第13話:香りと彼等
沙耶香と部屋に入ると、礼央君と翔君が座っていた。
席が空いていた礼央君の隣に座る。椅子に座った瞬間、礼央君からふわりと良い香りがした。
「礼央君、香水つけてる? 超いい匂い」
「うん。普段つけているんだけど、教習の時は教員と車で密室になるじゃん。香水の匂い苦手な人もいるだろうから、控えていたんだ。やっと教習が終わったから、久しぶりにつけた。俺この匂い好きなんだよねー」
「どこの香水?」
「ジョーマローン」
「ジョーマローンのどの種類のやつ?」
「ん? えーっと長い名前だった。確か……」
礼央君は鞄の中から黒色のジョーマローンの香水の瓶を取り出した。
【ダーク アンバー & ジンジャー リリー コロン インテンス】
セクシーでなんだか洗練された香り……。
あれ? この香りどこかで嗅いだような?
礼央君の部屋に行った時かな?
スマホでジョーマローンのサイトを調べた。
同じ香りのキャンドルも発売しているらしい。
キャンドルか。
キャンドル? あれ? もしかして。
指輪が無くなったあの夜の記憶を辿っていく。
あの夜。確か優樹菜ちゃんの部屋だった。優樹菜ちゃんの部屋でも、この香りがしたような気がする。
そういえば優樹菜ちゃんの部屋にキャンドルが置いてあったような。
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