4月21日 【♥】楽しいコト


ぼんやりとした鏡の前に立つ。


慣れた手つきで粘膜にアイラインを引いて、

睫毛をビューラーで上げてからマスカラを塗る。

リップメンスターが唇を輝かせる。

9センチヒールで踵を鳴らしながら歩く。


六本木ヒルズから徒歩×分、建物の1階にそれはある。

分厚い扉を開けると、爆音のEDMに呑まれた。


浮かれた喧噪に溺れそうになって

おもわず頬が緩む。


タバコの煙が

ミラーボールの反射光を妖しく溶かして

私の身体を濡らす。


ピアスをつけた、おへそが見える服と

強調した胸元、

華やかに巻いたロングヘアがすぐにサルどもを引きつけた。


男友達には誘蛾灯みたいだと苦い顔をされたけど、

これが私にとっての武装なの。


ホスト御用達ブランドのベルトを着けた男が、

間抜け面を晒して私に近づいて来た。


「可愛いね」


そして、許可無く私の腰に手を回した。


「……」


男の襟を睨むと、首筋からホワイトリリーの薫りがした。



……ふっ。


まぁ、いいか。


そのかわり、楽しませなさいよ?

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