変人王子の相手はお断りですので!

藍瀬なゆる

プロローグ

 リースティアヌ王国の第一王女であるティアナに仕える専属騎士の1人である元王立騎士団所属だった"アリーシェ"はいつもと同じように王城の中庭で剣術に励んでいた。朝の光がアリーシェの青髪を心地良く照らすのと同時にアリーシェは動かしていた手を止め、持っていた木刀を地面に置いた。


 毎日、早朝に起き中庭であるこの場所で鍛錬をする。それがアリーシェの日課の一つでもあった。王立騎士団に所属していた頃から1日足りともサボることなく鍛錬を続けられているのはアリーシェの努力家な性格が故であるのかもしれない。


「今日も良い天気ね」


 空を見上げれば青白い雲と明るい朝の陽の光に照らされた目の前の風景がアリーシェの青色の瞳に映る。アリーシェはそっと朝の空気を吸い込みその場を後にした。



「はあ、今日もこんなにチェックしなければならない書類があるわ」



 この王国の第一王女であるティアナは自身の仕事部屋である執務室でそっとため息を溢す。それもそのはず机の上に大量の積み重ねられている書類を見れば今日、1日で目の前に積まれている書類を終わらせなければならないのか。という重たい気持ちがティアナに襲い掛かる。


 マイナスな自身の気持ちに押し潰されないようティアナは己に頑張るわよと言い聞かせ気合を入れる。そんなティアナの斜め右横に立ち見守っていた専属騎士の1人であるヴィルは主であるティアナに問う。



「殿下、今日、サクヤ王子殿が殿下と話しをしたいと言っておりましたが、どうしましょうか?」


 滅多に自分からは関わりを持ってこない、サクヤ王子が私と話しをしたいなんて何か裏があるのではないかとヴィルの言葉を聞いたティアナはそう思わずにはいられなかった。


「そう、珍しいわね。私と話しをしたいなんて。どういう風の吹き回しかしら?」


 自分の異母兄であり、第一王子であるサクヤ。そんな彼とは大きくなるにつれて関わることも自然と減っていった。お互いやらなければならないことが沢山ある為、自分のことで精一杯であることが関わることが減った最大の原因であるのかもしれないが......


「まあ、私もサクヤ王子殿と話しをしたいことはあったから、その誘い受けるわ」


 ティアナの言葉を聞き終えたヴィルは手を動かし机の上でペンを走らせ仕事に励む主の正面に足を運び返答する。


「わかりました。では、サクヤ王子殿の騎士に伝えておきます。殿下もお仕事無理せず頑張って下さい」

「ええ、ありがとう。頑張るわ」


 己の騎士であるヴィルが部屋から出て行った後、ティアナは動かしていた手を止め、空いていた部屋の窓から見える青白い空を見上げて思う。


(時期国王に指名されてから、もう、2ヶ月が経ったのね。私は王としてまだ欠けている所が少なからずある。それが何か自分でもまだわかっていないのに。そんな私が王としてこの国をより良い方向に導いていけるの.....?)


 青白く晴れる空とは真逆に少しばかりの不安がティアナの胸に広がった。

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