僕らはただ深い所で繋がりたいだけなんだ…。令和版最先端最新ラブコメ

ALC

第1話心とは…

昔から僕は変なやつだって言われていた。

同級生男子と集まるとほぼ決まってする話についていけなかったからだ。

「お前は誰が好きなん?」

「え?あいつ好きなん?何処が?」

「俺もあいつ好きなんだが…ライバルお前とか…勘弁してくれよ」

「そんで?奏音かなとは誰が好きなの?」

友人に話題の中心にされて悪い気分はしない。

後になって気付くのだが…僕にこの質問は答えられないのだ。

僕は好きがわからない。

「え?可愛い娘を言えばいいの?」

邪気のなかった僕の言葉に友人たちは少しだけ眉をひそめた。

「好きな人いない感じ?」

こちらも邪気のない友人の言葉を僕は受け取ることとなる。

「だから。それは可愛い娘を言えば良いんだよね?」

「う〜ん。なんか違うけど…お前ズレてない?」

「そうかな…可愛い娘は思い浮かぶけど…好きって何?」

「あぁ…ごめんな。まだお前には早かったか…」

そうして友人たちは僕を少しだけ除け者にすると自分たちだけで盛り上がっているのであった。



そんな小学生時代を過ごしてきた僕も中学生となる。

「お前…誰が好み?」

少しだけむっつりな子供になっていた友人たちはその様な話を始める。

「俺はあいつ…」

「やっぱりあいつだよなぁ〜」

「そんで奏音は?」

友人に再び話題の中心へと持っていかれた僕は話題の核心を突くような言葉を口にして全員にドン引きされる。

「え?誰とやりたいかって話?」

「………。やっぱり…お前とは話が合わないわ。すまん」

そうして友人たちは僕から離れていくのであった。



高校生になって僕はネットを駆使して情報を仕入れていた。

どうやら僕はアロマンティックという性欲はあるが他人への恋愛感情が湧かない人間のようだった。

そんな僕は誰とも恋愛が出来ないのでは…。

そんな事を薄く悟りだしていた。

だって性欲だけはあるが好意はまるで無い。

そんな男性を受け入れてくれる人はいない。

そう勘違いしていたのだ。

高校生になった僕は他人とは関わらず一人で過ごすことが多かった。

学校でも放課後の街でも。

そんな僕とあいつが出会うことになるなんて…。

今の僕には知りもしないのであった。



現在、僕ら学生だけではなく。

世界的にオンラインゲームが流行していた。

僕はもっぱら格闘ゲームにハマっており、普段の鬱憤をゲームの中で発散していた。

本日は初めて訪れたゲームセンターで対戦相手と闘っているところだった。

後ろには行列が出来るほど僕は連勝をしていた。

早く退いて欲しそうな咳払いや舌打ちのようなものまで聞こえてくる始末。

このプレッシャーの中で僕は十連勝をした所で他人に譲るために席を移動しようと鞄を手にする。

「何で?何でどっか行こうとしているの?」

対戦台から退くつもりだった僕の腕を掴んだのは中性的な見た目をした相手だった。

「あ…えっと…」

言葉に詰まっている僕に相手は無理矢理に席に座らせてくる。

「本気でやりなよ。後ろのことなんて気にしないで」

「あ…はい…」

思わず敬語で答えた僕に相手は薄く微笑む。

「みんなも威圧しな〜い。わかった?」

相手は後ろで威圧をしてきていた人々を嗜めるような諌めるような言葉を口にする。

なお…それは無いぜ〜。俺達だって大会までに練習しておきたいし…」

「じゃあ自宅でやりなよ。ランクマ潜れば色んな人と闘えるでしょ?」

「そうだけど…ゲーセンでやっている方が調子いいんだよなぁ…」

「それはあんたの思い過ごしでしょ?ってかどんな環境でも一定の勝率を得ないと活躍なんて出来ないよ」

「ぐうの音も出ねぇ…」

後ろのやり取りを耳にしながら僕はプレイを継続していく。

またしても勝利数を重ねて十八連勝した辺りで僕は本日初めての負けとなった。

今度こそ鞄を持って席を立つと先程の中性的な見た目をした相手が僕の下へと駆け寄ってくる。

「ってか見ない顔だけど。強いね?どっかに所属している?」

「え…はい?」

「あぁ。プロじゃないんだ。それにしては相当強いじゃん。いつもどんな練習しているの?」

「練習?」

「あぁ〜。じゃああれだ。ランクマの住民?」

「ですね…」

「それでこんなに強いって…終わった後もトレモで練習する感じ?」

「まぁ…上手くいかなかった所だけですけど…」

「へぇ〜。正しい努力の仕方を知っているんだ…。プロに向いているんじゃない?」

「え…?何のですか?」

「だから。ゲームの」

「そんな…僕ぐらいの人はいくらでもいますよ」

「かもね。でもゲーセンで不慣れな環境でも連勝できるのは才能だよ」

「それよりも…あなたは誰ですか?」

「あぁ〜。そうだったね。私は神田尚かんだなお。一応プロゲーマーだよ」

「そうなんですね。僕は白石奏音です。普通の高校一年生です」

お互いが自己紹介を済ませると僕らは自然と握手を交わす。

「ここは初めて?」

「ですね」

「ここってどんなゲーセンか知っている?」

「いえ。適当に入っただけなので…」

「だよね。ここはほぼプロしかいないゲーセンなんだよ。それかプロ志望の人が集まる場所」

「そう…なんですね…」

「そんな場所で奏音は十八連勝したんだよ?もっと自信持ったほうが良いと思うな」

「ですかね…」

「ってかこの後予定は?」

「帰るだけですけど…」

「ちょっとお茶していこうよ」

「えっと…」

「取って食ったりしないよ。安心してついてきな」

「………」

少し迷ったが僕は相手についていくことを決める。

それにしても女性のような見た目や表情をしているが何処となく男性のような強みも感じる。

僕は不躾な質問を相手にぶつけてしまうこととなる。

「あの…失礼ですが…性別は?」

「あぁ〜…生物学上は女性だね。でも心的には無性なんだ。いきなりこんな話しされても困るよね。ごめん。何で初対面の相手に話しちゃったんだろう…」

「そうなんですね。実は僕も恋愛感情が分からないで…ずっと一人きりなんですよ…」

相手が自分の人となりを話してくれたことにより僕も話すハードルが下がっていたのだろう。

「へぇ…何か気が合いそうだね。私達…」

「かもしれません…」

「話が弾みそう。喫茶店行こう」

「はい」

そうして僕こと白石奏音と神田尚の令和版最先端最新ラブコメが始まろうとしていた。


僕らはただ心の深い所で繋がっていたいだけなのだ…。

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