燃え上がる館

長距離馬車の御者であるフランクリンは王都の外れにある屋敷から火の手が上がっているのを見た。

直ぐにフランクリンは消防団に通報し、 消防団は鎮火に当たった。

とは言え既に屋敷は炎に包まれ、 聞こえる叫び声もか掠れ気味だった。

若い消防団員が無茶をして火の中に入り、 自身も火の手に巻かれながらも

やっと救出したのは既に炭化したいる人間だった。


「装飾からして良い身分の人だったんだろうな」

「可哀想に・・・見分けが全然つかないぞ・・・」

「酷いな、 もう炭じゃないか」

「・・・・・まだ生きてるのか?」


その一言に全員の背筋が凍った。

炭化している人間から声が上がったのだ。


「あ、 いや・・・えと・・・」

「・・・・・」


この男は数時間後に命を落とすまで意識が有ったという。






王城の一室ではルイ3世とロウとチェンが居た。


「調査の結果、 屋敷内には大量の揮発油ガソリンが大量に撒かれており

一気に点火されて屋敷全体が燃えたそうです

屋敷内の窓ガラスは全て頑強な枠組みと割れない様に鉄線が入っており

溶接迄してあります、 窓からの脱出は不可能

更にドアも重くて頑丈な物に入れ替えてあり開けるのには時間がかかります」


チェンが報告書を読み上げる。


「となると、 最初から閉じ込めて殺すつもりだったのか」


ロウが重苦しい顔で呟いた。


「その様ですね、 被害者達はカボン子爵の家臣団全員です」

「黒焦げなのに何故分かる?」

「歯形を確認しました」

「なるほど・・・」


ルイ3世は溜息を吐いた。


「カボンは?」

「救出され数時間は生きていた様ですが既に・・・」

「・・・・・これは事故か? 事件か?」

「恐らくは意図的かと、 不自然な量の揮発油ガソリン

不自然な改築、 まず間違い無く殺すつもりだったのでしょう」

「無理心中するつもりだったのか? それとも何者かにハメられた?」

「カボン子爵が揮発油ガソリンを買い漁っていたのは確かですし

屋敷の改築も子爵の指示です、 工務店から確認取れています」

「屋敷は? カボン子爵のタウンハウスとは別じゃないか」

「子爵の所有物件で間違い無いです」

「?????」


頭を抱えるルイ3世。


「まぁしかし「父上!!」


王太子のマーカスが部屋に乱入して来た。


「マーカスか? 何だ? 何用だ? 今忙しいのだが?」

「リチャードが居ません!!」

「リチャード? 誰だ?」

「私の執事です!!」

「首にした」

「何故!?」

「お前は廃嫡にして親戚筋から新しい王太子を選ぶ事にした

そんなお前に何時までも執事を付けるのは無駄だからな」

「なっ」

「おい、 部屋に押し込んで置け」

「父上!! 父上ッー!!」


マーカスは護衛に連れられて部屋に戻された。


「全く・・・」

「マーカス殿下は如何なさるつもりで?」

「良い使い道が思いつかん、 見てくれは良いから何処かの国に婿に出すか」

「それが良いでしょう」

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