第16話 隠れて

 つい先ほど……泣きボクロの家に電話をかけた。


 電話には泣きボクロの母親が出て……


「オレオレでしょ? アンタ、オレオレなんでしょ!?」


 とオレオレ詐欺扱い……今時の若者に家電話で連絡を取ろうとすると警戒されてしまうのは当然か?


 オレはなんとか母親を説得し泣きボクロに取り次いでもらった。


 受話器の向こう側だが……犬とはいえやはり家族なのか、泣きボクロが泣いているのが分かった。

 声が震えてたから。

 まあいい……後は泣きボクロがここに来るのを待つだけだ。


 だが……一つ問題が……


 オレが見つけたってことにしなきゃ報酬がもらえない……


 本来ならオレは姿を隠し、マスターに上手い事やってもらうのが一番なのだが……


 マスターは今カウンターの裏、オレの足元でのびている。


 こいつはまいったな。


 後先考えずに動いてしまうのがオレの悪い癖だ……まあ、しょうがない。


 なにしろオレはハードボイルド! 頭より先に体が動く男!


 ……とりあえず泣きボクロにオレが早乙女だとばらされては大変だ、そこでオレの人生が終わってしまう。


 泣きボクロがピーコを受け取り、かつオレに報酬が入ってくる状況……








 ・・・・・・。






 ・・・・・・。






 ・・・・・・。






 ・・・・・・。






 ・・・・・・。






 とりあえず隠れて、なりゆきを見守るってことでどうだろう?


 出たとこ勝負だがコレ意外に道はない。


 オレは


「すいません、トイレに行ってきますので……」


 金貸しの拓にそう告げてトイレの方へ。ドアを少しだけ開けその隙間から成り行きを見守ることにした。


 後は、泣きボクロの到着を待つのみ……

 

 

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