6.先輩は気遣い屋さん

 最初は職場の呑み会も楽しかった。

 コロナで私の代は呑み会がなかったし、私はお酒が好きだしで。

 酔いから見る世界が好きだった。

 まるで世界が輝いて見えるから。

 くらくらと視界が明滅していく中でこんな話をしないでほしかった。

「話を聴くのが好きなんやろ」と先輩が言っていたことを思い出す。

 一緒に呑んだとき、先輩はたくさん自分のことを話してくれた。

 多分、私が聴き手に徹してしまうから。お客さんの話を聴くという職業柄仕方ないけれど、そんな私を気遣って話を何個も振ってくれる先輩に敵わないなと思った。

 この人は、私よりもきっと何千倍も人を気遣える人だ。

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