第二部 第一章 二仙山~篭山炭鉱(二)
数日後、
紅白金銀の艶やかな飾り物、けたたましく鳴り響く
特に
ただし己五尾のみは、狐姿での参加となった。
その2日後、燕青は一清道人の部屋に呼ばれた。部屋の中には既に、
何でどう決めたやら、聞けば三つ巴の醜い? 争いの末、
「燕青よ、改めて妻ともどもお主には本当に世話になった。礼を言わせてもらう」
「もったいない、頭を上げてください。むしろ切羽詰まって二仙山に送らせてもらっただけなので」
「どうだ、旅の疲れはとれたかな?」
「はい、おかげで久々にゆったりと過ごさせてもらいました」
「では恐縮だが、またこの子らの護衛を頼みたい」
今回の旅の目的地は東へ約百六十里(80キロ)ほど離れた、
簡元にある
宋代、燃料として石炭や、石炭を加工したコークスを使うことが広まり、食や鉱業、陶磁器などさまざな文化が発展した。結果、石炭の採掘が非常に重要な役割をもつようになり、炭鉱が使えなくなるのは各方面で大いに支障を
魔物の正体については、うす暗い坑道で襲われたため、はっきりとはわからないらしい。ただ既に数人の鉱夫の体をバラバラに食いちぎってしまっているという。油断ならぬ相手であるのは間違いない。
「今回は小融と玉林を連れて行ってもらいたい。玉林と紅苑は、お主らが観山寺に行っている間に、近くで2件魔物祓いを経験しておるし、足手まといにはならぬと思う。苦労をかけるがよろしく頼む」
燕青としては覚悟のうえなので、
「ところで、今回からお主らに、例の狐以外に連れて行ってほしい動物がいるのだよ」
「へぇ、なんですかそりゃ? 」
一清道人が声をかけると、室外から一人の道士が、左腕に大きな鳥を乗せたまま入ってきた。
鋭い
「一清さま、この
「そうじゃ。この鷹は『
海東青は、正式には「
海東とは、現在のロシア沿海州周辺を指す地名である。まだ遼国が女真族(後の金)に圧政を強いていた時代、遼の天子達が鷹狩りに使うため愛玩していた。そのため、遼は長年、砂金や真珠など女真族に課した様々な貢ぎ物のひとつとして、この鷹を捕獲し献上するよう命じてきたのである。
のちの金国が、遼国に対して強烈な
「四娘、玉林、二人とも燕青に迷惑がかからぬよう注意しろよ。急ぎ支度にかかれ」
「はいっ! 」
少女道士2人は満面の笑顔で、手を取り合って部屋を出て行った。
海東青の
ところがその後、一清と燕青が
羽音一番、獲物と思いこんだ
とうとう追い詰められた己五尾は、ひょいととんぼ返りで人の姿に
鸞は驚いて、止まり木に戻ったのだが、とたんに漏れ出す己五尾の
美女姿の己五尾も続いて外に出、扉を閉めてから改めて子狐姿に戻り、面目ないと頭を下げる。燕青と一清はほっとひと息ついたのだが、その時改めて、今回の旅について別の困難に気づいてしまった。
今回燕青は、
更にいえば、ここに玉林の
想像するに、少女道士2鏢師1、馬1魔物1鷹1
ふたりはその図を想像してみた。
「ううん、わしが言うのもなんだが、大変な依頼になってしまったな、すまぬ燕青」
「まぁ……なんとかなるでしょう」
と燕青が嘆息したちょうどそのころ。
「
「はっ」
文官風の男、
閻霧が抑揚のない、くぐもった声で伝える。
「今回の相手、まず名は
「はっ」
低頭のまま答えた黒衣の
「いまのところ、燕青とやらの所在は不明だが、
「御意」
「可能であれば生け捕りにして連れてこい。無理であれば殺してもかまわん。よいな」
「心得ました」
4人が頭を下げ、あげてみるとそこに閻霧の姿はなかった。数年仕えてきた黒猴軍の面々にも、閻霧のことはまったくわかっていないのである。
ふう、とため息をつき、
「とりあえず行ってみるか、その
「
曹琢の言葉に3人は頷き、一陣の風のように階段を駆け上がっていった。
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