12話 はじめまして


 メッセージで送られてきた集合場所と実際の場所を確認したが多分あそこで間違いないな。いや間違いであって欲しかったな。


 集合場所には女性が2人仲良さそうに話してた。てっきり男のパーティーだと思ってたのに予想が外れたな。


 それに2人ともアバターに気合いが入ってる。いかにも可愛く作りましたって顔してる。

 でもなんというか、凄く良く作られてるんだとは思うんだけど、元々完成されたものに手を加えたというか…蛇足というか…


 エグスタでのアバター作成は元々の自分の顔に種族の特徴が加味され、更にそこから自由に手を加えられるという方式なので、基本的にどこか現実世界と似通ってる顔になる。


 俺の顔も並べたら全く違う顔にはしてあるがどこか雰囲気が似てると思う。あの二人も自分の顔を可愛く作りすぎて少し違和感が出たのだろうか?でもまぁ多分ほとんどの人が気づかない程度の違和感だけど。


 ゲームのアバターなんて自由にできるのが楽しいんだし、俺が口出すことでもないしな。でも二ーターズの副団長だったっけな?あの人はやりすぎたと思うんですよ。

 なんで顔は可愛い幼女みたいなのに体はムキムキで声はダンディにしてるんだろ。見てて頭バグるんだよね。


 それよりいい加減行くか。もうすぐ俺が送った時刻過ぎちゃうし。遅刻するような時間ではないけど。


「こんにちはー。パーティー募集に応募したんですけどこちらであってますか?」


 とりあえず敬語で話しかける。初めましては敬語が当たり前と思うのが普通かもしれないが、エグスタではロールプレイをする人とかも多いので敬語でなくてもあまり気にしてはいけないというのがマナーだ。


「はい!合ってますよ!アルさんですよね?初めまして、私の名前は高……コホン…私の名前はヒナといいます!」


 え、今実名言おうとした?高って言わなかった?いや別に詮索しないけど。

 もしかしたらあんまりVRとかやってなかった人なのか?そもそもソロゲーしかしない派だったのか?


 ヒナと言った人は、髪はボブで金色にしていて青い瞳をしている。年齢は、アバターを見たまんまだと高校生くらい。

 背中に2本の剣を刺していることから職業は多分[双剣士]かな。でもちらっと椅子の端に大剣が見えるから[二刀流]かもしれない。いや、でも大剣って剣士枠だから[双剣士]でもいけるのか。


 いやそもそも初心者が大剣片手は無理じゃないか?もっと上に行かないと装備とかできないんじゃないっけ?でも隣にいる人の種族的に隣の人の装備とは思えないしな。


「私はアヤよ。よろしく。見ての通り種族はエルフにしてるわ」


 こっちは赤色の長い髪をしていて、瞳は緑。種族は尖った耳からも分かるようにエルフだ。


 エグスタではアバター作成の段階で種族が選べる。ヒューマンやエルフの他にもドワーフやアンデット等様々な種類があり、それぞれ固有の特徴を持っている。

 エルフとかだと魔法が得意な代わりに身体能力がヒューマンよりも低い。ドワーフは力が強くまた生産では鍛治が得意だが、ヒューマンよりも身長が低く魔法も鍛冶魔法以外は苦手だ。


 種族のことで更に言うとエルフとかを選んでいると稀に種族が違うことがある。エルフだとハイエルフだったりヒューマンもハイヒューマンになる。

 一見上位種族に思えるが、得意な物がさらに強くなる代わりに、その分デメリット部分も大きくなる、とは言っても当たりであることに代わりはない。

 ただ確率は低い。一応初めて暫くならデータを初期化することは出来るが…


 ちなみにエグスタをしばらく遊んだ後にデータを初期化するには、運営に直接メールをして許可が出るまでは出来ない。なんならサブ垢も作れないので種族は慎重に決めるべきだ。


 俺はエルフとハイエルフで耳の長さが違うことは知ってるが、エルフとハイエルフの違いを見分けることは出来ないのでアヤがどっちかは分からん。


「初めまして。メッセージでも送ったけど改めまして、俺の名前はアルです。呼び方は好きに呼んでくれて大丈夫。職業は[弓使い]。これから宜しく」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る