有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して一生親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった。こうなったら学園生活を謳歌してやるって思っていたのにどうやらそうはいかないらしい
第5話 いつまでもあると思うな親と剣。合格しないとやばいから全力でいくわ
第5話 いつまでもあると思うな親と剣。合格しないとやばいから全力でいくわ
一次試験会場である訓練場。
訓練場というよりは円形闘技場と言った方がわかりやすい造りだね。
360度、観客席に囲まれた中央に俺達受験生は集められていた。
唐突に前方の方で、ボワっと緑色の炎が舞い上がったかと思うと、炎の中から茶髪の男性が現れた。
なぁんか見た目がやたらとチャラいのが出て来たなぁ。着けてるサングラスもチャれー。
「ちっすー。みんな、おっつー」
緑色の炎が消えると同時に、見た目通りのチャラい声を出す男は指をピッピってやって受験生達に挨拶をしていた。
『あ、あの人は!』
どこかからモブ受験生の、「説明しまっせ」と言わんばかりの声があがる。
『アルバート魔法団第ニ部隊隊長のカンセル・カーライルだ!』
『カーライル伯爵家きっての魔法の天才が第一試験官だと!?』
『さすがアルバート魔法学園! すごしゅぎる』
モブ受験生達、説明どうも。
「いぇー! どもどもー!」
自分が注目されていることに気が付いたらしい。試験官が受験生に陽気に手を振ってやがらぁ。チャれー。
「よっし! 早速と試験を始めますか」
チャらい試験官が懐から木の枝みたいな杖を取り出すと、地面に向かって振ってみせる。
「うらぁ。来いや、ゴーレムちゃんよぉ」
するとあら不思議。地面からあっという間にゴーレムちゃんが現れる。
このゴーレムちゃんはあれだね。
泥団子をめっちゃ丁寧に作って最後にサラ砂でまぶしたような、綺麗な泥団子の泥人形版って感じ。
「造形魔法ですか。流石は第二部隊隊長さんですね」
隣でヴィエルジュが感心する声を上げていた。
「凄い魔法なん?」
「はい。造形魔法は特殊な魔法で上級魔法使いでも扱える者はほとんどいないと言われております」
「ほぅ。うむ……。つまり?」
「あの人はめっちゃ凄い人です」
「なるほど。わかりやすい説明ありがとう」
「わかりやすい説明の報酬は、本日の晩御飯のあーんでよろしいですよ」
「この試験に受からなかったら本日の宿も危ういってのに晩御飯のあーんって」
「悩みどころです。ご主人様へあーんもしたいし。ご主人様へあーんもされたい。さて、どちらにしましょう」
むむむ、なんて可愛らしい悩みを発動させてらっしゃいます。
「お前らー。よく聞けー。一次試験は俺の愛の結晶ゴーレムちゃんと戦ってもらうぞー」
『ええええええええええええ!!』
受験生達の驚いた声が訓練場に響き渡る。確かに受験生達が声をあげるのも頷ける。
あのゴーレムの魔力を感知したんだけど、めちゃくちゃ強いわ。ここにいる受験生じゃ、俺とヴィエルジュを除いて誰も太刀打ちできんだろうよ。
「安心しろっての。ゴーレムちゃん、まじ女だからよ」
そこは関係あるのだろうか。多分、ないだろうな。
「なにも倒せってことじゃないから。これはあくまで試験だ。戦闘中にお前らの実力を測らせてもらう」
なるほどね。戦闘はただの判断材料ってわけか。
受験者達からホッと安堵の息が出たところで、チャラ男試験官がニタァっと笑う。
「腕に自信のある奴は倒してみろよ。ゴーレムちゃんを倒せたら入学試験自体を無条件に合格にしてやらぁ。かっかっかっ」
……ぬ?
今、あのチャラ男なんてった?
倒したら無条件に合格って言ったか?
「さ、試験を開始するぞー。まずはリオン・ヘイヴン」
「は?」
待って。俺から? うそ。俺からなの?
ちょっと待てよ。魔法使えない奴から始めるってどんな公開処刑?
こちらが脳内で焦っていると、チャラ男が杖を振った。
すると、俺以外の人間が観客席へと飛ばされちゃってたよ。
ポツンとひとり取り残されるぼくちん。
このチャラ男。すげーな。
一瞬にして受験生俺以外の全員を訓練場の観客席へと飛ばしやがった。
とか、感心してる場合じゃない。
『ぷっ。最初からヘイヴン家の落ちこぼれか』
『騎士の家系を見放され、魔法も使えないゴミになにができるんだ』
『こうやって一流の魔法使いの魔法を目の当たりにできただけでも感謝しろよな、雑魚』
『そう言ってやるなよ。落ちこぼれが無謀なワンチャンにかけているんだ。見守ってやろうぜ。無様な姿を』
『記念受験、乙』
記念受験じゃ路頭に迷っちまうから避けたいところだわ。
「すみません。試験官さん」
「んぁ? どったの?」
「これを倒したら入学できるって本当ですか?」
ゴーレムを指差して質問を投げると、言葉が通じているみたい。
ふんがーふんがーと怒っていた。
きみ、言葉がわかるのね。
『あいつ、頭おかしいんじゃねぇの? あんなのカーライル様の冗談に決まってるだろ』
『落ちこぼれだからゴーレムの力量がわかってないんじゃないか』
『ちげーねぇ。それかもう絶望してどうにでもなれって思っているのかもな』
ギャラリー達のブーイングを聞いている余裕など俺にはない。今は寝床の確保が大事なんだ。
「へぇ。なに? 本気で倒せると思ってるの?」
「魔法以外なら」
「こりゃまた面白いことを言うもんだ。いいぜ。なに使っても良いから倒してみな。そしたら無条件で入学だ」
笑いながら試験官のカーライル伯爵家のチャラ男は、杖をゴーレムに向けた。
「ほい。試験開始」
『OOOOOOHHHHHH!!』
なるほど。そうやってゴーレムちゃんを操るってわけね。ゴーレムちゃんの強さは術者に依存するって感じなのかな。だったらおっそろしいくらい強いゴーレムちゃんだね。
こりゃ実力隠してたら勝てんわ。
全力出すしかないか……。
くそっ。目立つとロクなことがねぇが、今はそんなこと言ってる余裕もなし。
このゴーレムちゃんを剣技でぶっ倒してやらぁ。
魔法学園の入学試験に魔法じゃなくて剣技を使うなんてどうかと思うが、知らん。
ただ、剣技を使うには必ず武器が必要となる。手元に武器などない。
仕方がない。ごめんよ、レーヴェ。
俺はレーヴェからもらったネックレスを引きちぎった。
ちぎれたネックレスに俺の魔力を送り込むと、あら不思議。
ビーンっと伸びた
いつまでもあると思うな親と剣。
親のスネをかじって生きようとしていた俺がなにを言っているんだって話だが、問題はそこじゃないんだよね。
騎士たるもの、いつも剣があると思うなってことで教わった剣技だね。なんでも武器に変えて戦えってヘイヴン家の教え。
ちなみにライオ兄さんはできないよ。あいつ脳筋だから。
武器はなんとかなったから、これで剣技が使えるってね。
『GOOOOOOHHHHHH!!』
こちらが
「おっと」
そんな大振りじゃ魔力が感知できる俺には当たらんぞ。
『……!? GAAAAAAAHHHHHH!』
ひょいっとかわしてやると、次は左のパンチが飛んでくる。それもひょいっとかわしてやる。
『UGAAAAAA!!!!!!!』
パンチをかわされてイライラしているのか。大振りだったパンチが更に大きくなる。
すごいやこのゴーレムちゃん。本当に魔法でできてんのかよ。人間の意思みたいなの持ってるぞ。
だけど、その無駄な感情が仇となっている。
右へ左へ水平へ。
ゴーレムちゃんが連続にパンチを放ってくるが、鼻歌混じりでひょいひょいひょいっとかわしてやる。
「さて。そろそろ反撃開始だ」
大振りになっているところで隙だらけのゴーレムちゃんへ、こちらからの大技をプレゼントしてやる。
「はあああああ!」
「リオン流奥義──」
宿った太陽の力を解放するように、俺は
『
ゴーレムは頭の先から簡単に真っ二つに斬れ──。
『GYAAAAAAAHHHHHH!』
ボオオオオオオオオオオン!
大爆発が起こる。
ゴーレムちゃんは跡形もなく消え去った。
これがリオン流奥義。技名通りに3分で
とか言っちゃったりして。
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