第40話 ブロンド美人の女の子
蜂蜜色した綺麗な髪の女の子が芝生の上を駆けていき、ボクはそれを追いかける、
「わたしに追いついてごらんなさい、勇者様~」
「言ったな~ヒルデ、ボクが本気になったら凄いんだぞー」
ちょっと生意気だけど、本当はボクと仲良しなヒルデ、数日毎に遊びに来たり、遊びに行ったりしている幼馴染みさ、
キラキラ光る金髪も素敵だけど、顔もとっても美人さん庶子のユーリアなんて比べ物にならないよ、
「追いついたぞ」
ボクの手がヒルデの肩を掴むと勢い余ってそのままコロコロと2人で転がっていく、
「ゴメン、ヒルダ痛くない?」
「平気ですよ」
いつもよりずっと近い距離でヒルデと向き合うとホンワカと甘い香りがしてくる、思わず抱きしめてしまったけど、怒らないかな?
「もぉ~、レオ君いつまで抱っこしているの?」
「嫌なの?」
「う、うん、レオ君なら嫌じゃないけど、見つかると怒られるよ、きっと」
「それじゃあさぁ、怒られるまでこうしていようよ」
「レオ君のエッチ」
△
抱っこしながら色々な事をお話ししたよ、ヒルデもボクと一緒で普段は家庭教師の先生に勉強を習い、絵とか音楽の勉強もしているんだって、
「ヒルデは絵も描いているんだね、すごいやボクは魔道の勉強ばかりだよ」
「わたしは他に出来る事がないから、あっその代わり子供部屋の子達とも一緒に絵を描いたりすんだよ」
「ふ~ん」
ボクは自慢げにオルガの話をする、ボクは子供部屋に行けば王様だって事をヒルデに教えておかないとね、
昨日はオルガに逆立ちをさせたらパンツがまる見えになった話をしたよ、ヒルデは感心するかと思ったら悲しそうな顔になった、
「レオ君、離して」
「えっ、もう帰るの?」
「違うの、そんなレオ君は嫌だよ」
どうしてヒルデの機嫌が悪くなったのかが分からない、なんで? ボクが強い王様だと思ってくれるんじゃないの。
いつもニコニコ笑っているヒルデが真面目な顔になってボクに言う。
「レオ君、オルガさんは弱い人なのよね」
「うん、まぁそうかな?」
「本当に強い人は弱い人をイジメたりしないわ、弱い人や困っている人を助けるのが本当に強い人だよ」
△△
深夜の時間まで執務に忙しいアルトナー奴隷商会の会頭ルードルフ、仕事熱心、商売の鬼だが後継ぎが心配で仕方の無い父親の顔も持っている。
「旦那様、コーヒーをお持ちいたしました」
「おお、オスヴァルト、ちょうど良い、そなたも一緒に飲もう」
「それではご相伴にあずからせてもらいます」
執事がカップに手の平をかざすと、淡い光がカップに降り注ぐ、まずは洗浄魔法でカップを綺麗にする、
綺麗にしたカップを両手で包む様な動作、これは加温魔法、温かい物の器はあらかじめ温めるのは基本。
挽いたコーヒー豆をドリッパーに入れると、部屋中に心地良い香りが満ちる、
握った両手をポットの上で重ねる、右手からは水が出て、それを左手で温める、まずは豆を“広げる”
新人メイドならば砂時計で時間を計るのだが、ベテラン執事にそんな無粋な物は必要無い、絶妙なタイミングを見計らいお湯を丁寧に流し込むと褐色の液体が白い湯気をあげる。
「オスヴァルト、そなたの生活魔法はもはや芸術の域だな」
「旦那さまからその様な言葉を頂けるとは、歳を重ねたかいがあると言う物でございますよ」
小ぶりなカップに注がれた濃い目のコーヒーを数回口にした2人、
「それでレオポルトの様子はどうだ?」
「魔道の術式はかなりの進み具合です、10歳とは思えない聡明さでございますね」
「まぁ、知識があるのは良い事だな」
不完全燃焼な父ルードルフ、
「それで子供部屋はどうなんだ?」
「お付きのメイドの話しによると、最近は庶子達への接し方に変化が出て来たそうです」
「ほう、それは面白いな」
「以前は傍若無人に振舞っておられましたが、今ではなりをひそめ、年長組とは一緒に勉学に励んでいるそうでございます」
「それは、素直に喜べんな」
「旦那様、良い変化ではありませんか?」
「普通ならばな、だがレオポルトは奴隷商会の跡取りだ、今のうちから人を物として扱う練習をさせておく必要がある、
それに庶子達もいずれは売られる運命だ、これから先の理不尽に耐えるには良い機会ではないか?」
魔法が幅を効かせるこの世界、魔法を使いこなす魔力があるのは王族や貴族達“尊き青い血”彼らは仲間内で結婚する事により、魔法の血が薄まる事を防いでいる。
奴隷商会会頭のルードルフ、元は貴族の出なのでそれなりの魔力を持っている、そんな彼が平民の娘を孕ませれば、魔力を持った子が産まれる可能性が高い、
もちろん母が平民では使える魔法は生活魔法程度だが、奴隷商会の商品として扱うには充分だ。
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