第21話 どうやら、ゲニー率いるパーティーが解散したらしいよ?

 お見舞いにダンク、ナルが来ると、テラは少しだけ気まずそうな様子だった。



「しかし、まあ、よく生きてたね。あの時は死んだと思った」


「俺もだぜ、あんちゃん!!」


「心配かけたな」



 ダンクはとにかく、ナルまで心配してくれるとは、少しは距離が縮まったってことかな。


 ちょっぴり嬉しかった俺だが、テラの様子の変化が気になった。



「テラ、どうした?」


「え、あ、なんでもない」



 いや、どう見てもなんでもないわけがないだろ。



「しかし、まさか左腕まで治っているとはな。さすが六つ星冒険者のテラちゃんだ!がははははははっ!!」


「え、この腕、テラが治してくれたのか?」


「あ…………うん」


「歯切れが悪いな」


「そ、そうだよ…………まあ、魔法は仕組みさえ理解すれば、いろいろ出来るから」



 やっぱり、テラの様子が変だ。



「なぁ、ダンク。もしかして、お前たちの間になんかあったのか?」


「うん?ああ、それは…………」


「レインが気にすることじゃないし、特に何もなかった。ただ、彼女が勝手に気まずくしているだけ」


「俺が眠ってる間に何があったんだよ」



 ナルの言葉から、どう見ても何かあっただろと思った俺は、テラへと目線を送ると、プイっとそらされた。


 これは後で問いたださないとな。



「ダンク、そろそろ行くよ。お見舞いも済んだんだし」


「おいおい、辛辣だな、ナルちゃん。共に修羅場をくぐった中だっていうのに」


「無駄な時間を使いたくないの」


「とか言って、1日に2回もお見舞いに来てるくせに」


「なぁ、おい、それは言わない約束!!」



 相変わらず、仲のいい二人を見て、笑みがこぼれる。



「な、なに笑ってるの?」


「いや、仲がいいなと思ってな。ありがとう、お見舞いに来てくれて…………いい冒険だった」


「私のほうこそ、いい経験になった」


「俺もだぜ!!」



 俺はきっとこの冒険を、ダンクとナルのことを忘れないだろう。

 できれば、パーティーに誘いたいが、諦めることにした。



「それじゃあ、またどこかで」


「じゃあな、あんちゃん!」



 お見舞いに来てくれた二人が部屋から出ていった。



「テラ、噓をつかずに遺跡内で何があったのか、すべて話してほしい」


「…………わかった」



 俺はテラから包み隠さず、すべてを教えてもらった。



「それは本当なのか?」


「うん」



 テラが噓を言うはずがない。

 つまり、俺は一度死んでいて、漆黒の竜が消えると同時に生き返った。左腕もその時、元通りになった。


 いや、どうなってるんだよ。


 どう考えたって普通じゃないし、絶対におかしい。そもそも死人が生き返ることってあるのか?…………わからん。


 正直、半分信じられない話に頭が混乱する。


 その結果、俺は。



「まあ、気にしなくていいでしょ」



 考えることをやめた。

 だってわからない以上、調べてもどうせわからないし、俺はいま生きている。


 それだけでいいじゃないか。左腕も治り、こうして生還した。特にこれと言って体調が悪いということもないし、違和感があるとすれば力入れにくいぐらいだ。



「吞気だね」


「気にしすぎてもしょうがないからな。ありがとう、正直に話してくれて。でもこの話は俺たちだけの秘密な。話したらいろいろ面倒だから」


「わかった」


「それはそうと、俺って何日ぐらい眠ってたんだ?」


「5日間だよ」


「マジか…………」



 5日間か、結構、寝たな。

 しばらくは体を本調子にするために、運動とかをするつもりだが、これだとお金が減り続けるばかりだ。


 報酬金もどうせまだ出ないだろうし、少し考えないとな。



「お金なら心配いらない。レインが眠ってる間、かなりの数の依頼をこなしたから」


「わぁ、素敵」



 テラが男前にちょっと見えてくるわ。



「だから、しばらく体を休めてて」


「そ、そっか」



 これってあれか、兄さんから聞いたことがある。一人の男が何もせず、女のほうが働いて稼ぐ。このことをヒモ男と。


 まさか、俺は今、ヒモ男状態なのでは?



「それじゃあ、私もそろそろ行くね」


「あ、ああ…………」



 もう行っちゃうのか。まあ、長居してもしょうがないからな。



「そうだ。レインに一つ言っておかないと。私たちが竜を倒したあとなんだけど、その後、遺跡が崩壊したの」


「遺跡が崩壊?」


「うん」



 遺跡が崩壊するなんて、聞いたことがないけど、つまり、今は外はかなり騒がしい状況ってことか。


 なにせネスタ遺跡はこの街の観光名所だ。領主もかなり慌てているだろう。



「それだけ伝えておこうと思って、それじゃあ、また明日」



 そう言ってテラも部屋を後にしたのだった。



□■□



 あれから三日が過ぎ、無事に完治した俺は今、ルリカ、シェルミーと一緒にご飯を食べていた。



「それで何の用だよ」


「本当に生きて帰ってきたんだ」


「奇跡っす!奇跡っすよ!」


「あ、ああ」



 どうして、一緒にご飯を食べているかというと、泊まっていた宿から出た時、偶然出会い、流れるまま、ご飯を食べることになった。


 まあ、奢ってくれるらしいから、別にいいのだが、正直、少し気まずい。


 いろいろあったし。



「…………別に気にする必要はないぞ。ゲニーの判断は正しかったし」



 その言葉に二人は目を点にした。



「な、なんだよ」


「いや、やっぱり、レインはやさしいな」


「…………優しくなんてないさ。それにこうして奢ってくれたしな」



 別にゲニーのことを恨んでなんていない。ただ一つだけ気になったことがあるだけで。



「それでだ、レイン。実は君を誘ったのは罪滅ぼしと、もう一つ知らせたいことがあって誘ったんだ」


「知らせたいこと?」


「実は、パーティー解散したんっすよ!!」


「…………はぁ?」



 あまりにもサラッと言うルリカに言葉が詰まったのだった。

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