第4話 瞑想




 毎日毎日、とは言わないが。

 必死の形相で、とも言わないが。

 結構な頻度で頼みに来る道士に、白龍はほだされかけていた。


 もういいのではないかな、と。

 秘密の世界に連れて行っていいのではないかな。

 要は、食べさせなければいいだけの話なのではないかな。

 連れて行って見せるだけならば問題ないのではないかな。

 食べたいならば早く仙人になれって鼓舞すればいいのではないかな。

 そうだ。そうしよう。


 色めき立った白龍は下降し、豆粒ほど小さくなった道士の元へと急いだのであった。


(………う~む。やはり、連れて行かない方が。いや。う~む)


 わかっていた。

 いや、真面目な子ではあると思う。

 掃除はきちんとするそうだが瞑想が苦手だとは、道士の指導係から聞いていた。

 胡坐をかくのが苦手なそうで、寝転がってなら大丈夫らしい。

 今みたいに。

 まあ、瞑想は好きな姿勢で挑めばいいので、寝転がろうが逆立ちしようが各々好きにすればいいのだが。

 瞑想とは静かに己を見つめ、世界を見つめる行為のことである。

 これは、単に眠っているだけだ。


「おい」

「ん………あ。白龍。どうしました?」


 眠気眼で見つめられた白龍は迷った。

 何だか、何が何でも秘密の世界に行きたい、という気概が、熱量が感じられないのだ。まったくではない。これだけお願いしてくるのだ。結構感じられる。が。もっと、ほしい、かなあ。

 この道士を果たして、秘密の世界に連れて行っていいものか。

 連れて行きたいのかどうなのか。

 正直に言えば、連れて行くなら、どうしても行きたいんだと目に炎を宿して訴えてくる道士がよかった。

 連れて行って、秘密の世界に感激して、食べるために仙人に早くなりますと宣言する道士がよかった。


(う~~~む~~~)


 白龍は迷った。











(2024.1.31)



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