25話 ダメなホームルームの夢を見る。そして僕はプルンプルン!



 奇妙な夢を見たのはロジオンの方だった。


◆◇◆◇◆◇◆


 夢の中で形容しがたい場所にいた。


 屋内だとは分かるが、壁は遠すぎて見えず、天井も高すぎて見えない。


 そんな空間に家具や魔導装置が並べられている。


 そこでロジオンは屈んで、ハレヤを抱きしめていた。


 中世の旅人のような格好をしたハレヤを。


 彼女は泣いていて、体を震わせていて。

 その右手では短剣を握り、ロジオンの胸へあてがっていた。


 心臓へ、切っ先を真っ直ぐに。


「ゾーニャ」

 夢の中のロジオンは、ハレヤをそう呼んだ。


「僕は、いつでもいいよ。ゾーニャを抱きしめたまま死にたい」


 ハレヤはさらに泣き声を大きくした。


 絶対にそんなことをしたくない、だが、そうせねばならない。と言うように。


 心が二つに引き裂かれる。そんな泣き声だった。


 だから夢の中のロジオンは、慰めるために頭を撫でる。


 そして彼は何かを言おうとしたが、その言葉の多くを飲み込んで、ただ一言だけ。


「お願いだ。ゾーニャ」


 そうして、胸をハレヤに貫かれ──。



◆◇◆◇◆◇◆



 目が覚めた。


 まだ夜中だ。


 ロジオンの胸元にはハレヤが頬を寄せて寝息をたてている。


 彼女は食事の夢を見てるらしく、彼のシャツを囓っていた。ガジガジと。


「このステーキ堅すぎる~」と寝言を言ってだ。


 たまに歯が胸にも当たる。この感触のせいであんな夢を見たのか?


 それにしても、刺されるというのも突飛すぎるが。


 もしかしたら、あれは昔に見た映画のシーンか何かだろうか。


「も、もう~」

 ハレヤがまた寝言を言ってる。


「食べられない~」

 定番だった。


 ロジオンは小さく笑い、ハレヤを抱きよせなおす。

 そうして再び眠りに入ったのだった。



◆◇◆◇◆◇◆



 すると今度は小学校でホームルームをしている夢を見た。


 なにやらウサ耳獣人種の男性教師が怒って、教壇に立っている。


「はい。皆さん。今日は先生怒ってます。どうしてかわかりますか?」


 生徒たちは見当が付かないようで、顔を見合わせ、首をかしげている。


「では、皆さん、机に突伏して、周りが見えないよう目を閉じてください」


 生徒たちは言われたとおりにした。ロジオンもだ。


「先生が怒っている理由を言います。皆さんの中に、かわいい幼女と添い寝をしている子がいます。うらやま──けしからん!」


 なんかまた小学校教員が絶対言っちゃいけないこと言いだした。


「先生怒りません。誰にもバラさないので、犯人は手をあげなさい」


 ロジオンはこっそり手をあげた。


「貴様かぁああ、ロジオンぁああ!」


 すごい剣幕で掴みかかってきた。


「せ、先生怒ってるじゃないですかめっちゃ! しかも名前バラしてるっ、秒で!」


「先生は怒ってるって最初から言ってるだるぉお!」


「で、でも先生、ハレヤさんは幼女ではなく、中身はおばあちゃんですから」


「ババァ結構、ロリババァ最高!」


「そんなマニアックな需要知ったこっちゃないですよ。むしろ僕はぷるんぷるんがないとダメなんです! がっつけない。Gカップ以上のぷるんぷるんがないと!」


 で、その叫んだ寝言が大声すぎて、自分で目が覚めた。



◆◇◆◇◆◇◆



「──ぷるんぷるんがないとぉー!」


 朝になっていた。


 そしてバカデカ寝言のせいで先に起きていたハレヤに、枕元からジットリした目で見下ろされていたのは言うまでもない。

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