第7話 2度目のピンチ:自分以外のスタッフが全員辞めることになった

ある晴れた日の午後、僕の心にイナヅマが落ちた。

僕以外の4人のスタッフが、共同経営者だった人を含めて全員辞めることになったのだ。三ヶ月後にはやめます。と言われた。


要は、共同経営者だった人を含めて、僕以外の4人は、僕のやり方に不満があった。そこで、4人で、新しく事業所を立ち上げることにしたのだという。それも比較的うちの事業所の近所で。


ま・じ・で・?


4人辞めるということは、新たに4人雇わなければならない。もちろん引き継ぎも必要だから、時間がない。そして、引き継ぎの間は、給料が二倍かかる。金がかかる!ヒェぇ〜!僕は心の中で、ムンクの叫びのポーズを僕はとった。


次の日からが地獄だった。辞めるという4人と一緒に仕事をするのだ。


その時、僕は、一人ぼっちになった気分だった。

不安が押し寄せた。もし、新しいスタッフが決まらなかったら、大幅減算で、事業所はとても立ち行かない。


「うちは潰れるかもしれない」

妻と子供達の顔を思い浮かべた。無職になるわけにはいかない。


数日経ってから、正直に今通所してくれている利用者さんの1人に、今の事業所の現状を打ち明けた。


「俺たち、通うから。頑張ってよ」


その時、ずっとひとりぼっちだと思っていたけど、自分を応援してくれる人はちゃんといたと気付かされた。


自分以外のスタッフ全員に辞めると言われて、自分が今までやってきたことは、全部間違いだった。そう言われた気分だったけど、今まで自分が努力してきたことををちゃんと肯定してくれる人がいた。そうだ。利用者さんの人生を少しでもいいものにしよう。そう思って、僕はやってきたんだった。その日、僕は人のいないところで少しだけ泣いた。


確かに、今思えば、僕にも至らないところがあった。やめていったスタッフにも至らないところがあっただろう。お互い様だ。だけど、こういう結果になったのは、どっちかにダメなところがあったからじゃない。僕たちは、違う方向を向いていたから、違うバスに乗ることになっただけなんだと今は思う。


新しくきてくれたスタッフは、僕と同じバスに乗ることを楽しんでくれている。そして、僕が行きたい方向に一緒に向かってくれる。だから、楽しい雰囲気のバスには、利用者さんが次々と乗ってきてくれる。確かに、その時のことは大きな苦しみだったけれど、結果的に、スタッフが入れ替わって、今のいつも定員いっぱいの最高の事業所を作ることができた。


神様は、努力している人を見ている。そして、一見悪いことでも、いいことの前触れだったりする。


だから、今病気で大変な思いをしている人も、今が人生を好転させるきっかけと捉えて、好きなこと、やりたいことに挑戦してほしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る