第9話 まずは食糧事情をよくする為に、必要な人材集めと金を作る!

――翌日、急ぎの便で商業ギルドマスターのデッドリーから人員に関する書簡が届いた。

どうやら仕事を探している人間は山のようにいるようで、鉱山夫になりたい者や、木の伐採をしたい人員。そして女性の人員として漁業に携わる人間は多数用意する事が可能だと言う知らせを受け、来週頭に人材をまずは30人ずつ雇いたい事を告げ、漁業に関しては子供も含めていいので150人用意して欲しい事を告げた。

魚の干物が食べられると言うだけで、随分と食糧事情が変わるからだ。

竿はオアシスでも使っている為売っているし藁や網籠は用意できるが、その上での天日干しや一夜干しとなりそうだ。多めに発注を掛けて纏めて国で買い取ろう。

また、アイテムボックス持ちならば、大なり小なり構わないので全員雇いたい旨も書いた。


それらを記した書状を作るとテリオットに手渡し、直ぐに商業ギルドマスターの元に行く事と、必要なモノを手配するよう頼むと駆け足で出かけて行った。

購入したものは元闘技場に持っていく様に伝えていたので大丈夫だろう。



「まずは一つずつだな」

「アイテムボックスを持っている者は少ないですから今いる人数が多ければいいのですが」

「どこでもアイテムボックス持ちは引っ張りだこだからな」

「彼らがいるだけで作業速度が随分と変わりますからねぇ」

「それより、木材を乾かす土地は選べたか?」

「はい兄上。王都からそう離れておらず、警備もとなると廃村となりますがそこが空いております」

「ああ、大飢饉に見舞われて廃村になった地だな。そこを広く使おう。木材倉庫も直ぐに手配をして作るよう建築師に頼むとしよう」

「そうですね、まずは石の建物で宜しいですか?」

「ああ、まずは石の建物からでいい。乾燥した木材を加工する為には必要だ」

「畏まりました」



こうして着実に一歩ずつ改革、改善は進んで行く。

シュリウスを学園に入れるだけのお金だって用意できているのだが、「兄上が行っていないのに自分が行くつもりはありません。今の方が充実しています」と言って学園には通いたがらない。

「貴族とのパイプを作るには丁度いい機会だが」とは言ったものの、「今が忙しいのです。俺の手助けは必要でしょう?」と断固として譲らなかった為、諦めてシュリウスも補佐官のターバンを付けて仕事をしている。

僅か10歳がだ。

兄を支えたくて学園に行く事も、遊ぶことも辞めたのだ。

こんな国にした元愚王――両親やその先祖には恨み言くらいは言いたくなったが、「せめて俺達の子供の世代は学園に通わせたいな」と言うと「兄上は良いお嫁さんを貰わねばですね」と言われ苦笑いが零れた。


学園にも通っていない、国王にはなっているが若干の15歳では、貴族連中も自分の娘を――とは言いにくい。

ましてやトコトン馬鹿にして来ていたのだ。

それを掌返しで言って来ても、どんな罰を受けるか分かったものではないのだろう。


それに、俺としても今は婚約者だ妻だと言っている場合ではなく、国を安定させることに尽力している。

全てが落ち着いてからでも問題なかった。


そんな事を考えていた午後――商業ギルドマスターのデッドリーが自分の持つ兵士を連れてやってきて、シュリウスとサファール宰相、それにテリオットと共に宝物庫へと向かう。

売りに出せば国が安定しただろうに、国王たちは少しの財産でチマチマと金銀財宝を集めて来たのだ。

まるでドラゴンの習性かのように。

王族しか持つ事の許されない鍵を手にドアを開け、中を見ると待っていたのは溢れんばかりの金銀財宝。

金もないのにコツコツ祖先たちが集めた物ばかりだった。



「これは……凄いですな。隠し財産と言う奴ですか」

「第一陣としてこの中から5つの財宝をオークションにかける。これとこちら……あとはこの三つだな。最低価格はどれ位になる?」

「最低価格はこれだと最低金貨80枚からかと……実に素晴らしいものですよ? 本当に売っていいのですか?」

「一つ金貨200枚以上に変わってくれれば御の字だ。今は民を富ませる為には手段を選んではいられない」

「シュノベザール王家は元々ドラゴンの末裔だと言われているので、金がなくとも金銀財宝をため込んだんでしょうね」

「こんな宝物庫があと5つもある……全く、金はもっと違う事に使えばいいものを」



そう言って溜息を吐くと、「後5つも」と驚きを隠せないデッドリーだったが、シュノベザール王家は何かと財宝をため込む習性があるのは確かだった。



「国が富まねばここにある国の財産など価値は無い。後はこの5つをいい感じに釣り上げて売って来てくれ」

「畏まりました」

「それで得た金で苗と種を買い、国をまずは富ませていかねば……明日には頼んでいた人数は揃いそうか?」

「既に通達はしているので来られるかと」

「では後は大臣たちに働いて貰い頑張って貰おう。オークションの金が入るのはオークションが終わった翌日だったな」

「はい、必ず持って参ります」

「是非そうしてくれ。翌日にはネバリ王国から商隊がくるからな。買えるだけの種と苗を買いたいし蚕も買いたい」

「畏まりました」

「後は緑の魔石を買わねばならないから、そっちは足りなければ俺の持っている金を使う」

「緑化の魔道具に使う特別な魔石ですね」

「ああ、サファール宰相、魔石商に連絡をしておいてくれ」

「畏まりました」



こうして宝物庫に鍵をかけ、布に包んだ財宝を数名掛かりで運びながら後は任せ、俺達の取り敢えず出来る事は終わった。

また、テリオットにラシュリオを呼んでくるように頼むと、ラシュリオは直ぐにやってきて「明日から箱庭の漁業と林業を動かす。諸々必要なものは用意しているが、監督にあたれ」と命令し、ラシュリオは深々と頭を下げて部屋を出て行った。



「兄上の仕事はスピード感がありますね」

「時間は有限、しかも出来上がるのに時間がかかるものも多い。後は仮の市場の建設だな」

「干物を売るんでしたね」

「魚屋があればそこと契約するが、生憎この国に魚屋は無い。漁業関連の大臣を作らねばならんな」

「海のある国ならば魚ギルドがあるそうですが……」

「ギルドを呼び寄せるか……デッドリーがまだいるなら直ぐに連絡を、後手になって申し訳ないが、魚ギルドを呼び寄せて欲しいと伝えてくれ」

「畏まりました!」



そういうと物凄い走りでテリオットが走って行き、テリオットの働きのお陰で帰りがけのデッドリーに魚ギルドを呼んで欲しいと言う通達が出来たが、それならば、理由などを記した書簡を俺から書いて魔道具で送ってくれることになった。

魚ギルドが来るまでの間は、その間出来上がった干物は国で売るしかない。

その為の人材確保や場所確保に翻弄されながら――ついにオークションは開催され、金を持っている貴族からたんまりと金を巻き上げ、その金で苗や種を買える事になった。翌日ついにネバリ王国から商隊が訪れ、多くの作物用箱庭師が並ぶ中、【箱庭師大臣】ラシュリオと、【箱庭農業大臣】モザーラがいる中、商談が始まるのである――。




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