第16話:夜には夜の ※閑話



 土曜日の夜。


 一家団らん、母ふたり子ふたりの四人で仲良く夕食ゆうげも終えてくつろぎの、ひと時。


 雪人が他の女性陣三名へ問いかける。


「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、みんな夜、寝る時ってブラ着けてる?」


「何? 何? 雪人ちゃん、いきなり何?」


 美里の言う通り、男子の雪人からの問いかけとしては、あまりにも不自然。


 だが、しかし。


「いや、ちょっと……夜用のブラについて調べてみたんだよね。だから、みんな知ってるかなーって」


「わたしは何も着けてないわよ」


 との美里に対し、娘のアカネが。


「お母さんは着ける必要、無いもんねー。わたしは普通の着けてるよー」


 と、返せば。


「むっきーっ。どーせわたしは……」


 美里にダメージ。


「私はぁ、はぁ、ナイトブラ、着けてるわよぉ」


 雪枝はいつものごとく、のっそりと、マイペースで。


「あ、あの胴当てみたいなのって、ナイトブラって言うんだ……」


 恋人の発言に思い至るものがある、美里。


「さすが母さん……と言うか、母さんには必要だよね……」


 母の胸元を見、雪人が納得。


「ナイトブラって、普通のブラとどう違うの?」


 アカネの素朴な疑問。


「えっとね……」


 雪人の解説に、よると。


 通常、日中に着けるブラジャーは『立っている』または『座っている』時を想定して下方向へかかる重力を支えるように形作られている。


 しかし、寝る時に身体を『横』にした場合、その重力のかかる方向が、変わる。仰向けの場合は上下左右に分散されるし、横向きになった場合は身体に対して左右への向きに変わる。


「あぁ……場合によってはぁ、引っ張られる、わねぇ……」


 雪枝の発言が割って入る。


 皆、雪枝が言った状態の姿勢を思い浮かべる。


 気付いた雪人が真っ赤になるが、アカネは。


「そうだね。は真下にぶら下がる感じになるよねー」


 ひょうひょうと、評価するが、美里は。


「いや、それ、寝てないし」


 反論。


 いずれにせよ


 支えなければならない方向が変わるため、それをカバーできる仕組みが必要に、なる、と。


「そんな訳で、ナイトブラは全方位の荷重を受けるようになってるの」


 詳しくはこちらをご覧ください、と。


 雪人が家族チャットにネット情報のURLを送信。


 ぴこんぴこんぴこん。


 女性陣の携帯端末に、メッセージ着信音。


 そして、雪人の追加の発言。


「母さんは自分のを持ってるみたいだから……アカネと美里ママにはボクのを貸してあげるから、ちょっと試してみなよ」


 一瞬、固まる女性陣三名。


 固まった後、復活して。


「なんで雪人くんが持ってるのよ!」

「なんで雪人ちゃんが持ってるのよ!」

「あらあら、あらあらぁ~」



「いや、まぁ……ちょっと試してみたかったの……」



 ある意味、女性陣より女子力が上がりつつある、雪人。



 まだまだ、女子力が、上がり……。



 ……つづける?





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