったようだ。

「対人戦は、嫌なんだけどな。」

第3話—取り戻す者—完



ステータス

ギルバート・ロングフェロー  ナイトメア 男 17歳

起用度:21

敏捷度:24

筋力:27

生命力:15

知力:19

精神力:19

技能:バトルダンサー7

   コンジャラー5

   レンジャー6

   エンハンサー1

戦闘特技:≪武器習熟A/アックス≫≪薙ぎ払い≫≪マルチアクション≫≪武器習熟S/アックス≫≪必殺攻撃Ⅱ≫

武器:醜悪なクーゼ+1

防具:ポイントガード

装飾品:熊の爪

所持金:5100G



次回予告

レオ「やっぱり俺の出番が少ないと思うんだ。」

クライド「そうか。がんばれ。」

レオ「雑!?」

ローク「もっと独特なアイデンティティーを作ったらどうでしょう?語尾にレオをつけるとか?」

レオ「それちょっと違うと思うしなんかおかしなキャラだよ!?」

ギル「そもそもまだ全体的に盛り上がる要素ないだろ、この小説。」

シルヴィ「恋愛要素ゼロだしね、今のところ・・・どこを目指しているんだろう?この小説」

ギル「それを言ったらおしまいだ。よしそろそろ終わろう。ローク頼む。」

ローク「次回、第4話—守る者—お楽しみに」

クライド「あ、普通に言うんだ。」

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