第13話 ノート、あるいは日記、あるいは遺書。そして警告

 オレはノートを一通り見た後、柊とともに見ることにした。


『あっちゃんへ、


 今は不思議と、頭がすっきりしてるんだ。

 だから、手紙を書こうと思う。

 最近、俺、変なんだ。

 幻覚が見えたり、全部が敵に見えたりするんだ。

 たぶんあっちゃんにも、ひどい態度をとったと思う。

 ごめん。


 最初はただの楽しい会話だったんだ。

 俺の日々に彩りを与えてくれるものだと思ってた。

 友好的なやり取り、俺の趣味について話したり、日常の些細なことまで。


 次に感じたのは小さな違和感だった。でも、次第にそれが大きな恐怖へと変わっていった。

 

 いつもどこかで見ている、彼らが。

 窓の外、影の中、部屋の隅。

 見るな!俺の心を見るな!


 でも、少しずつ変わってきた。

 心地よい会話から、不安を感じるようになった。

 友達や周りの人々に対する疑いも覚えてきた。


 俺は特別なんだ。


 今日は良い天気だった。

 でも、どこかで俺を監視している気がして、安心できない。

 俺はもう、どこにも安全な場所がないと感じてる。


 今見えているのは幻覚? 現実?

 わからない。

 理解不能なメッセージが増えた。

 心が混乱して、何が本当で何が嘘かわからなくなってきた。


 やめてくれ! もう耐えられない!

 なぜ俺なんだ? 何をしたっていうんだ!


 あっちゃん、気をつけてほしい。

 彼らには近づかないで。

 俺のようにならないように。彼らはいつもそこにいる。俺はもう逃げられない。


 いや、待てよ。今日は晴れていた。

 俺はただ、普通に生きたいだけなんだ。普通の生活に戻りたい。

 でも、それはもう無理なのかもしれない。


 見るな!俺の中を見るな!

 彼らが俺の中を。頭がおかしくなりそうだ。


 あっちゃん、もう俺は無理だ。

 もう最後になるかもしれない。君には幸せになってほしい。俺はもう。だめだ。

 彼らには勝てない。彼らはいつも、俺を見ている……』



「…………な、なんなの。これ」

 柊は口を押えながらそう言った。

 彼女は顔を真っ青にして、挙動不審にすら見える様子で、目をあちこちにさまよわせている。

 まるで顔を見せないようにしているかのように、口元に手をやり、顔をそむけた。


 桑名が残したのは、明らかに正気ではない文章だった。


 だが、オレはそこに切実さのようなものを感じた。


 オレに何を伝えようとしているんだ。


 彼らとは何なのか、桑名に何が起こったのか――それを考えなければならない。

 オレは柊とノートについて話した後、『彼ら』について調べようと思った。




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 あとがき


 ここは読み飛ばしてくださって結構です。

 ここまでお読みいただきありがとうございます。


 カクヨムコンというコンテストに出させていただいております。

 よろしければ、★やフォローでの応援をよろしくお願いいたします。


 この作品はフィクションであり、実在の人物・団体などには何の関係もありません。

 なお作中で行われている行為は現実で行うと犯罪として処罰されるものがあります。

 絶対に真似しないでください。


 もちぱん太朗。

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