第25話

「ところで本当におかしいのは、これを無条件真実だと前提してから続く話だ。」


鉱石を統制し、独占的に管理したのは確かに聖父だと述べた。 それで村の人たちが生活が難しくなり、エルビンがこっそりエルバンドルに鉱石を捧げた。 ところが聖父は神殿で罠を掘っておいて、むしろ鉱石を持ってくるのを待っていた。 エルビンが鉱石をここに捧げるという事実を聖父がすでに知っていたということじゃない? それで終わりじゃない。 さらに鉱石のエーテルを吸い込むアイギスという神を守ろうと、むしろ私たちを攻撃したということだ。 つまり鉱石を捧げろと言った究極の背後が聖父ということなのに… 鉱石を密売したエルビンと同じ味方の神殿の男と聖父が仲間だというのはおかしくない? これはエルビンが聖父と同じ側だという意味だけど、さっき言った事実を考えると完全に矛盾してるんじゃない?」


「確かにそうですね。 単純に目を閉じてあげたとしてもつじつまが合いません。 まるで聖父親が鉱山を統制し、一部で鉱石をアルビンにエルバンドルに密かに捧げるよう誘導したということになりますから。」


「本当に鉱石を捧げるのが目的だったとすれば、そもそも自分たちが前に出てやればよかったのではないか? あえてこんな複雑な方法を使わなくても可能だったのに… 何のためにこんな大変な方法を使ったんだろう? 世の中がエーテルの不均衡で病気になるのを防ぐという聖父がアイギスを守ろうとしたのも矛盾だが、エーテル鉱石を統制したのも矛盾だ。」


「この方法でなければならない理由でもあったんですか?」


「そう、私が言いたいことがまさにそれだよ。 絶対にこの方法を使わなければならなかった特別な理由があったということだ。 それを突き止めなければならないようだ。 聖父の究極的な目標と関連があるのは明らかだ。」


同じ時刻、ベルがエルバンドルで行った騒動がミラドールに伝えられ、やはり熱い対話が交わされている。


デミスがミラドール大聖堂に座っており、彼の周辺にクリスタルが浮かんでいる。


緑のクリスタルが真っ先に声を上げる。


「なぜベルがクリスタルを集めるように放っておくのですか? あまりにも余裕を持っているのではないですか?」


藍色のクリスタルがその言葉に鼻で微笑みながら答える。


「ふっ、考えが短いね。」


緑のクリスタルがかっと怒る。


「何?」


藍色クリスタルはやはり余裕のある声で堂々としている。


「あいつは私たちの代わりに苦労してくれるんだよ。 奴が集めたクリスタルだけ抜いたらいいんじゃない? 手を使わずに鼻をかむ機会なのに、どうしてそんなに考えが短いの?」


緑のクリスタルは気にせず反問する。


「それが言葉のように簡単だと思う?」


藍色のクリスタルがやはり平然と答える。


「いくらもがいても、神の力の前で弱さ極まりない存在だ。」


「もうクリスタルを3つも集めたよ。 いまだにそんなのんきなことを言っているとは。」


藍色クリスタルはむしろ緑色クリスタルを追い詰める。


「お前はせっかちすぎて問題だよ。 そんなに急ぐと逆効果になるんだよ。 言ったじゃない? ベルがクリスタルを集められるようにしてくれるんだよ! まだ理解できないのかな? 聖父が直接乗り出してクリスタルを集めようとすれば、明らかに民心が揺れるだろう。 本当に一つを知っていて、二つは知らないやつだね。」


オレンジクリスタルもやはり藍色クリスタルの言葉を手伝う。


「ただ我々の計画通りに動いているだけだ。 訳もなく急いで飛びかかって仕事を台無しにしないでじっと見守ることでもしろと。 それが手伝ってくれるんだよ。 暴れるネズミを一匹捕まえようと家全体を燃やして食べる必要はないじゃない? 余計な騒ぎを起こしても聖父の恥だよ。 紳士的な方法で静かに処理すればいい。」


緑のクリスタルはそれを聞いてただ怒りを鎮める。


「くぅ…」


翌日、小屋を出たベル一行はやはり新しい目的地をどこに決めるべきか悩んでいる。


「これからどこへ行くつもりですか?」


「ケイロンに行ってみたい。 本当にエルバンドルにエーテルが流れてケイロンが荒廃したのが事実なら、アイギスを倒した今は元に戻らなければならないからね。 気になる。本当に黄色いクリスタルの影響が消えたのか確認したい。」


「私も賛成です。」


ベル一行はケイロンに到着し,全体をざっと目を通す。


見た目はあまり差がないが、確かにエーテルが再びここに染み込んでいるのが感じられる。 とてもゆっくり少しずつ。 ベルは土を一握り握って触ってみる。


「乾いた地面に生気が戻り始めました。」カディヤはしゃがんで荒涼とした村の片隅に咲いた小さな緑色の生命を発見し、明るく叫ぶ。


「やはりエルバンドルにエーテルを奪われたからですね。」エルマもやはりその姿を見ると努力が成果として光を放ったのが実感が湧いてにっこり笑う。


ちょうどその時、ベルはバーカーズの家でルティスが言った言葉を思い出す。


「たぶんルティスも好きだろう。」


「きっとそうでしょう。」


ベルはエイブに戻ることにする。


「もう約束を守らないと。 この良い知らせをルーティスに伝えに行ってみよう。」


エルマがやはりうなずいている。


「いい考えですね。 どうなったのか気になると思います。」


その時、後ろから誰かが慎重に近づいてくる。


「あの… こんにちは。」


ベルは突然の気配に驚いて聞き慣れない音の方を振り向く。


「誰?」


ベルは鎌を取り出して眉をひそめる。


エルマもベルがたくさん警戒する姿を見て、一緒に神経が鋭くなる。


彼は2人の脅威を気にせず穏やかな態度で一貫する。


「はじめまして。 名声は古くから聞き覚えがあります。 この地にエーテルを返してくださって本当にありがとうございます。 おかげさまでここが蘇り始めました。 まだまだ先は遠いですが、いつか豊かな昔の姿を取り戻すでしょう。 厳しい状況の中で希望を見せてくださってありがとうございます。」


ベルは彼の丁寧な挨拶を気にせず、すぐに襲いかかるかのようににらみつける。


「小言が少し長いみたいだけど、用件は何だろう?」


「戦いに来たわけではないので、そんなに警戒しなくてもいいです。 むしろ感謝を伝えに来たんですよ。 私の町に招待して恩返ししたいのですが、いかがでしょうか?」


「言葉はありがたいけど、今すぐしなければならないことがあって… 少し大変そうだね。 そんなことに浪費する時間はない。」


「長い旅の疲れを取る良い機会なのに残念ではないですか? 私の町は不死者が一人もいないので、誰でもくつろげます。 不死者に襲われる心配をしなくてもいいところが今の時代では珍しいです。 こんなに疲れた旅行をされた方なら、これがどういう意味なのかよくご存知だと思います。 違いますか?」


「…」


「もう一度強調しますが、不死者が一人もいなくて安全が保障されたところです。 誓います。」


ベルは不審な目で彼をちらりと見た。


「そんな所が本当にあり得るのか? 罠だったらどうする?」


エルマはベルと違って、彼の言葉にむしろ期待感を表す。


「それが本当かどうかはわかりませんが、とりあえず一度行ってみた方がいいと思います。 本当にそういう楽園のようなところなら、何か新しい手がかりが得られるかもしれません。」


「エルマ、本気なの?」


カディヤも続いた戦いに疲れたせいか、ただ休むことができるという話を聞いただけでも喜んでそばで手伝う。


「そうですね。不死者がいないところなんて、なんか不慣れで不思議ですね。 最近とても大変でもあったし」


「カーディ、お前まで…」 ベルは眉をひそめる。


「私たちは今までこのようなやり方で旅行を続けてきましたよね? 今回も一度行ってみましょう。」


「お二人、本当にありがとうございます。 快く来てくださるということなので、村もきっと皆さんを大歓迎するでしょう。」


「…」


ベルがしばらく悩んだ末、勝てないふりをしながら鎌を再び突き刺す。


「よし、しょうがない。 代わりに二人とも緊張をほぐしたらダメだよ。 何が起こるかわからないから。」


「はい, 分かりました。」


ベル一行が彼の後を追って村に到着すると、まるで待っていたかのように誰かが飛び出してきて歓迎してくれる。


「こここそ楽園だ。 急な招待に快く応じてくれてありがとう。 少しでも無礼だったら心から謝るよ。 会えて嬉しいよ。私の名前はアルゴだよ。 誰もが平等なこの楽園の唯一の支配者だ。」


「私はここに遊びに来たのではない。 疑問を解決しに来たんだ。」


「敏感すぎじゃない? まず、顔をしかめているところから 少しほぐした方がいいと思うんだけど。 どれだけ大変だったか警戒するのが身についているね。 だまされたせいか疑いの病にかかったみたいだけど、そうでしょ?」


「そう、だまされてばかり生きて疑心病にかかったんだから、君が理解したほうがいいだろう。 やることがあって忙しいんだけど、用件が何なのかから聞かないと。」


「せっかちなのは認めてあげないと。」


「そう、よくわかれば、小言じゃなくて用件からちゃんと言って。 そうやって遠回ししながら核心を曇らせるのは大嫌いだからね。 どうして私をここに呼んだの?」


「よし、でもそんな固い会話をする前に、少しだけ余裕を持って町を見物しても悪くないだろうか?」


「いや…」ベルはそれを聞くとあまり気が向かないように眉をひそめる。


「新たに感じることがきっとあるはずだから。 せっかく招待したのに、索漠と用件だけ言って村を離れるのが残念なんだ。 少しだけ見回してみると、あなたの心が少し変わるかもしれない。 理由が何であれ、結局ここに来たじゃない? 本当に関心がなかったら、あえて来もしなかっただろう。 君の旅路を興味深く見守った一人として、私も言いたいことがたくさんあるんだ。 君が何をしてきたのかよく知っているし、これから何をするのかもとても気になる。」


ベルガ·エルマとカディヤを交互に見ると、2人とも特に嫌な表情をしているようではない。


「いいよ。村を少し見回すのは難しくないよ。 代わりに無駄なことはしないほうがいい。 少しでも変な気配が見えたら、この鎌がすぐ君の首に向かうから。」ベルがため息をついては仕方ないというように提案を受け入れることにする。


「そう、 少しだけ余裕を持ってみろって。 ここは毎日がお祭りの地上楽園。 そんな険悪な態度は似合わないところだということを君もすぐに分かるだろう。 私が保障するよ。」


「ふん。」


ベルは鼻で笑って振り返る。


「じゃ、私たちもこれで。」


エルマとカディヤも短く挨拶してからベルに従う。


カディヤはベルに話しかける。


「本当にこの村に不死者になった人が一人もいないというのはあり得ますか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る