第17話 激戦!激戦!

 都知事邸。

 外では3体の剣豪魔獣と異能力剣士マシロが撃ち合っている。

 屋敷内の2階では、

「もう、仲間はいないわよねえ?」

 組み伏せられ、もう少しで敵の鋭い爪に、顔と喉が斬られそうなのを、壊れたライフルで必死に押し返している東郷ヒトミがいる。

「そっちが教えれば……答えるわ……」

 下で仰向けの東郷は息が荒い。押し返しすので精一杯だ。

「フフッ、いないわよ。私と外の3人だけ、

 さあ、死ぬ前に教えなさい。」

 上のコウモリ女には余裕がある。

 答えを待ってから、始末するつもりだろう。

「ええ……もういないわ……」

 答えてしまった。

 そして、

「……必要ないもの。」

 ヒトミが言った直後、銃声が聞こえた。

 2連発。

 ……しかし、誰が撃った?!

 撃たれたのは上にいたコウモリ女。2発の銃弾を浴び、即死した。

 前から打たれている。東郷ヒトミが撃った?でも両手は塞がっていた。だが、他には誰も見当たらない。

 彼女『東郷ヒトミ』の異能力は『特殊射撃』。

 途中の物体を貫通する異能力。視認した標的に必中させる異能力。

 そして……ライフル無しに手から弾丸を撃てる異能力!

 ポケットにある弾丸を撃つと、空薬莢だけポケットに残る。左右の手のひらから発射可能。通常のライフル射撃も名手だが、異能力(トリック)で発射した方が威力が高い。

 ライフルは主に、照準器を望遠鏡代わりに使うのみ。ただ、銃を使った射撃でも、貫通能力は使える。

 立体駐車場で、小さな鏡を見つつ、わざわざ柱の陰から撃っていたのは、奥の手を隠すためだった。

「あとはマシロが倒すだけ……あんな程度の相手に殺られるわけないわ……」

 格闘は常人相手なら負けない。が、近接攻撃を得意とする異能力者が相手だったので、ちょっと疲れた。そのまま仰向けで一休み。

 

「さて、そろそろ力の差というやつを見せてやるか。」

 3体の魔獣が笑い出した。全員無傷、だが、1人相手に有効打もない。

「奇遇だな、私も今そう思っていた。」

 たった1人で3体の二刀流魔獣、6本の剣を相手にする湖西マシロ。白装束に無数の傷を受けているが、どれもまだ浅い。

 魔獣が同時に変身しだした。主に変わったのは手足の長さ。射程と敏捷性が強化された。

 一方、

 マシロの方も??

 ポニーテールの綺麗な黒髪が、

 真っ白に変わっていく?!

「明鏡止水、」

 剣を左側に構えた白髪のマシロ、水平に斬るつもりだ。

「白の一閃!!」

 横に渾身の剣を放った。

 魔獣が2本の剣で受ける。

 ?!

 その剣もろとも、

 魔獣の胴を真っ二つに裂き、

 さらに両脇の2体も両断した。あっという間に方が付いた。

 一太刀に見えるが、『白』+『一』閃、百太刀の威力を持つ必殺技!

「我が武に利あり!」

 決めゼリフで締めた。

 ……

 黒髪に戻るマシロ。

「これやると、何本か白髪が残るから、使いたく無かったのに……」

 自分の髪を気にしている。

 締めたような、締まらなかったような……

 

 神奈川県知事邸。

 ……の前の道路。

「宙に浮くのは反則……で、ござる。」

 身軽に飛び回り、敵の攻撃をかわしつつも、中々隙を突けないでいる、真田クノ。

「テメエこそ、チョロチョロ飛び回るのをやめろ!」

 相手の異能力者(トリッカー)。髪の毛が伸び、炎になって襲ってくる女。数十cmだが、地面から浮いている。

「そこの地面を踏んでもらわねば、拙者の罠が作動しない……で、ござる。」

「テメエの能力は知ってるよ!だから浮いてんだ!」

 時折投げてくる、クノの武器を簡単に撃ち落とす。手裏剣クナイは髪の毛で弾き、ビー玉程度の小型弾は髪の毛で焼き払う。

 たまに爆発が起こる。小型弾が炎に焼かれて破裂した音。その爆風ごと炎に取り込み、髪の毛の一部としてしまう。

「住宅街だから、大きな爆玉は置いてきたでござる。」

「知るか!」

 スピードでは勝っている。

 『液状化』の異能力(トリック)を使い、塀、壁、枝、そして地面をトランポリンのように変えて、加速移動する真田クノ。

 罠(大掛かりな液状化)を張っている地面をも蹴って跳ねる。

 ちなみに彼女の能力は、水面に立つことも可能。

 その、一番近い、地面に降り立った瞬間を狙う炎使い。

 バチャ、

 ?!

 自分の足が水(液体)に触れた感覚があった。

 足が地面に付いている?!

 チョコマカとしたくノ一の動きに、気を取られ過ぎた?!

 いや?!浮遊能力が解けている?!

「やっと効いたでござるか……」

 真田クノが動きを止め、塀の上に降り立った。

(髪の毛の炎の射程距離内だ!)

 攻撃!髪を伸ばす!

 が、

 ……髪が炎に変化しない?!届かない?!

 足もズブズブと、水中(地中)へ沈んでいく。

「爆玉に混ぜ、安定剤(異能力封じ)を大量に投げた……で、ござる。」

 クノの投げる爆玉を、爆風ごと全て炎に取り込んでいた。その中に安定剤が沢山混ざっていたという。

 普通は弱った相手に打つ。精神の集中ができなくなり、異能力が使えなくなる。

「あんまり効かないので、致死量より遥かに多く使ってしまったでござる。」

 女の顔色が変わった。

 もちろん嘘……いや、健康体に効かせるには大量に必要だ。何かしらの副作用は出るだろう。

 どんどん沈んでいく女、パニックになる。

(住宅街ゆえ、膝下までしか加工してない…で、ござる。)

 敵の女はそんな事は知らない。

 そろそろ液状化を解いて、膝下を固めようと思った時、

「姉上!姉上ーーっ!!」

 敵の女が後方へ叫んだ。

 すると、

「……ギャアギャア喚くんじゃないよ!」

 全員黒のボディスーツに炎の髪、戦い敗れた炎髪女をさらに狂暴化したような女が現れた。

「お前はただの劣化コピーだ!妹なんかじゃねえだろ!!」

 炎の髪が揺れる。明らかに劣化コピーとは火の激しさが違う。性格も狂暴そうだ。

「あ……姉上!姉上ーーっ!」

 近づいてくる炎女を見て、真田クノも後方へ叫ぶ。

「……貴方も妹じゃないでしょ。」

 ゆっくりと、警官隊の列を開いて、助っ人登場。

「……ま、可愛い妹分の頼みじゃ、断れないわね。」

 エースの1人、こちらも炎使い、

 香取ミナミが現れた。

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