第34話エリカ、地上で暴れる

円城エリカ視点




やれるわ!


私は何匹目かのS級の魔物を得意の剣で屠って士気を高めていた。


アキラさんとのコンビネーションはバッチリ。


初めて共闘するけど、パーティを組んでいるアキラさんが上手くリードしてくれる。


前衛はタンク役としてアキラさんが担い、私が中堅を固めるバディスタイル。


流石のアキラさんもS級の魔物だと時々負傷するけど、そこは私の治癒の魔法の出番。


アキラさんの傷を癒す。



「ありがとう」

「いえ、これがアキラさんとバディ組んでる理由ですから!」



アキラさんがピンチになれば私も前に出る。

ソロでは絶対に味わえないスリルと醍醐味・・・そして何より楽しい!  S級も何匹倒したか分からないくらい倒し、そろそろこの辺の全滅が見えてきた時だった。



((グォォォォン!!))

((グルルル……))

((ガオォォォォン!))



S級の魔物が雄叫びを上げ、同時に私達の前に集まり始めた。

これは・・・ヤバいかも・・・。



「アキラさん・・・」

「ああ、気を抜くなよ!」



私は頷いてアキラさんの背後に回った魔物を倒した瞬間だった。

ズドォォォォン!!!  いつの間にかS級の魔物は全滅しており、代わりに目の前には漆黒のドラゴンがいた。



((GURAAAAA!!))

((GAOOOO!))

((GRRUUUU!))



三匹いたらしく、黒龍を合わせて四匹のドラゴンが私達を睨みつけていた。

私は思わず息を飲む。

・・・なんて威圧感なの? S級の魔物なんかとは比較にならない・・・。



「・・・ヤバいぞ」

「ですね・・・」



アキラさんの顔は引きつっていたけど、私とアキラさんはお互い頷き合うと剣を抜いて構えた。



((GAAAA!!))

((GRRRR!))

((GURAAAAA!!))



黒龍が吠えた瞬間だった。


私達の周囲を黒い何かが覆い、同時に激しい轟音が鳴り響く。



「なっ!?」

「アキラさん!?」



何が起きたのか全く分からなかったけど、私は自分の足下に気配を感じて前を見ると・・・赤龍が私の足を咥えていた。



((GYUUU!))

((GAAAA!!))

((GRRUUU!))



そのまま私は空中へ放り投げられた。

空高く飛ばされる私・・・そして空中に投げ出された私の眼前にはアキラさんがいた。



「エリカちゃん!?」



アキラさんは私の危機に慌てて突っ込んできていたけど、時すでに遅し・・・私は赤龍に咥えられ空高く放り投げられてしまった。



((GYUUU!))

((GAAAA!!))

((GRRRR!))



三匹のドラゴンは私やアキラさんを一瞥すると翼を羽ばたかせて空へ飛び立った。



「・・・そんな」



私は絶望するしかなかった。

なぜなら空中に投げられていた私を、黒龍が空中でキャッチしていたから。

アキラさんの顔が絶望に染まる。



((GAAAA!!))

((GRRRR!))

((GURAAAAA!!))



そのまま私は黒龍に咥えられ、どんどん遠ざかっていく地上を眺めるしかないの?



「い・・・イヤぁぁぁ!!」



私の叫びが木霊するけど、黒龍は私を咥えて飛び去ろうとしていたその時。




((ゴガァァ!?))




黒龍の悲鳴が辺りに響き渡る。


私は何事かと思って恐る恐る目を開けると・・・そこには私の見知った人物がいた。




「お前ら、僕の仲間に何してくれてんだ?」


「な!?」


「・・・君は・・・キリカちゃん!」


「もう大丈夫です。僕がこの雑魚を秒で倒します」


「まさかキリカちゃんと共闘できるなんてな! 面白い!」

「アキラさん! 私、まだ黒龍に咥えられているんですよ!」



叫ぶと黒龍に咥えられたままの私を上を向いて見たアキラさんが私に叫んだ。



「キリカちゃん! 頼む!」


「言われなくても! 氷炎の氷姫グリムサイレントデスブレイズ!」




キリカさんの聖剣が光り、黒龍は思わず私を放した。


そして両肩に翼を生やしたキリカさんは空中で黒龍の首を落とす。




「これが聖剣の力です!」




ちょうどその頃、移動速度が遅いドローンがようやく追いついた。




”ようやく代々木公園?”


”どないなってんの?”


”え? キリカちゃん空飛んでる?”


”気のせいかエリカちゃんが上空から落ちてる”




チャット欄にたちまち書き込みが流れる。


私は状況説明を試みる。




「今、リーシェちゃんが大将の魔族と単身で戦っています。私達は負傷したアリスちゃんを聖女のアリシアさんが治癒するのを守っています」




”了”


”それにしても、相手ドラゴンじゃね?”


”それ以前にエリカちゃん落ちてない?”




忘れてました。




「誰か助けて!」


「今助ける!」


「アキラさん!」




アキラさんが高く跳躍すると私をキャッチして地上で降ろしてくれました。




” 《幕僚長六月一日響子》やはりアキラさんやエリカさんは人類初の『魔晶石持ちの人間』ですね”




それが確定した瞬間だということがわかった。


ダンジョン内と同等以上の力を発揮する私達をリーシェちゃんのチャンネルのドローンが捉え、リアルタイムで日本中に配信される。




”は!?”


”なんで地上で力使えんの!?”


”どういうこと?”


”地上の魔物と戦ってる?”


”噓だろ!? 人類の勝利だ!!”


”絶対勝てっこないと思ってたのに!?”




私達の戦いを、まるで信じられないものを見るように視聴していた人々が騒ぎだす。



” 《幕僚長六月一日響子》 ありがとうアキラさん、エリカさん! 本当にありがとう・・・!!”



感極まった響子さんが泣いている。

みんなの笑顔を守れて本当に良かったと思った。



「やれやれ・・・これはヤバいぞ」

「なあに? アキラさん浮かない顔ね?」




「ヴオオーー!!」

「うおっ!」



SSS級のドラゴンが倒された後、こちらに向かってSSS級のドラゴンが更に向かって来る。

敵が増えたのだ・・・。



「はあっ・・・!」



私は短く息を吐き、剣に魔力を込めて近づいて来たドラゴンに突進する。

そのまま魔核をめがけて一閃。



「はああぁっ!!」



ガキィッ! と響く鈍い音。



私の渾身の一撃が弾かれた。

硬い・・・!?



私はAクラス探索者に過ぎない。


魔晶石のおかげで各段に強くなったが、まだSSS級の魔物は荷が重い。



「ヴオオオーーー!!」

「くっ・・!」



私は攻撃を弾かれながらも、返す刀でさらに追撃する。

息つく間もなく繰り出される連撃をドラゴンは防戦一方だ。



「はあぁっ!!」



スパッ! と魔核が斬られる。

まだダメなの・・・!?

斬り口が深くなった程度では致命傷になりえないらしい。



「ヴオッ……!」




ドラゴンの尻尾がエリカを襲う。

ズガンッ!!




「!?」



エリカは驚愕した。

SSS級のドラゴンが血を吐いて倒れたのだ。



「ふうっ・・・! もう大丈夫だね」



アキラさんが倒したらしい。



「アキラさん!? これSSS級の魔物ですよ・・・?」

「SSS級って、エリカちゃんだってS級を簡単に倒してだろ?」

「・・・そう言えば」



確かに地上の魔物を斬りまくっていたせいで忘れていたが、以前の私ではS級の魔物を倒すなんてありえなかった。




「皆さん、アリスさんが回復しました!」


「アリシアさん!」


「皆さん、もう魔法陣は完成してます。だけどリーシェ様が・・・」


「なら、僕が魔法陣を発動させるよ」




そう言い放ったのは聖剣の勇者キリカ君だった。

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