弓道推理 — SNS炎上と失格のロジック ―

もっこす

プロローグ

 弓道には、世の中の認知度が絶望的に低い組織がある。


 学生弓道連盟がくせいきゅうどうれんめい、大学生による大会運営組織だ。

 通称「学連がくれん」、大学弓道全体を統括する司令塔のような存在だ。そのため、彼ら学連がいなければ試合の開催は難しい。つまり、大学弓道では必須の存在である。

 日本を9つの地区に分け、それぞれ地区別に役員が選ばれる。毎年、弓道部のある大学の中から選ばれた者が務め、役員は1学年につき8人。任期に関しては地区によって違いはあるが、大会を運営する立場であることは共通している。

 ただ困った事に、毎年のように発生する問題もある。それは学連の役員になることを嫌がる人が多いこと。受験の倍率で例えると0.2倍ほどだ。そのため、裏側ではこんな事情を抱えていたりする。部活の先輩から強制されて仕方なく学連役員になる人、部活内でのジャンケンで負けた人。理由は様々だけど、ジャンケンの敗者を司令塔の一員にする。その事実が、もはや人気のなさを証明している。


 でもね。

 

 これは個人的な意見だけど、「どうしてなの?」と、言いたい。

 せっかく学連役員になれるチャンスがあるのに、嫌がるなんて勿体ない。こんなにも楽しい仕事は他にないと思う。みんなが嫌がるから自分も嫌だ。そんな人には食わず嫌いといった言葉が似合うだろうか。食べてみれば、案外美味しいと感じる事はよくあると思う。美味しさを例えると、腹ペコの状態で食べたオニギリ以上だ。

 この物語は、8人の学連役員が前代未聞の事件に巻き込まれ、謎を解決するために奮闘する。そしてこの事件の犯人は。

〝決勝戦に残った6人の中にいる〟

 これは本当だ。突然知らない人物が登場し、その人が犯人です。なんて事はない。


 そうだ、一つ言い忘れていたことがある。この物語に登場する襟足えりあしの長い男は、自分から希望して学連役員になっている、とてつもなく変わった性格の男だ。注意してほしい。


 それでは──弓道推理きゅうどうすいりの始まりだ。

 この事件の謎を解くヒントは〝襟足えりあしに宿るもの〟だ。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る