最初のダンジョン

1.豚箱に乗って



 ☆   ☆   ☆




今日は『豚箱』だった。


『豚箱』は音もなく近づいてきて、祐太ゆうたの目の前で停車した。


草むらになかば埋もれた石を足がかりにして、祐太は『豚箱』に乗り込んだ。


この一週間、乗客はいつも祐太だけだった。誰かと乗り合わせたことは一度もない。


でも、今日は先客が一人いた。一番奥の席に──目が合った。祐太はあわてて視線をそらした。


(女の子?)


顔はよく見えなかったけれど、そんな気がした。


(新しい入隊者かな?)


広くもない『豚箱』の車内で、祐太は入り口に近い席に座った。


小半刻もすれば海が見えてくる。にび色の浜辺に、ジンジャーエールみたいな波がうちよせている。


遠い山すそが海にせまり、きりたった崖となっている。崖の端には巨大な岩がそびえている。


奇妙な光景だった。


岩の上には、細長い塔が何本も突き出していて、そのさまを見るたびに、まるでロウソクを立てた誕生日のケーキみたいだと祐太は思った。


崖下で波がはじけている。


『豚箱』は岩に近づいた。


岩の中腹にはたくさんの穴があいている。


その穴のひとつに『豚箱』は吸いこまれるように入っていった。

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