第14話

ベルが鎌を取り出して彫像に向ける。


「もちろん、簡単だよ。 他に何か言葉が必要だと思う? 武力で解決するしかない。 残念だけど、私たちはお互いに敵だということだよ。」


「きっと寺院の入り口に強力な魔法がかかっていて、選ばれた者だけが入ることができたはずなのに、もしかしてあなたもリッパーですか?」


「そう、私の体にはセージ一族の血が流れているんだ。」


「入口結界があなたを許した理由がやはりそれだったんですね。 でも、本当にそれが事実ならむしろもっと理解できないですね。 なぜこの魔法を解こうとするのですか? あなたの一族が命をかけて歩いた魔法です。 同じ血を交わした彼らの願いを、そのように無残に破ってしまうという理由が本当に分かりません。」


「そう、実は私もそれが気になった。 私たち一族は裏切り者の一人に皆殺しにされた。 そして、その事件の真実がここに隠されているようだったんだ。」


「皆殺しにされたわけではありません。 ただ、お供え物になっただけです。」


ベルは眉をひそめる。


「興味深いね。あの時あったことについて何か知っていることがあるみたいだね。」


「言葉ではいくら説明しても感じられないでしょう。 その答えは私の代わりにこの魂たちがしてくれるはずです。」


青いクリスタルが光りながら噴き出したエーテルがベルの周辺にぎっしりと幻影を作り出す。


「白いローブ… クリスタルを守るということか? 余計に面倒くさいね。 こんな小細工をしたからといって私が怖がると思う?」


「言葉があまりにも侮辱的ですね。 小細工ではなく、崇高な魔法のために自分を捧げた尊い魂たちです。 切実な人たちの叫びを一度聞いてみましょう。」


「フッ、それでもごまかしだよ。 こんな歓迎などで私を止められそうか?」


ベルはにやりと笑いながら鎌にエーテルを巻いて高く飛び上がり,幻影を軽く切り取る。


「何だよ、弱いじゃん? たかがこんなことを試練として置いておいたの? 私をあまりにも見くびったようだが?」


まさにその時、その幻影のエーテルに込められた感情の記憶がベルのエーテルに染み込む。


「ううっ…」


ベルが耳元で鳴る誰かの声に苦しみながらもがく。


「はあ…はあ…」


「いかがですか?崇高な犠牲者の感情を感じましたか? 切迫感。切実さ」


「面白いね。試練ってまさにこれだったんだ。」


ベルは座り込んで荒い息を吐く。


「少し大変ではあるね… でも、こうしたからといって私が座り込むと思ったら大きな勘違いだよ!」


ベルはむしろ歯を食いしばって鎌をしっかりつかむ。


その時、また別の歓迎がベルを襲う。


ベルはやはり軽く避けた後、大きく鎌を振り回して幻影を切り取る。


やはり同じ方式で幻影の青いエーテルが散らばってベルのエーテルに染み込む。


「くぅ…」


歓迎の記憶がベルの感情を刺激する。


ベルは鎌を落として座り,荒い息をする。


青色のクリスタルがベルを再び起こす。


「もう考えが変わりましたか?」


ベルは罪悪感で頭をつかんでよろめきながら立ち直る。


「うるさい。指一本も動かさないくせに卑怯に後ろから小言ばかり多いね。」


「まだ抵抗する気力が残っているようですね。 反逆者のくせに粘り強いですね。 あなたの血肉の意志を破ってまで何を得ようとしているんですか?」


「そんな意志を破ると言ったことはない。 ただ受け入れると言ったこともないし、ここで崩れないだけだよ。 絶対!絶対! 崩れない。 何が私を遮ろうとも。」 ベルの体がより赤く燃え上がる。


悪に捧げた赤い鳴き声に反応するかのように、幻影が一斉にベルに飛びつく。


ベルは力強い気合いを出し,四方から泣き叫ぶ幻影を鎌で切り出す。 ベルが振り回す鎌が幻影をかすめる度に煙のように消え、いつのまにか青いエーテルが霧のようにベル周辺を覆う。


ベルの鎌が起こす鋭い鳴き声が静かな神殿を埋め尽くす。 すでに世を去った者の執拗な未練に過ぎないと一人で繰り返しながらより一層激しく振り回すが、努めて振り切ろうとするほどここを守るという切実な願いが耳元にさらに大きく響く。 固い意志が込められた親しみやすい声がベルの感情をさらに刺激する。 誰かの声が聞こえるたびにベルはぼんやりと浮かぶ名前を思わず呼んでみる。 愛する人のために、故郷のために、世の中のために。 すべての願いはその意に逆らおうとする者に対する恨みになってベルの胸を鳴らすが、いつのまにかこの鼓動はむしろベルに鎌を手放せない理由になってしまう。


「そう、みんな去っていった。 すべてを残して、そして私だけを残してね。」鎌の重さがより一層生き生きと感じられるほどベルは涙を飲み込み、より堅く鎌をつかむ。


染み込む青いエーテルを努めて無視しようと歯を食いしばると、体から噴き出る赤色も一緒に濃くなり、異なる色の二つのエーテルが絡み合ったまま漂う。


幻影が一つ二つ消える度にベル自ら胸に責任感として刻んだ一言誓いがさらに強くなる。


孤独で激しいベルの踊りは、最後に残った歓迎すら凄絶に切ってやっと止まる。


ベルがやっと戦いを終えたと思うと、すぐに体の力が抜けて鎌を床に落として荒い息をする。 いざ血一滴も流さなかったのに、この戦いが何を意味するのか実感しては頭の中が空っぽになり、足がぶるぶる震える。


目の焦点がぼやけている中でも、努めて視線を正面から固定する。


「きっと…きっと…」


「 必ず…」


ベルが体さえまともに支えられずふらつくが、どうしても足を止められない。


ただ執念一つで一歩一歩踏み出してみると、いつのまにかすぐクリスタルの前にそびえ立っている。


ベルが大きくため息をつき、クリスタルに向かって切実に手を伸ばす。


「必ず!」


ベルの切実な風が込められたエーテルがクリスタルエーテルと連結されると、強烈な光が空間全体を覆う。


あっという間にすべてが蜃気楼のように消えてしまう。


神殿や村は跡形さえ見られず、ただ荒涼とした野原にベルだけがぽつんと倒れている。


ベルが暖かい日差しにやっと目を覚ますが、まるで夢を見たかのように依然として朦朧としている。


手にはクリスタルが握られている。


「ベル様!ベル様!」


「大丈夫ですか?」


エルマとカディヤが急いで走ってくる。


ベルはそっと目を開けてかすかな笑みを浮かべる。


「そうだね…いいと思う…」


「よかったですね。」


「何かあったんですか?」


「小さな騒ぎがあった。」


「けがはしていませんか?」


「体は大丈夫。 もしかして… 私が神殿にいる間、何してた。」


「私は何もしていません。 ただベル様が無事に出てくることを祈っただけです。」


「そう?本当でしょ?」


「どうしたんですか? 釈然としないことでもありましたか?」


「実はこのクリスタルの声が君の声みたいだった。 単純に似たようなレベルじゃなくて、ただ同じだったんだ。 幻聴ではないかと私の耳を疑うほどだったんだ。」


「聞き間違えたのではないでしょうか? 私は何も言いませんでした。」


「そうだったかな?そんな気もするし…」幻想の中でもがいていたからかもしれない。 いずれにせよ、単に偶然だと断定して見過ごすには何か疑わしいというか


「神殿の入り口であんなに冷静におっしゃっていたのに… ベルさんはその時、一人で離れて すごく寂しかったんですね。 私がとても恋しかったんですね?」


「いや、そういう意味じゃなくて…」


「まあ、とにかくこうやって無事に帰ってきてよかったです。」


「帰ってきたんだよね? 止まっていた時間が流れたのかな?」


ベルはやっと起きて周りを見回すが、結局枯れてしまった木と草しかない。


地面から何の気運も感じられない。


ベルが気を引き締めて土を一握りつかむと、すぐ粉のように砕ける。


「なぜこんなに急に変わってしまったのか… その村は本当に単純にただの幻想だったのだろうか?」


ベルは眉をひそめ,エルマもすぐそばでその光景を見て慎重に尋ねる。


「最初からこうだったのでしょうか? まるで夢を見たようです。」


ベルはひざまずいて荒涼とした地面を一度撫でる。


「いや、最初からこうだったわけでもないし、ただの夢でもない。 エーテルが地脈に沿って流れた跡が残っている。 何かあったに違いないようだが… どういうことなのか到底分かる方法がないね。 手がかりになるようなものでもあれば、見当でもつくはずなのに。」


「なるほど。」


「エーテルがここから他の場所に流れるのは特におかしいことではない。 むしろ極めて正常なことだと言える。 元々風に沿って水に沿って世界中の隅々を流れるんだから。 むしろどこかにずっと留まっているのがおかしいと言える。 本当の問題はエーテルがここから抜け出るだけで、実際には流れなかったということだ。 この村自体がエーテル循環過程から排除されているということだ。 これは話にならないことだ。 生気を失ってからもうずいぶん経った。 ただ時間が止まっていただけで、この地はゆっくりと乾いていった。」


「いったいその理由は何でしょうか?」


「ここに来るべきエーテルが他のところに行ったと考えるのが一番有力だ。 エーテルの流れを横取りしたってことだよ。 抜け出した跡はあるから、いったんついていけばどこに到達するかはわかるはずだよ。」


その時よろめきながら誰かが近づいてくる。


「火…火のライオン?」


「お腹すいた…」


「何て言ってるんだろう?」


「お腹空いたって言ってるみたいだけど?」


ベルがゆっくり近づいていく。


「ちょっと待って…危ないです。」


「いや、それは違うと思う。」


「それは…」


「この不死者からはエーテルが感じられない。 ただ感情だけが残った空の皮だよ。 完全に痩せてる。」


「そうなんだ。」


「うーん…」


「カーディ?どうしたの? どこが悪いの?」


「何だかちょっと気が重いです。」


ベルもやはりその言葉が何を意味するのか自然に理解できてとても聞き取れない。 ただ口をぎゅっと閉じて眉をひそめるだけだ。


「…」


エルマはしばらくカディヤとベルの表情を見ながらためらい、先に手招きする。


「とにかく問題が解決したので、これ以上この村に留まる必要はありません。」


ベルもやはり待っていたかのようにエルマの後を追う。


「そう、早く行こう。 変な気分になって気が引ける。」

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