15.悪魔の魔法

「そういえば、ユウタよ。仕事はどうだ? 続けられそうか?」


「はい、昨日は現場に入って仕事しました。初ダンジョンです!」


「ふむ……」


「スライムが多くてたいへんでしたけど、なんとか無事にこなせたと思います。ケガをした冒険者がいたので、治癒魔法が役に立ちました。師匠のおかげです!」


「そうか……。教えたことが役立ったのなら何よりだ。それにしても、カルメランか……。働いている連中は、やはりのやつらが多いのではないか?」


祐太は首をひねった。


「ええと……どうでしょう? ぼくには、まだよく分かりません」


ゴエティア──師匠はこの言葉をよく使う。『悪魔の魔法』というような意味らしい。世間一般では新魔法と呼ばれている。


なぜ悪魔なのか、祐太にはよく分からない。


とにかくアマリアはなぜか新魔法をひどく嫌っている。そして、自分の魔法こそ──『正統なる魔法』と称して、それを誇りにしている。


正直、祐太には、両者の見分けがつかない。ただ、アマリアの弟子である以上、祐太もまたテウルギアであることは間違いなかった。


もっとも、教官やジベルト隊長は旧魔法と呼んでいるけれど……。(師匠の前でその言葉を口にすれば「ふるくないっ!」と怒られるので使えない)


そういえば、


(ルシルはどっちだろう?)


祐太はふと疑問が浮かんだ。


あの青い発光球体は? ひょっとしたらあれが新魔法──ゴエティアなのだろうか?


「堕落したゴエティアどもにはくれぐれも気をつけろよ。やつらは虫ケラも同然だ。不当なあつかいを受けるようなら、すぐにわたしに言うがいい。十倍痛い目にあわせてやる」


「ありがとうございます。いまのところはまだ何も」


「ふむ。ま、上司の指示には従わねばなるまい。仕事だからな。だが、やつらを決して信用しないことだ」


「はぃ……」


師匠はすこし神経質過ぎるんじゃないかという気もする。


「ところで、のんびりしていていいのか?」


祐太は時間のことを思い出して、飛び上がった。


「しまった! もう行かないと。──それじゃ、行ってきます」


「ああ、がんばれよ」

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