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 キョウカに出逢ったのは、こんな感じの路地裏だった。そう、同じように派手にやられて全身ズタズタで。真っ赤に染まった俺を、何も言わず担いで運んで、介抱して。出来のわるいお粥のなりかけみたいな熱いやつを口移しで。


 さすがになんかこうだめだったので、お粥は自分で作ったし、彼女のぶんも作った。気に入ったらしく、それから料理はこちらの領分になった。


 彼女が、全ての原因でもあった。

 静かでざわつきのない水平線のような心は、人ではないものを呼び寄せる。なんというか、人ではない何か。機械みたいな。そういう、心が欲しいものに、狙われ続ける。


 自分も、その心の持ち主だった。

 全てを水平線の彼方に追いやって、心を透明にできる。

 そして、それを使って人ではないものを殺し続けてきた。


 たまたま彼女が近くにいたから、殺す数が2倍になってしにかけた。それだけで、まぁ、心が動くこともなく。このまま消滅か、と思っただけ。それが彼女に担がれて、介抱されて、お粥を作って、そしてそのまま今日まで。


 せめて彼女は、人ではないものに狙われないでほしいと思った。それで、多少無理をして任務をこなして。彼女の心と引き換えに、こうやって今、路地裏に転がっている。次に人ではないものが来たら。消滅する。


 消滅したかった。理由はない。最初からそう思っていて、それを求め続けているだけ。人ではないものに食われれば、消える。存在そのものが消え去って、きれいさっぱり、街のなかに消滅していく。


 こんな路地裏でも。心は静か。うつぶせで倒れているので、星が見えない。夜だと思うんだけど。暗いし。消えていくのか。これで終わりか。彼女のことを、考える。消えるのだろうか、彼女の中からも。彼女のベッドの寝心地を、思い出す。ちょっとマットレスが固い。もう少しやわらかいほうが好みだった。あと数年使えば。俺好みのやわらかさのベッドに。

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