モンブランの悪魔1

 SideY



 結局、締め切りには間に合わなかったけれど、担当編集に謝りつつなんとかプロットをあげる事はできた。


 でも、デキにはあまり納得していない。なれないミステリーだったし、ライトミステリーだったし。

 あまりにネタが思いつかなかったものだから、汐音から依頼されたをアレンジして出したのはここだけの話だ。


 きっと、あのプロットは没になる。そうしたら今度は恋愛小説家として、ファンが求める甘々な恋愛小説を書くの。


 私はそう決心をしてから、急坂を登り始めた。


 今日は腰越高校文化祭、通称が開催される日。


 里奈ちゃんクラスの演劇が披露される日でもある。


 仕事と学校が忙しくて、準備を手伝う事はできなかったけど、汐音、杉浦君、立花君の三人は色々手伝ったらしい。


 まあ、あの三人からしてみれば仕事なのだから当然と言えば当然の話なのだけどね。



 腰高際に向かっていると見られる群衆に紛れて急坂を登っていくと、見慣れた校舎が見えてきた。


 ここ最近、何度か出入りしていたとはいえ、飾り付けられた校舎を目の当たりにすると、輝いていた日々を思いだすわね。


 少し立ち止まって感情に浸っていたけれど、通り過ぎて行く群衆に再び紛れ込み、腰高祭と掲示されたアーチの下をくぐり抜けた。


まさか、あんな事になるなんて、この時の私は微塵も感じちゃいなかった。

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