12.脱出

そしてまた数十分後。


二人は全速力で屋敷の外へ駆け出していた。


背後で轟音がとどろく。屋敷の窓を突きやぶって、しもべスライムの大群があふれ出てきた。


「ひーっ!?」


「いったい、何がどうなってんの!?」


「知りません!!」


二人はまっしぐらに庭園に向かっている。手入れをされずに荒れ放題の植栽が、迷路のように行く手をふさぐ。


並木の上から、しもべスライムたちがバラバラと飛びかかってきた。


ルシルがすかさず杖をかまえた。青い球体の攻撃魔法だ。


祐太も負けじと魔力ボールをはなつ。


射出は祐太が速い。例のごとくコントロールが悪いので当たらない。けれども敵の数が多いので、標的をはずれても他の個体に命中する。


とうとつに強襲が止まった。潮が引くようにしもべスライムたちが退いてゆく。


「あれ? あきらめた……かな?」


「ユータ、後ろ!」


ハッとして後ろを見ると、花壇の向こうに人型がいた。


二人が杖でねらいを定めるより先に、耳障りな音がして、空気がふるえた。花壇の乾いた土が舞い上がる。


突風につつまれて、祐太の靴裏から地面の感触が消えた。


気づいた時には植栽を飛び越えて、数メートルも飛ばされていた。


「い、たた……」


地面に思い切り頭をぶつけた。


(なんてこった。人型が魔法を使うなんて聞いてない……)


フラフラの状態でようやく立ち上がると、目の前に水くみ場があった。その先は袋小路で行き止まりだ。


水くみ場の湧水口の積み石に、見覚えのある印が彫られている。


「あ……」


腕輪と同じルーン


「ゲートがあった! ルシル、早く──」


祐太が振り向くと、足もとをすくわれてすっ転ぶルシルが見えた。色違いのしもべスライムがローブのすそにからまっている。


(毒っ!)


祐太は杖をかまえるも、当たるとは思えないし、当たったところでルシルがまきぞえになる。思わず駆けだしたがきっと間に合わない。


ピンチを救ったのは救いの手ならぬ、血色のいい長い舌だった。ネバネバした舌先が一瞬で毒スライムをからめとった。


トレリスのアーチの上で、グルグルとうごめく大きな目玉。


オオカメレオンの大きな口の中に毒スライムがすっぽり入ったかと思うと、下アゴとノドの皮膚がモコモコうごいた。


「……あ、あんなの食べてお腹こわしませんか?」


「今はそんなことより脱出しないと!」


祐太はルシルを引っぱって水くみ場に飛び込んだ。


本部カルメランへ!」


印が光る。


ガコッ! と水くみ場の底がぬけて二人は開いた穴に落下した。




「……ーーーーぁぁぁあぁぁあぁああああ!!!」


ウォータースライダーのごとくトンネルを滑り落ちて、体当たりしたと思ったら扉が開いた。


そのままゴロゴロと床を転がって、二人して壁にぶつかった。


「──ぎゃふん!」


「──あ痛!」


本部の物置部屋に戻って来た。

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