エルフの園

18.遭遇




 ☆   ☆   ☆




「真っ暗だ」


「ちょっと待ってください。灯りを……」


ヤカンの表面に魔力がゆきわたり、全体が輝き始めた。


コンクリートのような壁に囲まれた雑風景な部屋がひろがっている。


祐太は眉をひそめた。


「へんなニオイしない?」


刺激臭というほどではないけれど、鼻の奥がスースーする。


「あれは……なんでしょうか?」


ルシルがヤカンランプを部屋の隅に近づけると、壁に亀裂があり、そこからツルのようなものがはい出している。


「植物……?」


ウヒャーと悲鳴を上げたのはトレグラスだった。


「そ、それにさわっちゃだめだよー!」


教官のリアクションに驚く祐太とルシル。


さわるなって、いったいどういうこと──祐太が理由を聞こうとした瞬間だった。


突然、地鳴りのような音が響いた。


「今のは何?」


「部屋の外からです!」


トレグラスはすでに部屋を飛び出していた。二人も後を追う。


暗い通路の奥で、たてつづけに青い光が明滅した。


(……魔法?)


祐太は暗闇に目をこらした。閃光がはしると同時に、通路の壁に細長い影がうつった。


「な、なんだあれ……」


ザワザワ、ウネウネとうごめく触手(?)の群れ。そして、追われる人影。


「冒険者かもしれません。こっちへ来ます」


ルシルは光るヤカンを置いて、杖を取り出した。それを見て祐太も杖を構える。


「二人はそこにいてー!」


言うが早いが、単騎、トレグラスが突っ込んだ。


逃げてきた人物とすれ違いざま、


「他に仲間はー?」


「あ、あたしだけだよっ」


「オッケー!」


トレグラスの小さな体が一瞬、ふくらんだように見えた。たちまち極寒の冷気を噴いて、追っ手のモンスターを周囲の壁ごと氷漬けにした。

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