敵国の王子様と結婚したくなくて別の世界に行くことにしました。 ところで到着したのは現代世界? いや、私の立場ではこれが異世界じゃない?

@Song1

0. プロローグ

私はマリア。 長く伸びた川筋に沿って草原と森が調和した巨大なメルディア大陸の辺境にあるルチアという王国の王女だ。 我が王国は大陸全体を牛耳るほど強い国ではなかったが、豊かな大地の上に誠実さと勤勉さを重視する国家観を基に、他国が羨ましくない繁栄を成し遂げた。


村の路地には笑い声が途絶えたことがなく、川の水が乾いて地面が荒廃しない限り、この幸せは永遠だと信じた。


しかし、そのような希望に満ちた期待は、予期せぬ理由で一瞬にして崩れてしまった。 実感がわかないほど本当にあっという間だった。 世界を手に入れることを夢見るバルシア帝国が起こした戦争の炎が、メルディア大陸全体を飲み込み、まるで当たり前のようにルチアに野望の歯を露わにした。


バルシアが立てた刃が私たちに向けられた時、私たちは生まれ育った土地を守るという一念で勇敢に対抗したが、絶対的な力の差を単純な意志だけで克服することが難しいということを実感せざるを得なかった。 一日が過ぎ、二日が過ぎ、一週間が過ぎ、一ヶ月が過ぎ、一年が過ぎ、状況はますます悪化するだけだった。 死を冒す勇気と不利な戦いに耐える忍耐が共に消える苦しい時間が続くだけだった。


続く戦争の中で、皆が精神的にも肉体的にも疲れ、共に衰弱する王国を見守るしかなかった。 すべての部分でルチアに不利に流れた。 最初からバルシアの攻撃を防ぐことだけに汲々としていたため、時間が経つほど格差が広がるのは仕方なかったし、甚だしくは苦しくて過酷な日々を送りながら自分の運命に対する懐疑感とお互いに対する不信がルチア内部を蝕んだ。


戦争の間、心配に苦しみ、心身に病気をもたらした国王ルーブル3世は、日々衰弱していった。 どうしても弱い顔を出したくはなかったが、か細い声を聞いてやつれる顔を見ると、感情が胸の片隅に染みて涙が自然に出そうだった。


たとえ死ぬことがあっても帝国に対抗しなければならないという主張と王国の安定と平和のために降伏しなければならないという主張が激しく対立した。


そんな私たちに帝国が和解の条件として掲げたのはバルシアの王子とルチアの王女の結婚。


お父さんが言った選択の瞬間というのは、こんな意味だったのだろうか? ルチア王国の未来を担う人として深い悩みに陥らざるを得なかった。 果たして何が本当にルチアのための選択なのだろうか? 本当に帝国の屈辱的な結婚提案を受け入れることで平和を得ることができるだろうか? それとも最後まで国を守るためにどんなに大変でも諦めずに帝国に立ち向かうべきか?


国を守るために犠牲を払いながら苦しみの中で過ごす日々と屈辱的な降伏をして国を失った悲しみの中で過ごす日々。


どちらがいいか秤にかけなければならない現実がただ暗鬱に感じられた。


単純に感情にとらわれて下した決定は明らかに後悔を呼び起こすとよく知っていたが、合理的な答えが何なのか悩めば悩むほどむしろより感情的に変わっていくだけだった。 胸の中でバルシア帝国に対する反感だけが高まった。 国と家族の安寧を脅かす帝国が身に染みるほど憎まれるだけだった。


まさにその日もいつものように恨みが混じった悩みにとらわれて眠れなかった。


円月の光だけが世界を照らす深い夜。 枕に顔をうずめたまま寝返りを打つだけだった。


ルーブル3世の呼びかけに応えて、私は彼の寝室に向かった。


理由さえ分からない緊張感に捕らわれて言葉がまともに出なかったが、努めて平然としたふりをしながらドアを慎重に開けた。


「いらっしゃいますか?」


「そう、入ってこい。」


胸の中にこみ上げてくる鬱憤は抑えたまま、ぼんやりとした声に誘われてベッドに向かった。 明かりが消えた部屋の中に窓からかすかな月明かりが漏れていた。


「お呼びですか?」


「そう、突然だったはずなのに、こんなに来てくれて本当にありがとう。」


私はすぐ隣に腰掛けた。


彼がゆっくりと起き上がろうとしているのを見て,びっくりして手を伸ばした。


「無理しなくても。」


「いや、せっかくお客さんを招待しておいて、こうやって横になってばかりいるのも礼儀ではない。」


彼は私の手を振り払い,ベッドの棚にある電灯をつけた。


私たち二人の間に明るい光が漂っていた。


こんなに近くで会うのは久しぶりだった。 改めて変わった姿が実感できた。


憂うつな姿をわざと表に出さないようにしているのが感じられ、さらに胸が痛くなった。


こんなに近くで会うのは久しぶりだった。 改めて変わった姿が実感できた。


憂うつな姿をわざと表に出さないようにしているのが感じられ、さらに胸が痛くなった。


彼もやはり何かに気づいたのか、わざと首を窓の外に向けた。


「月が美しいね。」


彼の一言に何の意味が込められているのか、そして何の返事をすればいいのか悩んだ末、ただにっこり笑うだけだった。


「本当です。 月が美しいです。」


本当に薄情に感じられるほど美しかった。


彼もやはりかすかな笑みを浮かべた。


私の答えが正解だったのか、しばらく温かい雰囲気が漂った。


「こんなに二人きりで会話をするのはかなり久しぶりだよね? バルシアの攻撃が始まってからは覚えていない。」


「そのようです。」


「まことに。」彼は静かに答えながらうなずいた。


再び静寂が流れた。


今度は私が先に勇気を出して話を切り出した。


「お体は大丈夫ですか?」


彼は大きなため息をついて空中を眺めた。


「そう、むしろ楽になるんだ。 もう旅立つ時が近づいているということだろう。」


「そんなお話は。」


「去る前に君の声を一度聞いてみたかっただけだ。 避けられない選択の瞬間が近づいているのが感じられる。 どんな運命に直面しても、自ら下した決定に後悔を残してはいけない。」


「…」


「すまないね。 年寄りの小言が長かったんだね。 あちらにある引き出しの中を一度見てみる?」


私がそっと近づいて引き出しを開けると、まるで本のようにきちんと整理された紙の束が一握り出てくる。


「これは…」


「向こうの世界で過ごすのに役に立つような、あれこれが書かれた文書だよ。 身分と家··· そして最も重要な··· 行き方がある。」


「我が王国は代々将来、国を率いる者を修行の一環としてあちらの世界に送る風習があった。」


「今私にルチアを捨てて逃げろということですか?」


「今の状況が残念だが、実はずいぶん前から準備されていたことだった。 もう言ったじゃないか? 歴史に沿って伝わるルチアの風習だと。 一種の旅行であり留学だと思ったらどう?」


「いくらなんでも…··· 今出発するのは、ルチアを捨てているように見えるのは明らかではありませんか? 国民が私のことをどう思うか··· ただでさえ不信と疑念にとらわれたこの状況で…」


「私はこの国の王女として。」


彼が私の話を切る。


「だから私があなたを、この深い夜に静かに一人で呼んだ。」


「…」


「決まった運命をどのように受け入れるかは私たちにかかっている。 ただ君が決めてほしいだけだよ。 誰にも振り回されずに。 本当に欲しいものは何?」


「私は…」


「考える時間はあまりない。 まさに明日の夜だよ。 城の裏門にそこに向かう馬車を待機させておいた。」


私はそれを聞くと感情が爆発しそうだった。


「夜が更けたから… あの… 私はこの辺で失礼します。 ゆっくり休んでください。」


「…」


私は少し無礼に思えるほど一方的な言葉だけを残して、逃げるように部屋を出た。


ドアを閉めるや否や自然に足の力が抜けた。 壁に寄りかかって座り込んではやっとこらえていた泣き出した。 廊下に敷かれた深い闇の中に涙まみれになった顔を隠し、すすり泣く音がひょっとしたらドア越しに聞こえるのではないかと思って手で口を塞いで息を殺した。


ただ私一人だった。


翌日が明けた。


「お姫様。」


「どうしたの?」


「何かあったんですか?」


「何で?」


「表情がよくないようです。」


「ミカ。」


「はい。」


「この国での私の役割は一体何だろう。」


「もちろん、将来ルチアのすべての国民のお母さんになる方です。」


「本当に、それでいいの?」


「…」


「国民の幸せと国の平和のために、私一人が犠牲になれば大丈夫だ。 ところで本当にこの方式が正しいのか? 今これがそんなに簡単に解決される問題なのか? この懐疑感は一体何で解けるの? 私は… 分からない。」


「マリア様。」


「私はこの質問に対する適当な答えを見つけたい。 このようなやり方で正当化しては、どんな選択をしても後悔だけを残すことは明らかだ。」


漠然とした悩みにとらわれ、昨夜受け取った文書を取り出し、ゆっくりと目を通した。


「きっとここで見つかるだろうね。」


文書を読み終えた頃には、すでに空は夕焼けで赤く染まっていた。


大きくため息をついて決心した。


闇が濃く敷かれた深い夜に慎重に城を抜け出しては約束の場所に向かった。


もし誰かにばれたらと思って暗い布をかぶっては、周辺に誰がいるかを調べる。 一刻も警戒を緩めることはできない。 堂々としていない選択に懐疑的な気持ちで急いで走るだけだ。


足を早めて到着したところには本当に馬車が待っている。


私はそっと布を持ち上げて頭を下げる。


「よろしくお願いします。」


「どうぞお乗りください。」


私が馬車に慎重に乗り込むと,ガタガタという音とともに動き出す。


このように頑なにするのが怖かったが、顔や性格さえ知らない人と一生を共にすることを約束しなければならないというのが気に入らなかったし、たとえこうしたからといって何が良くなるかも知れないという考えでさらに拒否感があった。 本当に極めて個人的で感情的な選択に過ぎないと思っても、ただ私の決定に対する懐疑感を少しでも減らせることを願うだけだ。


低い山の斜面を登っていた馬車は、私が心の整理を終える頃に突然止まる。


「到着なのかな?」


「ここからは歩いて行かなければならないようです。 どうかお姫様のご希望の答えを得ることを願っております。」


「ありがとうございます。」


私は軽くうなずきながら別れの挨拶をしてから馬車から降りる。


再び深い闇に身を隠すと、さらに緊張する。


周辺を見回しながら狭い林道をゆっくり歩いて登る。


「この丘を越えて出てくる洞窟が入口だと言った。」


「マリア様。」


「ミカ。」


「どこにそんなに急いで行かれるんですか。」


「今になって私を止めることはできないだろう。 昨日した質問の答えを探しに行きます。 きっと向こうの世界に。」


「やっぱりこんな決断をされたんですね。」


「私はもう心を決めた。」


「止めようとしているのではありません。 お伝えしたいことがあって来ただけです。」


「え?」


「今夜、ルーブル3世が亡くなりました。 最後の言葉を代わりに伝えてほしいと頼まれてきました。」


「…」


「楽しい旅行になりますように。 お姫様。多くのことを見て、多くのことを感じて、多くのことを学んでください。」


足がぶるぶる震えるが、この場で座り込んだら二度と起き上がれそうにない。


私は歯を食いしばって涙をこらえる。 彼女を通り過ぎて洞窟の中に入る。


自ら何かやり遂げられるということを見せようと決心した以上、たとえ帝国の王子と結婚するのが嫌で駄々をこねるに過ぎないとしても、一応一度信じてみることにする。


震えるが、足を止めることはできない。


「こちらの世界なら何か答えが見つかるかもしれない。」


深い洞窟を通過する瞬間に強烈な光に包まれ、目を一度閉じてから開ける。

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