第2話 スウェーデン
2月半ば、スェーデンラリーが開催された。年間唯一のフルスノーラリーである。本来はモンテカルロラリーもスノーラリーの部類に入るのだが、昨今の温暖化で雪が少ない。ここスェーデンも例年よりは雪が少ない。雪の壁は例年の半分ぐらいしかない。
1日目の木曜日は小雪の中のステージとなった。夜のウメオ・スプリント5kmである。見通しが悪い。と言ってもドライバーはコ・ドライバーが読み上げるペースノートをたよりに走る。ただ、路面なのか雪の壁なのか見にくい。特に最初に走るWRCのマシンは路面にタイヤ痕がついていないので、走りにくいようだ。ともえは後半の出場なので、タイヤ痕が見られるので、それほど走りにくくはなかった。WRC2の中では4位のポジションにつけた。全体のトップタイムはT社のロバンペロであった。
2日目も小雪まじりの天気となった。2日目は2と5ステージが10km、3と6ステージが12km、4と7がフロダのステージ28km、そして8ステージのウメオスプリント5kmである。SS4でトラブル発生。なんと昨年優勝のヤナックがエンジンルームから出火してデイリタイヤ。そして昨年年間チャンピオンのロバンペロが雪の壁に大激突してスピン。マシン後部を大破してこれまたデイリタイヤ。それとモンテカルロ優勝のヌーベルはマシントラブルでスピードダウン。なんとボンネットのヒンジが壊れて、半開き状態で走る羽目になった。観客は大盛り上がりである。
WRCのマシンの相次ぐトラブルでWRC2のマシンが上位に入ってきた。なんとS社のオルベルグが3位に入ってきたのである。母国レースなので気合が入っている。ともえも総合8位に入っている。WRC2のマシンが上位にきたのは、パワーが少ないので、ラインをはずすことが少ないということと、後半出走なのでタイヤ痕が見やすいということがあげられる。ただし、雪が少なくなるとスタッドといわれるタイヤにつけるピンが抜けるということもある。スタッドを大事にして走らないと後で困ることになる。
3日目は9と12が15km、10と13が14km、11と14が28km、そして15のウメオステージが10km。ここは最終の18ステージと同じだ。この日、日本期待の勝山が雪の悪魔につかまった。当初は何度かトップタイムをたたきだし、H社のラップとトップを争っていたのだが、SS10でクラッシュ。右カーブでリアを雪の壁にぶつけ、それでコントロールを失い、雪原に閉じ込められてしまい、リタイヤとなった。後半は雪がとけて砂利が見えるようになってきた。スタッドが抜けるマシンが多くなった。
この日は晴天で、サングラスをかければ雪面と雪の壁の区別もしやすい。WRCのマシンが相次ぐトラブルでともえにも上位にあがるチャンスがある。当面の目標は総合7位のH社のリーである。リーも新人で、ともえのライバルである。この日で15秒あった差を10秒差まで縮めることができた。スノーラリーをともえは苦にしていない。ナイトラリーのSS15ではWRC2トップのタイムをたたきだした。最後の連続ジャンプではWRCカーなみに飛んでいた。監督からも
「ともえ、なかなかいけるじゃないか。この調子だとポイントつくかもな」
「雪が少なくて、なんか北海道に似ているんです。でも、まだ1日残っていますわ。そんなに甘くないでしょ」
「そうだな。明日の天気しだいか」
この日の結果は上位4位までがWRCのマシンで、5位にS社のオルベルグ、6位にT社のバジル、7位にH社のリー、8位にT社の鍛冶屋が食い込んでいる。
最終日は16と17が25km、最終パワーステージのウメオが10kmである。3ステージしかないが、距離が長いので、結構しんどい。天気はいいが、多くのマシンが雪の壁にヒットし、マシンにダメージを受けている。ともえはこの日も好調で、2ステージを終えてH社のリーに5秒差とせまっている。そして、最終パワーステージ。12台のマシンで競われる。WRC2の上位4台が先に走る。1番手はともえである。森の中を無難にこえて、高速の後半に入る。細い道だが、100kmを越すスピードで走る。そして観客の前でのジャンプ台が続く。ともえは5分50秒3という好タイムを記録した。昨日のナイトステージより3秒も早い。このタイムに2番手出走のリーがあせった。最初のジャンプで飛び過ぎて、その先の雪の壁に突っ込んでしまったのだ。ラジエーターがいかれ、リタイヤとなってしまった。これで昨日までのポイントは抹消となる。最終日に完走しないと土曜日までのポイントは無効となるのが今年からのルール変更なのだ。続くバジルとオルベルグはタイム差があるので、無難な走りに終始した。結局、WRC2のパワーステージはともえが最速となった。ただし、8台のWRCのタイムには及ばないので、パワーステージポイントにはほど遠い。
パワーステージを制したのはロバンペロで5分31秒で走った。総合優勝はH社のラップ。2位はT社のエブンス。3位はF社のフルマー。彼にとっては初のポディウム(表彰台)である。シャンパンシャワーでは集中攻撃を受けていた。勝山はサンデーポイントとパワーステージポイントで3点を獲得していた。鍛冶屋も総合7位となりポイント4を獲得した。WRC2の総合ポイントはオルベルグの8点。バジルが7点とトップ争いをし、続いてともえが4点、グリヤーニも4点、ラッセルが1点である。WRC2でポイントを取るのは並大抵のことではないので、ともえは大健闘である。
次戦は3月のサファリラリー。ともえは泥んこラリーを走ったことがない。テスト走行は限られている。苦戦が予想されるラウンドである。
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