チュートリアル

カテロリアの外れの方にある住宅エリアに存在する普通の家で有希は初めての朝を迎えた。


この世界に来てから一番目覚めが良くて、なんなら元の世界を含めても上位レベルで体が軽い。


とりあえずほとんど何も置いてない部屋を抜け、リビングに足を運ぶと、既に三人が集まっていた。


テーブルの上には朝食らしき料理が既に並べられ、有希を待っていたようだった。


結構早く起きれた自信があったけどみんながそれより早起きでちょっと情けなくなる。


「おっはよーう有希ちゃん! ほらこっちこっち!」


朝でも相変わらず元気なマナは挨拶をしながら隣の席に有希を座らせ、みんなで朝食を食べ始めた。


昨日の夕飯もそうだったけど、基本料理はイキシアちゃんが作っているらしく、盛り付けが綺麗で素敵だ。


マナも料理には自信があるそうで今度一緒に何か作ろうなんてイキシアと話しているのを作れない組の有希とフェルミは食べながら聞き流した。


「そういえば私達ってこれからどうすればいいのかな?」


食べている最中にふとマナが呟いた。


「いきなりこの世界に来て特にこれをやる!って目標も無いわけじゃん? ねねフェルミさんってこの世界で何をしてるんです?」


「私? 私はこの世界のことをもっと知るためにいろいろな所に旅にいったりが主かしらね。 一言で言ってしまえば冒険者みたいな感じね。 この世界をもっと知りたい、あらゆる街に行ってみたい、元の世界に帰る方法を知りたいとか人それぞれ理由があるけど実際カテロリアに住んでるプレイヤーはこの生き方をしている人が多いわね」


「カテロリアは大陸の中心に位置してますし、だいたいなんでもありますからプレイヤーネイティブ問わずに冒険者、行商人など色んな人がいるんですよ」


「冒険者……ですか……」


フェルミとイキシアの説明を聞いて有希が小さく呟く。


「冒険者かあ……! なんだか楽しそうだなあ……!」


相変わらずそう呟くマナの目はキラキラと輝いている。


「楽しい分危険も伴うけどね。 街の外には色んな魔物とかもいるわけだしね」


それを聞いて有希はあの黒い魔物を思い出していた。


一番最初にであった化け物による攻撃で容赦なく身体中を傷付けられたあの記憶が。


あの時はマナが何とか助けてくれたけど、これからあんなことが起きたら今度は怖がらずに動けるのだろうか。


それならわざわざそんなことをせずにこの街で――


――いや。


「……私はやってみたいです。 冒険者」


その言葉を聞いて有希以外の三人は驚いた表情を見せた。


「……もっとこの世界を知りたいんです。 この世界をより深くまで知って、そして……」


そしてお姉ちゃんとまた――!


「そういうことなら私もやる! 絶対楽しいじゃん! それに有希ちゃんだけだとちょっち心配だからね〜。 私が守ってあげるのだ!」


元気に言うマナもそれを見ているフェルミとイキシアもさっきの驚きの表情が消え、笑顔で言った。


「ははっ、いいんじゃない二人とも。 別に一度決めたらずっとやり続けないと行けない訳でもないしね」


「そういうことなら二人のあれも調べないとですね」


「あれ……? あれってなんですか?」


「もちろん!技能タレントですよ!」





「なるほどね、それでまた僕に会いに来たって訳ね。 まあわざわざ調べるより僕に聞いた方が楽なのはわかるけど、一応僕は情報屋なんだよ? それなりの対価を頂くことにはなるよ」


「えー!そこを何とかならないですかー? フェルミさんに聞いた話だと技能鑑定ってこの街じゃ出来なくて遠い街でしか出来ないらしいじゃないですか」


「うんまあそもそもとしてこの街に自分の技能も知らないようなプレイヤーはまず存在していないからね。 調べる機材がないのさ。 基本的にプレイヤーの全ては北に位置するアイリルって場所で目覚めるからね。 イレギュラーな目覚め方をした君たちは一度行って調べる他はないよ」


「えーでもそこを何とか!」


マナが大きく手を合わせて懇願するとまるでそれを待っていたかのようにホロウはニヤリと笑った。


「それなら一度僕の頼みを聞いてもらおうか。 なに、そこまで難しくない君たちの技能のテストを含めた初陣チュートリアルさ」

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