◆闇の王子

「クク! 大丈夫!?」

「キキ、来てくれたのね」


 ククはまだ意識があったが、だいぶ傷を負っているようだ。


「ククを傷つけるなんて、絶対に許さない!」


 ククの傷を見て、キキはシャドに憤った。しかし、シャドは不敵に笑った。


「邪魔が増えたな。まぁ良い、お前も消してやる!」


 シャドは小枝を振るい、大きな魔法弾を放った。魔法弾が当たると大きく弾け、キキは傷ついた。


「キキ、逃げて! あなたは戦えない!」


 ククは叫んだ。が、キキは弱々しくも立ち上がった。


「確かにぼくは、魔法ができない。でも、他にできることは必ずある! 枝を思いっきりぶつければ良いんだ!」


 キキは全力で、シャド目がけて枝をぶつけようとした。

 しかし、シャドは魔法の障壁を張った。枝の攻撃が弾かれ、キキは後ろへ倒れこんだ。


「枝をぶつける? そんなのは無駄だ! 例えそれで人を殺せたとしても、魔法が使えない奴は能無し! この世界では、魔法を使える奴が一番強い!」


 弱ったキキを、シャドは嘲笑い罵った。それを見て、ククは怒りを爆発させた。


「わたしたちだって、魔法を使えるわ! あなたたちに負けるはずがない!」


 ククは叫びながら、シャド目がけて魔法弾を放つ。だが、それも、シャドの障壁ですべて弾き返されてしまった。

 やはりシャドは笑った。とどめに、シャドは今までよりも大きく小枝を振るうと、巨大な魔法弾を生み出した。


 魔法弾は、風のような勢いで、キキに向かって進んだ。そしてキキに当たると、衝撃とともに大きく弾けた。

 キキはもう弱りきっていた。


「キキ!」


 ククは悲しげに叫んだ。


「言っただろう! この世界でものを言うのは魔法を使える奴だ、と。いつまでも魔法を使えないなら、一生諦めろ!」


 馬鹿にした笑みを浮かべながら、シャドは向こうへと去っていった。


「キキ、大丈夫!?」


 ククはキキに寄り添い、声をかける。


「何とか、大丈夫。ククも大丈夫?」


 キキの方も、ククを心配していた。


「わたしは平気よ。やっぱりわたしたち、もっと強くならなきゃ」


 ククはさらに決意を固くした。その目は真剣だった。


「そうだね。ぼくも、できることをもっも増やさなきゃ」


 キキも使命感を持ち、二人は今までよりも熱心に修行に取り組むようになった。何日間も旅を続け、二人はドワーフの村に到着した。

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