第30話

 ダイアスはパワータイプ、エレノアはスピードタイプ。2人の強みを存分に発揮してるところに、アルスの遠距離攻撃。


 3人の最高の連携で攻め続けても戦況は五分、今までで一番の強敵に対して少しの焦りがあった。


「うむ、いい連携じゃ。まだまだ付いて来れそうじゃの」




 このじいさん強すぎるだろ!俺達3人でやっと五分ってどれだけだよ!!

 俺の«魔弾»も手の甲で簡単に弾きやがるし、«魔糸»も簡単に引きちぎっちまう。

ッ!?やばい!!!


 エレノアが吹っ飛ばされトドメを刺されそうになったところを、ダイアスが庇おうとするがそれも織り込み済みの鬼人は、ダイアスにも大ダメージを負わせた。



「お主は先から面白い技を使うのう」


 2人を«魔糸»で巻き付けアルスの後ろに引っ張った。


「·····ふぅーー、貴方は恐ろしく強いですね。死を連想させたのはこれで2回目です、ここからは俺が相手します。クマラは2人を頼む」


『分かったよアルス!負けないでね!!』


«グラビティ»100%解除 + «魔鎧»


「ッ! 良い、良いぞ小僧!! 龍人族が一番かと思っていたが違ったか!」


 集められるだけ魔素を集め身体能力を極限まで高める。これだけやっても鬼人に勝てるかは分からない。


「··········行きますっ!!」




 アルスと鬼人の戦いは音速を超え常人では目で追えない程早くなっていた。 刹那に何重もの駆け引きがありアルスの神経を削り、限界が近づいていた。


 ちっ、やっぱり、本気を出しても、分は悪かったか・・・・限界が近いな。


「ここまでにしよう」


「ッ!?··········殺さないのですか?」


「阿呆!儂は殺しをしたい訳では無い、偶にこの場所で強者を待ってるだけじゃ」


 鬼人は俺から下がると、戦意をふっと引っ込めた。 それで戦闘が続かないと判断したアルスは、その場に大の字に寝転んでしまった。


『アルスー!大丈夫!?』


「クマラか、俺は大丈夫だ。それより2人は?」


『ポーションを自分で飲んでたから大丈夫だと思う! 早くアルスも飲んで!』


 マジックバッグから上級ポーションを取り出しぐびぐび飲む、傷が癒えて一息ついた。


「まだ名乗ってなかったな、儂はジョンバッハと言う。この儂を存分に楽しませてくれたことを感謝する、ここまで滾った戦いは数百年ぶりじゃ」


「·····道理で強いわけですね、元の力もそうですが技量が半端じゃ無かった。やっぱり技量を磨くのは大切だと勉強になりました」


「はっはっは!! それほどの力量ながら向上心は失わないか、若いってのはいいものよ」




 ◆ ◆ ◆




 何故かジョンバッハと野営することになったアルス達は、焚き火を囲いながら色んな話をした。


「ほう、アルスの故郷に儂と同じ力量の者がおるのか」


「はい、その方とは戦ったことは無いですがおそらく同じくらいかと」


「それに常に強力な魔物が現れる森もあるとな、面白い所で育ったのじゃな」


 そりゃあんたみたいな最強からしたら面白い環境だろうけど、人間からしたら最悪な環境だけどな!?


「うむ、儂はこのダンジョンを出てアルスの故郷に移り住むとしよう」


「はい!? ジョンバッハさんはダンジョンの魔物じゃ無かったんですか!!??」


「あれ、言っとらんかったかの? 儂は旅の途中でこのダンジョンを見つけ、勝手に住み始めただけじゃ」


 こ、こんな激強な鬼人族を招き入れて大丈夫か? 王様とか『反乱する気か!?』とか思わないだろうか・・・ま、そこら辺はバージェス辺境伯様に任せよーっと! 模擬戦とかできるし丁度良いでしょ。


「それでしたら1つお願いがあります。俺の妹と弟をもしもの時に守って欲しいです、ジョンバッハさんがいれば今まで以上に安心して旅を続けられます。俺の家に一緒に住んでもらって構わないので」


「そのような些事がお願いか? もちろん引き受けよう。住まわせてもらう訳じゃし、必ず守り抜くと誓おう」



 帝国とのトラブル以降、どうしても妹と弟が心配だったアルスにとって、ジョンバッハによる24時間体制の護衛は有難かった。




 ジョンバッハさんを見送るために一度地上に戻ったアルス達。 ギルドに戻る前に、ジョンバッハさんにフード付きの服を買って着てもらった、ほぼ人に見えるがツノはどうしても目立ってしまう。


「すみません、この手紙をセントリア男爵家へ郵便お願いします」


「かしこまりました、必ずお届けいたします」


 受付嬢に実家へ送る手紙を渡す。

『超強い鬼人族がそちらへ行きますよ〜、バージェス辺境伯様に報告お願いしますね〜』って感じの内容だ。

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